神曲奏界ポリフォニカ レオン・ザ・レザレクター4

神曲奏界ポリフォニカ レオン・ザ・レザレクター4

著者・大迫純一先生。挿絵・忍青龍先生による通称『黒ポリ』と呼ばれる神曲奏界ポリフォニカBLACKシリーズでサブキャラクターとして登場した人物を主役に据えて送られるハードボイルドなスピンオフ小説の第4段で、最終巻です。
・登場人物
主人公に精霊探偵を名乗るフェニミストな上級精霊…ですが、前巻での出来事を経て現在は精霊刑務所で服役中のレオンガーラ・ジェス・ボルウォーダン。
今巻で登場するのはレオンが収監されるアブセイル精霊刑務所の刑務官、ティゴライオ。レオンの旧知で精霊を治す精霊医師、タブレティオ・ジュダ・シェキドリーコ。そしてひまわり色の髪のトルバス神曲学院の制服を着たあの少女。正体は言わずもがな、ですが…作品紹介でバレていますね。サジ・シェリカです。
・シナリオ
「お前、名前は?」
シェリカ、サジ・シェリカ」
「頼む。助けてくれ」

「レオン。その髪……、今のあなたにぴったりだわ」
 言われるまでもない。どす黒くなった髪、色あせた視界、ただ過ぎていくだけの毎日。

 アブセイル精霊刑務所、囚人・三七〇七号。これが今の俺のすべてだ。
 そんな俺のもとに届いた一通の手紙と、記されていた「とめてみろ」の一言。時限爆弾を写した写真に書かれたそれは、俺の命を狙う誰かの陰湿な罠だった。だが移送中に襲撃され、傷ついた俺の前に、一人の少女が現れた。俺を叩き起こし、もう一度誓いを思い出させるために。
 俺の名はレオン。もう、誰も傷つけさせない。
・感想
スピンオフ小説の第4段にして最終巻、そして始まりの巻でもあります。
前回の事件―――第3巻であった、幼い少女サナの母親を探し、ギャングとの抗争に関係した結果、レオンの金髪が赤黒く染まるという驚愕の状態変化を起こして幕となった前巻から、状況としては続いております。前巻ラスト、婦警のサムラ・アレクシア刑事の訪問―――レオンの逮捕を経て、裁判をして、レオンが懲役刑を受けて収監された所から物語はスタートです。
内容は刑務所に収監されていたレオンの元へ犯行予告が送り込まれてきて、それに端を発してレオンを狙う悪意からレオンが逃げ続けることになる逃走劇を描いたものです。その中で、レオンはこれまで自分がしてきたことを思い返しながら、自分が行くべき道を模索する―――という、レオン自身が『自分の未来』を探す話になっています。
第3巻で語られた、レオンと関係を持った神曲楽士の女性が場合によっては不幸となっていた経緯を知ったレオンが、刑務所の中でその事実を噛み締めながら飄々と振舞う姿は憔悴しきっていて、金髪の獅子として精霊探偵として活躍していた姿、マナガやマティアと初めて会った頃の精悍な姿とは比べるべくも無い疲れた姿を見せていました。精霊としての力が使えなかったり、自身を組み直す力も無く精霊医師の治療を受けたり、今回のレオンはこれまでの活躍が嘘のようにどん底の姿でした。ですがだからこそ、最後の最後、レオンのために集まった人々の心と、その心に救われるレオンの姿が印象的でしたね。
シェリカは当初、名を名乗らずレオンを助ける役目を負います。が、BUNBUN先生が挿絵を描かれているブラック・シリーズの中とは違いいくらか年月が過ぎているようで、背中まであった髪を肩口で短く切っていたりしていて、彼女が過ごした年月を感じさせられました。ですが、シェリカの性格―――ヒマワリのような笑顔を持っていて、困っている相手を絶対に見捨てたりしない性格―――は変わっておらず、精霊として異常な状態となっているレオンはシェリカのこともハッキリわからずデコ娘だのお前だのと呼びますが、どうと言われてもシェリカはレオンに関わっていきます。そんな姿がシェリカらしくて見た目がちょっと違ってもシェリカだ、と思えましたね。
そして物語の終焉。金色の鬣と力を取り戻した―――或いは思い出したレオンは、正直に言って格好良かったです。単純に格好良い。そう、金色の鬣を持つ理由、最大の力を発揮しようとする時、レオンが金色の獅子に変わる理由。それらも語られていましたがその理由も、レオンの持つ精悍な男の姿とは対照的な、子供のようなひとつの思いから来るもの。それら全てが、格好良い、と思えます。サブタイトル―――『LEON THE RESURRECTOR』の意味が示すそれは、1〜4巻を通じてレオンガーラ・ジェス・ボルヴォーダンという男の生き様を見て、そしてこれからを示す言葉。レオンの1000年越しの一途さの物語と、そんな彼を愛した女性たちの想いの物語を完読した時には、もう余韻にはため息しか出ませんでした。
そして、自分を取り戻したレオン。彼の活躍はまだ終わりません。あとがきで書かれていたことが結実すれば、近い将来にまた、レオンの活躍が見られるはずです。当然、そちらにも期待です。