カンピオーネ!3

カンピオーネ! 3 はじまりの物語 (スーパーダッシュ文庫)

カンピオーネ! 3 はじまりの物語 (スーパーダッシュ文庫)

カンピオーネ!3 はじまりの物語

著者・丈月城先生。挿絵・シコルスキー先生。シコルスキー先生は電撃文庫で『十三番目のアリス』シリーズ、GA文庫で『パラレルまりなーず』などの挿絵を描かれていますね。
・登場人物
主人公の<神殺し>にして神を殺した事で『王<カンピオーネ>』として神の権能を行使できるようになったが、性格は普通の高校生の草薙護堂。秘密結社『赤銅黒十字』の魔術師で護堂の愛人を自称する、自信に溢れた大騎士、エリカ・ブランデッリ。霊視の術に長けた媛巫女で護堂と同じ学校に通う護堂の妹と知り合いの、真面目で道理から外れたことが嫌いな万理谷祐理。サブキャラクターはエリカ付きの世話人、アリアンナ・ハヤマ・アリアルディ。語堂の妹の草薙静花。正史編纂委員会のエージェント、甘粕冬馬。
今巻登場は護堂の祖父、一朗と知人であるサルデーニャ島に住む魔女ルクレチア・ゾラ。壮年の巨漢の姿を持つまつろわぬ神、メルカルト。そして護堂が倒すことになる、少年の姿で登場する軍神ウルスラグナです。
・シナリオ
草薙護堂は祖父の友人を訪ねるため、イタリア・サルデーニャに来ていた。その地で不思議な少年と出会い、友誼をはぐくむ護堂。だが、そこに現れた魔術師を名乗る少女・エリカとの出会いによって「神」にまつわる事件に巻き込まれることに…。草薙護堂は如何にして神を殺し、魔王となったのか。そのはじまりの物語が遂に明かされる。(7&YHPより抜粋。)
・感想
第3巻にして、ようやく語られる『Episode0』の物語。神殺しであり、軍神ウルスラグナの10の化身の権能を有する草薙護堂がその力を得る―――神殺しとなる―――に至った道程と、彼の愛人を自称するエリカ・ブランデッリとの出会いの物語です。
祖父、一朗からイタリアはサルデーニャ島に住む魔女、ルクレチア・ゾラに一朗が大学生時代に借り受けていた秘宝「プロメテウス秘笈」を返しに行くつもりだと聞いた護堂は、亡くなっている祖母との約束などから一朗の代わりに自分がイタリアへ行くと宣言し、その通りになる。そして訪れたイタリアで護堂は「プロメテウス秘笈」の魔力を感じて現れたウルスラグナやエリカと運命的に出会い、エリカと共にサルデーニャ島に訪れる事になる。だが、カリアリやドルガリなどのイタリア各地では、『猪』『鳳』などの怪異が猛威を振るっていた。それはウルスラグナの10の化身が暴走している姿だった。それを知った護堂はウルスラグナに自らの化身を諌め、暴虐を止めるように願い、ウルスラグナはそれに応える。が、それにより少しづつ神に戻っていったウルスラグナは護堂と出会ったときの性質より神としての性質が強くなっていってしまう。神としての側面、それは即ち時には人に仇を為すこともある神としての面―――。ルクレチアの悪巧みもあるが、知り合ったウルスラグナが『まつろわぬ神』として人に仇をなす性質を持つことを嘆いた護堂は、彼を止めるためにエリカと行動を共にするようになる。果たして護堂はウルスラグナを止められるのか―――というところです。
内容は大きく分けて3つ。エリカとの出会い。ウルスラグナとの出会い。そしてウルスラグナも交えた『まつろわぬ神』メルカトルとの関わり―――この3つの模様が描かれています。
第1巻時点で護堂の愛人を自称し、最初からツンデレで言うところの『デレ』状態で、からかい気味ながらもその猛烈なアタックで護堂に求愛をかけるという姿を見せていたエリカ・ブランデッリの『ツン』期が多く見られます。強力な魔術の気配を匂わせるプロメテウス秘笈を持つ護堂を怪しみ、強圧的に接するエリカには、これまでの巻にあった護堂への信頼がまだ無いために会話にも遠慮がありません。今まではどこか威圧的でありながらも護堂に対する愛情とか信頼が感じられる温かみがあったものの、今回はそれが無い。完全な信頼しているわけではない相手への鋭利で鮮烈な言葉による『言葉の刃』が鋭く光っていましたね。それだけに終盤、ウルスラグナを破った護堂への対応の変化は彼を認めているということが如実に感じられましたが。
ウルスラグナに関しては、彼という人となりに関する描写はこれまで無く「護堂の力」という認識でしかなかった彼を語ることで、それに通じてさらに「まつろわぬ神」に関して語られていた、という感じでしたね。ウルスラグナの―――神という存在の二面性、それは各地の神に見られるような、状況によって善神にも悪神にもなるという神のあり方。それを力を失っている時のウルスラグナをサッカーを楽しむなどの面を見せて人に近く、力を取り戻していったウルスラグナを、自らの望みを叶える為には必要とあれば人の世を害することもやむなしとする悪神の面を極端に強く書く事で表現されていると感じました。「神」は人に優しくなるも厳しくなるも、人と状況とその時の時勢次第―――そんな印象を覚えました。
そして、ウルスラグナの表現で神の二面性を説きながらも、それをさらに極論化して純粋な「まつろわぬ神」を表現したのがメルカトル―――ウルスラグナと敵対する立場を取る、もうひとりの「まつろわぬ神」―――でした。圧倒的な王者の威風という強烈な個性と実力でウルスラグナに引けを取らない力を持つ彼と護堂の決着に関してはまだ語られておらず、言うなれば「Episode0−1」が今回の話で、まだ「Episode0−2」が残っているようでそちらで決着がつくようです。彼に関しては普通に尊大な神にして我侭ながら圧倒的力を持つが故にそれを許されているもの―――そんな印象でした。
そんなこんなで、サルデーニャ島を中心に置きながらエリカと交流しつつ、イタリア全土に被害を撒き散らしていたウルスラグナの10の化身の一部や、ウルスラグナとメルカトルとの諍いに護堂が関わる―――この巻はそんな展開でした。
人としての護堂はまだウルスラグナの権能を使えないために、プロメテウス秘笈の力を使ったりエリカのサポートをするなどで地味な活動をしていましたが、ラストは半ば自爆ながら護堂がウルスラグナの優しさを言葉にする事で明らかにし、その上で感謝と共にウルスラグナの隠していた願いを叶えるという様相で良かったです。倒したくない相手。しかし倒さなければならない…そのアンビバレンツが最後の一味となっていました。そしてやはり護堂は護堂。彼なりの意地の通し方と、人だろうと神殺しだろうと変わらない態度が終始一貫していて「最強の攻撃力しか持たない」というアドバンテージが無くても護堂は護堂でやはり主役だ、ということがこの第3巻ではよくよく実感できました。

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