ナイトウィザード The2ndEdition アンソロジーノベル

ナイトウィザード アンソロジーノベル 大魔王は、世界滅亡の夢を見るか?

著者・菊池たけし先生、藤原健市先生、佐藤了先生、はせがわみやび先生。挿絵・石田ヒロユキ先生、みかきみかこ先生、猫猫 猫先生、ぽぽるちゃ先生。
著者勢は、菊池たけし先生はナイトウィザードの生みの親で数々のリプレイなどを書かれています。藤原健市先生はナイトウィザードの小説版などを執筆され、佐藤了先生は同レーベルから「世界の危機はめくるめく!」シリーズを、はせがわみやび先生は電撃文庫レーベルから「新フォーチュン・クエスト・リプレイ」シリーズなどを出されています。
挿絵勢は、石田ヒロユキ先生はナイトウィザード関連のイラストのメインスタッフ双璧で表紙イラストなどを多く手掛け、みかきみかこ先生はナイトウィザード関連のイラストのメインスタッフ双璧のもう片方で、プレビューコミックや挿絵を、猫猫 猫先生は雑誌「電撃PSP/PS3」でコミック版ナイトウィザードの連載をされていて、ぽぽるちゃ先生はナイトウィザード関連イラストでは魔王のイラストなどを多く手掛けられています。挿絵に関してはナイトウィザード関連の絵を手掛けられた先生方が勢揃いした、という感じですね。
・シナリオ
ファミ通文庫おなじみの作家が競演の“70Pでできる世界滅亡!”
貴重な〈遺産〉である「天叢雲剣」の強奪予告状が届いた「赤羽くれはの事件簿」、緋室灯と真行寺命の壮絶バレンタインデーを描く「世界の危機の中心で愛を食べる」、輝明学園の“七不思議”にはない、図書館に現れる“幽霊”を巡るもう1つの“不思議”とは?「八番目の不思議」、そして、ついにあの大魔王が、世界を滅亡させる破壊力を持つ禁忌の箒“オーディン・スフィア”に手を伸ばす――が?「大魔王は世界滅亡の夢を見ちゃった」の4本立て! (Amazon商品紹介ページより抜粋。)
・感想
短編4作によるアンソロ。内容はすべてベール=ゼファーが世界滅亡をたくらみ、それに端を発して騒動がおきる、というもの。ただその内容はそれぞれ違います。企みを阻止するのがウィザードだったり、魔王だったり、ウィザードと魔王の共闘だったりと単調な4編というわけではなく何かしらの見所がありますね。
また各話にゲストが登場するのも楽しめるかと。ナイトウィザードを代表するリプレイからは主役の2人が、コミック版からは龍使いや獣人たち、小説版からも錬金術師のあのキャラ、魔王勢からも特殊なチョイスから名前の知れたあの魔王までの幅広さで、これまでに出た作品やソースブックなどからのゲストという形で色々と登場しています。
「赤羽くれはの事件簿」。アンゼロットに代わって世界の守護者代行を務めているくれはがいっぱいいっぱいになりながら遺産を狙う魔王と戦う的な話。有能すぎた前任であるアンゼロットに比してのくれはの苦労が偲ばれます。
「世界の危機の中心で愛を食べる」。「料理の腕は殺人級」というあかりんのネタでしかなかった設定が走り、その為に恋人である命がたいそう苦労する話。あかりんの料理は世界の危機…!最後のインタールードでのベルの挑戦とそれを跳ね返すチョコに笑いました。
「八番目の不思議」。コミック版ナイトウィザードで語られた、輝明学園を舞台に繰り広げられた7不思議をキーワードにした事件のその後、という感じ。最後はえらくしんみりしたセピア色のいい話になっていたのが印象的でした。
「大魔王は世界滅亡の夢を見ちゃった」。これぞ本家ナイトウィザードを手掛ける菊池たけし先生による、ベール=ゼファーの真骨頂!という感じです。パール=クールやアゼル=イヴリスなどが出て、さらに冥魔王で今が旬のメイオルティスまで登場してと、魔王勢の登場人物が大盤振る舞い。それでいながらメインを張るベルの存在感はそのままで、それどころか彼女が有能な魔王であるということを知らしめすかのように発想の転換による頭脳プレイを見せて、さらに実力的にも超魔王級でその一端を見せて敵役をあっさり蹂躙するなど、普段の彼女は色々制限を受けて活動していることを思い出させられます。
総じてこの作品は大いに「ベール=ゼファーメインのアンソロジー・ノベル」という印象です。どこかに毎回ベール=ゼファーが関わり、時にお茶目な一面を、時にツンツンな一面、時に思慮深く、時には凛々しく美しい一面を見せるなど、彼女の魅力に迫る一冊だった、と言っても過言ではないですね。