退魔生徒会京都百鬼行

退魔生徒会京都百鬼行―Replay:真・女神転生TRPG魔都東京200X (integral)

退魔生徒会京都百鬼行―Replay:真・女神転生TRPG魔都東京200X (integral)

退魔生徒会京都百鬼行 Replay:真・女神転生TRPG 魔都東京200X

著者・朱鷺田祐介先生。挿絵・黒百合姫先生によるTRPGシステム、『真・女神転生TRPG魔都東京200X』のリプレイ本。一応続き物シリーズ作品物、となりますがどこから読んでもそれなりに楽しめる、1冊完結型の展開になっています。ですがこの巻はちょっとその通例から外れている感じですかね?『修学旅行編』ということで前後編的な展開になっていて、今巻は前編とも言える修学旅行の前半部分がメインに描かれています。
・登場人物
炎の魔晶剣・『章姫』を継承する剣士→サクセサーで以前の巻での行動で生徒会長となった豊野香苺。アメリカから来た交換留学生の妖精探偵で、アームターミナルを入手してデビルサマナーにもなった探偵→サマナーのチャーリー・ウェリントン。生まれはインスマウスと嘯き敵と密会もしたりして暗躍する、未来ではアンドロイドを開発したりするらしい運命を持つドクター→アウトサイダーの溝呂木麟。猫娘的言動ですがオニの兄貴やダーキニーの姉貴という格闘系悪魔に師事していて愛用のチェーンソーでパーティでは苺に次ぐ戦闘系キャラとして戦う、悪魔(魔獣バステト)→気孔拳士の笹塚千代。この4人のPCで組まれたパーティが、所属する学園の生徒会から怪しい物事担当の「退魔生徒会」として依頼を受け、それらを解決する1話完結形式が基本のプレイングです…が、この巻では修学旅行にかこつけて京都での騒動に出張手助けに行きます。
・シナリオ
学園周辺になぜか頻発する怪異事件を極秘裏に処理する、秘密チーム「退魔生徒会」。今度は学園を離れて奈良京都へ修学旅行なのだけど…。おとなしくしているはずもない、ヨハンや葵。さらに修行もセットという、気の抜けない旅行に。加えて、現地の学校にも退魔生徒会はあり、苺はそこでモテモテに。チャーリーは渡会の熱烈アプローチに、高尾先生のことを真剣に考えはじめ、鱗は鱗で「婿殿」と呼ばれる始末…。どうなるのこれ!?すっかりおなじみ、TRPG『真・女神転生TRPG魔都東京200X』リプレイ・シリーズ第6弾。(7&YHPより抜粋。)
・感想
今巻では、奈良京都への修学旅行編ということで学校を出て関西を舞台にして退魔生徒会が活躍する話が中心です。これまでの登場人物で敵だったキャラや味方になったキャラ、新たに登場したキャラが入り乱れていて少々ややこしいことになっていました。一応ざっと紹介すると、明らかに敵なのは「日高葵」「日高雪」「ヨハン・グリュンハイム」の3人。敵になる可能性があるがまだ立場がはっきりしていないのが「氷川」「KK」。敵でも味方でもないトラブルメイカーなのが「黒瓜孝」「大月芳彦」。守るべき仲間、或いは絆を結ぶ相手は「アニー・イノセント」「結城柊」「渡会百合」「高尾祐子」「聖丈二」ってとこでしょうか。だんだん登場人物も増えてきていて、ストーリーそのものを楽しもうと思ったらこの巻だけでは全容がわからないのではないでしょうか。
収録されているのは2話に付録。第12話「退魔生徒会、西へ:奈良邪神紀行」第13話「京都百鬼行:国津神嘆き歌」それに付録として「ペルソナ使い2.0」です。全体的には神無月を前にして京都の霊的安定が揺らぎそれにより引き起こる怪異に対処すべく、退魔生徒会が奔走する―――という流れです。
第12話「退魔生徒会、西へ:京都邪神紀行」では奈良、京都を舞台にして和風な様相で修学旅行編のプロローグが語られます。聖華学園退魔生徒会が修学旅行で関西へ行き、関西の別の2校の退魔生徒会―――聖ゲオルギウス学園と阪南O∴T∴O∴と協力して関西で起きる異変に対応します。内容的には苺、チャーリー、千代が関西退魔生徒会の代表片方、聖ゲオルギウス学園の藤原とそのお付きの山本、それから阪南O∴T∴Oの風祭新の2キャラと協力して行動します。鞍馬山に修行に行ったり仁王像と戦うことになったり、比叡山へ行ったりと京都、奈良を行脚します。その一方で溝呂木鱗は敵ですが同じ学校に在籍しているということで妙な緊迫感と共にPCたちの近くにいる日高葵、日高雪、ヨハン・グリュンハイムと裏のトップ会談的な会話を繰り広げます。バトルに関しては若干あっさり決着がつきます。事前の情報収集による相性の確認と、相性を合わせた一点突破による物理攻撃に特化したパーティの強さを見た、という感じでした。
第13話「京都百鬼行:国津神嘆き歌」では奈良、京都を舞台にしていることを前話に引き続いて存分に生かした和風テイストな話が中心となっています。本格的に巻き起きる霊的安定の揺らぎに、新キャラクターとして登場する加茂玉帝学院の退魔生徒会の安曇薫子、三郎と協力して当たるが日高葵が日高雪に屍鬼ゴーストを連れて百鬼夜行を起こし、百鬼夜行に対応すべく登場した退魔生徒会に妖鬼アズミに繋がる安曇薫子が鱗のリクエストで呼んだアズミ軍団が協力、さらにヨハン・グリュンハイムが便乗して騒動を起こし…と、かなり連続して大騒動がおきていました。それだけにバトルではBOSS戦2連戦、とでもいうような流れになっていました。BOSSをもうすぐ倒せると思ったらスキルの組み合わせで完全復活したり、パーティが全員瀕死になって大ピンチになったりと、これまでの退魔生徒会リプレイの中で一番派手でギリギリの戦いだったのではないでしょうか。第12話での余裕ムードとは一転、神威もアイテムも使い、普段使わないスキルも用いて、双方死力を尽くして戦い抜いたガチンコバトル、という印象でした。
第12話にも第13話にもいえることですが、どちらもメインの話にクトゥルフ神話がスパイスに少し、という感じですね。
両話に共通しているひとつの面白みとしては、敵として戦う相手である日高葵やヨハン・グリュンハイムたちと敵味方でありながら事前に交渉の場を用意し、互いの戦闘においての条件や勝利条件的なものを決しているのはTRPGの醍醐味のひとつが書かれていて面白いですね。
と、ここまで色々書いてきましたがこれらの大半はバトル中心の話。それ以外の部分―――情報収集シーン、ここでも見るところや面白い所が多かったです。その中で一番目を引かれるのは、何故か?ラブ話が多かったです。前巻でチャーリーが足繁く通っていた銀座のマダム・銀子との関係がクローズアップされたからでしょうか。この巻ではチャーリーと渡会百合との絆の話が大きく取り上げられたり、苺に新しく彼氏候補として関西退魔生徒会からタイプの違う男性キャラが2人登場したり、鱗に近づく良い所のお嬢様(安曇薫子)が登場したり、急にラブ話が多く出てくるようになっていました。その辺りの展開もカバーされているのが「真・女神転生200X」の面白みでもありますね。絆ロールで仲の深まりが目に見えてわかるのが面白いです。個人的にはツンデレさんな渡会百合とチャーリーの今後、鱗がアニーと安曇薫子のどちらの関係をどう繋げていくのが気になります。
付録は「ペルソナ使い」をキャラクターとして扱うにあたっての注意点や条件、そもそもペルソナ使いとは?的なあれこれとした注釈が書かれています。
総じてこの巻は、鞍馬山で修行したり比叡山で戦ったり、軽い話の中に色々と未来を決め兼ねない会話が混じっていたり、闇のトップ会談とも言えるBOSSクラスたちと鱗の腹の探り合いのような会話があったりと読むだけで緊張感があるシーンがある一方で、絆を結んだ相手との嫉妬交じりのやりとりや、甘味所で甘いスイーツに舌鼓を打ったりカラオケで盛り上がる姿が描かれるなど、高校生らしい姿がプレイングされたりと緩急の激しい巻でした。
6巻まで来ているということで若干、ここから読んでも大丈夫、とは言えなくなってきていますが単純な高レベルPCたちによる奈良、京都を舞台にした騒動のプレイングと見れば単体でも楽しめるかと思います。