女神異聞録デビルサバイバーアンソロ1

女神異聞録デビルサバイバー アンソロジーノベル1(みのり文庫)

女神異聞録デビルサバイバー アンソロジーノベル1(みのり文庫)

女神異聞録デビルサバイバー アンソロジーノベル Vol.1

著者・海法紀光先生。村田治先生。高平鳴海先生。挿絵・異識先生。nino先生。まつざき雄嵩先生。やと先生。
・登場人物
いつもヘッドホンをつけている主人公。主人公の友人でプログラマー、主人公の従兄弟のナオヤに憧れているアツロウ。主人公、アツロウの友人でインディーズ・バンドグループ「D−VA」のハルの大ファンのユズ。大人気ネットアイドルで正義感の塊でもあるコスプレイヤーのミドリ。正義信奉者でアツロウの中学生時代の友人のケイスケ。カリスマ不良グループ『ダイモンズ』リーダーのカイドー。カイドーの幼馴染で、個人的に「連続吸血事件」を追っている小学校の養護教諭のマリ。『翔門会』教祖の娘で、主人公に救世主としての素質を見出し導こうとしているアマネ。表参道のバー「エイジ」のマスターでハルとも面識のあるジン。インディーズ・バンドグループ「D−VA」のボーカルだがD−VAが活動休止中の為にソロで活動しているハル。主人公の従兄弟で『悪魔召喚プログラム』を作成してしまうほどの天才プログラマー、ナオヤ。
他、仲魔となる悪魔たち。
・シナリオ
本書は株式会社アトラス制作の「女神異聞録デビルサバイバー」をベースにしたパロディノベルになります。独自の解釈ならびに発想を取り入れております。(7&YHPより抜粋。)
・感想
ニンテンドーDSゲーム「女神異聞録 デビルサバイバー」は株式会社アトラスが発売する人気RPGシリーズ「女神転生」の流れを組む作品で、神や悪魔、英雄、魔獣などの空想上の存在とされるものを『仲魔』と呼ばれる存在として使役し、パーティを組み、クリアを目指すゲームです。そしてこの「女神異聞録 デビルサバイバー」は、何故か封鎖された山の手線内で悪魔が発生し、さらにばら撒かれたCOMPと呼ばれる携帯機器から悪魔が召喚できるようになります。従兄弟のナオヤに呼び出されていた主人公とアツロウとユズは、ナオヤから送られてきた悪魔召喚プログラムが入っているCOMPを操り、悪魔たちを使役して、封鎖された山の手線から同じように脱出できなくなった人たちと協力したり時には反目したりしながら、7日間と言う制限期日以内に脱出しようとする、というゲームです。
この作品には、シナリオらしいシナリオはありません。「なごみ文庫」という「リトルバスターズ!」や「CLANNAD」「ひぐらしのなく頃に」「カオス;ヘッド」などのゲームの非公式アンソロジーノベルを扱うレーベルがありますがそれと同じか近いものと考えて良いでしょう。冒頭、カラー部分に注釈があるように「パロディ・ノベル」―――所謂、同人小説の商業版、というところです。ですので基本的な設定―――上記に記したような主人公たちの環境についての説明らしい説明もありません。読み手は既にそういった設定を「知っているもの」として扱われています。
つまり、この作品はゲーム版をプレイしている人に向けた作品、と言うことです。ゲーム版を知らない、少なくとも設定されている主人公たちの環境を理解していないと、まったく何がなにやらわからない、なんだこれは、となってしまうと思います。
ですがゲームをやった事がある、というならデビルサバイバーの世界から筆者が膨らませた「If」の話が楽しめると思います。If―――といっても大げさな平行世界の話、などではなく。あくまでゲームの中であったかもしれないが、しかしゲームのストーリー上では出てこなかった主人公やアツロウ、ユズたちのやり取りを筆者が「こんな話があったのではないだろうか」と夢想したやり取り、という意味です。日々の生活の隙間の部分にスポットを当てたというか、ゲームでは気にされていなかった食事についてや風呂などを初めとした細かな生活部分についての空想を、或いは妄想も混ぜた考えを筆者たちが文章化したものの総合短編誌、それがこのアンソロジーノベルです。
内容的にゲームプレイ済み、ということを読者に求めるので若干敷居が高いと言うか、ゲームをプレイしていない人では理解できない内容ですので大変読み手を選ぶ作品になってしまっていると思います。そういうわけで、この作品はゲームをプレイした人は楽しめるが、ゲーム未プレイでは楽しめるかどうか非常に怪しくなってしまう、という何とも難儀な作品と感じましたね。