ベン・トー2

ベン・トー 2 ザンギ弁当295円 (スーパーダッシュ文庫)

ベン・トー 2 ザンギ弁当295円 (スーパーダッシュ文庫)

ベン・トー2 ザンギ弁当295円

著者・アサウラ先生。挿絵・紫乃櫂人先生。アサウラ先生はスーパーダッシュ文庫レーベルで「黄色い花の紅」「バニラ」などの作品を出されています。庶民派シリアス学園ギャグ・アクション小説その第2弾です。
・登場人物
主人公、半額弁当を求めたが為にそれまで知らなかった”狼”たちの最中に飛び込む事になる佐藤洋。”氷結の魔女”の異名を持つHP同好会の会長で歴戦の勇士、槍水仙。偶然洋と同じ時に半額弁当を求め、彼と同じくして”狼”たちの存在を知り自身の趣味もあり”狼”たちの世界に関わっていく事を選択した隠れオタク少女、白粉花。花の親友で彼女の事を色々とやばいくらいに溺愛している委員長で生徒会長候補、白梅梅。”魔術師”の異名を持つ”狼”で前HP同好会会長、金城優。
サブキャラクターは超ドMで、洋が白梅梅に狙われた時に身代わりにされて過剰なまでに色々とされてしまっても喜ぶ、真性の内本宏明。半額印象を張り”狼”たちに戦いの鐘を告げる者の一人である、通称アブラ神。アブラ神同様の”狼”たちに戦いの鐘を告げる者の1人であり、アブラ神とは別の店で働くジジ様。”狼”の1匹で、洋曰く「大変よい乳をした」茶髪の女子高生。”狼”の1匹で、誇りを持って半額弁当争奪に挑むナイスガイの顎鬚。他にも素敵な名前の“狼”が多数です。
そして今巻で新登場するのは二つ名『湖の麗人』と呼ばれる元となるイタリア人の母を持つ金髪ハーフで、洋の幼馴染で従姉の丸富大学付属高校1年の著莪あやめ。
敵役となるのは二つ名『パッドフット』と呼ばれていたがある理由から現在は『帝王』と名乗る丸富大学3年生、遠藤忠明。『帝王』を名乗る者に追従し、情報収集などの面で優秀な所を見せる『ガブリエル・ラチェット』というチームの頭目を勤める二階堂連。
・シナリオ
日々行われる半額弁当争奪戦の世界を知り、HP同好会での活動を続ける佐藤洋。ある日、佐藤のもとに同い年の従姉・著莪あやめが訪ねてきた。数カ月ぶりの再会の後、佐藤は知る。彼女もまた「湖の麗人」の二つ名を持つハンターであり、HP同好会会長・槍水仙との対決のためにやってきたのだということを。従姉の突然の来訪に戸惑う佐藤だったが、それは半額弁当を求める者たちを戦慄させる壮大な陰謀劇の幕開けに過ぎなかった!己の誇りと空腹のために、走り、跳び、戦いそして喰え!!庶民派シリアス・ギャグアクション、大騒乱の第2弾。(7&YHPより抜粋。)
・感想
この巻では前巻と比べて急に話の規模が大きくなった印象を覚える作品でしたね。
“狼”たちの存在を知り、その世界に入った前巻の話がRPGでいうチュートリアルから始まって初戦が終わるまで辺りだとしたら、今巻ではその状態からいきなり中ボスが出てきた!とかいうようなスケールの話です。
かつていた強大で強力な“狼”たち。彼らの跡を追う男たち―――『帝王』を名乗る者たちがいて、帝王たちの活動が洋や仙たちの住む辺りまで影響が出始めた矢先に、洋は帝王の思惑に乗る形でやってきた幼馴染のあやめと遭遇する。そしてそこから、二つ名を持つものたちが一気に関係を深めていく―――そんな感じで『帝王』たちと洋たちが関わっていきます。
過去の“狼”たちの存在が引き金となって始まる今巻の騒動。強大な“狼”の集団対“狼”の集団の対決。二つ名持ち同士の激突。そして敵と味方のような形に分かれる洋とあやめ―――と、今巻は緊迫した組織的な対峙、緊迫した人間関係が見られます。
しかしながら、そんなシリアス重視な弁当争奪戦に反比例するようにか、日常シーンの描写に関してはものすごくコメディ色が強い作品になっています。洋の女装に始まり、白粉の妄想爆発、洋とあやめのゲームに関する掛け合い、丸富大学付属高校へ赴いた洋が受ける過激な歓迎と、白梅梅によるあやめのドレスアップなど笑いが満載です。ですがそれ以上に、巨大な相手に対して主人公一人で挑む、というものではなくあくまでまだまだ未熟な洋が、『魔術師』『湖の麗人』たちと協力しながら挑むという協力によって巨大な相手を倒す、という少年漫画的『燃え』が満載されている、読んでいて爽快、読んでいて熱血、といった作品に仕上がっています。
総じて今巻は、第2巻は第1巻よりもスケールダウンする、などといったエンターテインメント作品にありがちな俗な言い掛かりを思い切り払拭する、前巻の面白さを下地にしながらさらなる面白さを見せてくれた作品でしたね。