超鋼女セーラ7

超鋼女セーラ7 フタリの青春 お嬢のユウウツ (HJ文庫)

超鋼女セーラ7 フタリの青春 お嬢のユウウツ (HJ文庫)

超鋼女セーラ フタリの青春、お嬢のユウウツ

著者・寺田とものり先生。挿絵・Ein先生。知る人ぞ知る懐かしいTRPG『番長学園!!』世界の世界観を引き継いでいる、『現実と似ているけど異なる現代世界』を舞台にして送られる物語ですね。
・登場人物
メインキャラは、ヒロインで文武両道に優れ生徒会長を務めるが、題名通りのロボット=超鋼女であり、主人公の茸味の彼女となった来栖セーラ。主人公で機械も人も等しく愛せる稀有な資質を持つ、ヒロインの来栖セーラとお付き合いしているセーラの彼氏、人間の瀬戸茸味(せと たけみ)。茸味に暴漢に絡まれているところを助けられて以来、茸味の事を意識している茸味のクラスメートの御浜千美絵。セーラと同じ超鋼女で、別の学校に通うセーラの姉妹機、泉秋院ラヴィニア。貧乏教会の一人娘、千美絵の親友で超鋼女・ベッキーのマスターの春日井絢乃。春日井家=教会に居候しているセーラ、ラヴィニアと同じ超鋼女の姉妹機のベッキー。以前にセーラに挑んだが打ち倒されて保護され、修理を受け現在は瀬戸家で居候をして色々と学んでいる途中のセーラたち姉妹の末っ子、サァラ。
今巻で登場するサブキャラクターたちは、以前の巻でサァラを操る黒幕として登場し茸味を誘拐するなどした研究者でセーラたちの知り合いでもある折紙折枝、ラヴィニアの後輩で最近事故を起こして彼氏と疎遠になったことを悩む沢砥部茄々、茄々の彼氏で超鋼機武闘会に参加しているある高校の代表選手でもある篠芽舞登、などです。
・シナリオ
茸味とセーラの交際は順調に進行中。そして、超鋼機武闘会の熱戦も繰り広げられていく。泉秋院ラヴィニアは己が誇りと友人のために決闘におもむき、春日井絢乃は圧倒的に不利な状況の中、ベッキーとの「絆」のために満身創痍の身体で戦い抜く。寺田とものり&Einの最強コンビがお届けする、大人気学園バトルラブコメシリーズ、早くも第7弾。ある娘は、仲間のために闘いの場へ往く。ある娘は「絆」のために満身創痍で戦地を駆ける。超鋼機武闘会、更にヒートアップ。(7&YHPより抜粋。)
・感想
この巻は、セーラと茸味の2人が互いに秘密にしていたことを明かしてそのことを足場にしてさらに絆を深める話と、これまで元・敵であり現在は影からセーラたちを支える立場となっていた折紙折枝が、ベッキーのちょっとした策に嵌りセーラの前に引きずり出されセーラと向き合う話と、ラヴィニアによる後輩の女生徒を想っての女生徒の彼氏との超鋼機武闘会の戦いの話と、春日井絢乃による乙女の貞操を賭けた極貧予算で組み上げた超鋼機でのバトルの話とが繰り広げられる、色々と話が詰め込まれた巻でしたね。
セーラと茸味が秘密を打ち明けあう話は、どちらも相手が何を秘密にしていて何を打ち明けようとしているのかを知っているという状況で、その上での秘密の打ち明けあいであり、自然、相手をただ受け入れるという流れでした。そのただ受け入れる、という行為が相手を信頼している姿勢の現われとなっていて、ある意味予定調和ですが温かな目で見守りたくなるようなセーラと茸味のラブラブさを見せていましたね。
折紙折枝の話に関してはセーラと茸味の秘密の打ち明けあいから若干続いているような形で、折枝の考えや行動した結果、感じたことをセーラが聞き、折枝がただの研究者からサァラのもう一人の『母親』となっているのを見られる話になっていました。
ラヴィニアの話に関しては沢砥部茄々と篠芽舞登というすれ違ったカップルのため、ラヴィニアがその強さを見せながらも若干の悪役を演じることで2人を仲直りさせる話でした。ラヴィニアの戦いにおける信念などといった精神的な強さ、そして報われぬとラヴィニア自身感じながらも尚、僅かに夢を見てみる乙女心の可愛らしさ、そういったラヴィニアの魅力がかなり色々と描かれていました。
そして最後は、貧乏を言い訳にして超鋼機武闘会に消極的な田舎高校の相手を前にして、本当の貧乏を知り、その貧乏が教えてくれた『絆』に誇りさえ持つ春日井綾乃が、資金的に相手以下の条件―――真の貧乏の状態から超鋼機を組み上げて田舎高校の面々に戦いに挑むという、綾乃の矜持の戦いが繰り広げられています。その戦いや行動の中で綾乃とベッキーの友情を越えた家族愛的な感情が見られ、2人の絆の深さと強さがこの話で魅せられていましたね。
総じてこの巻は、全体的な話の進み方としては遅々としたものでしょう。セーラは子供ボディのままですし、以前の巻で敵役として登場した『若草の四姉妹』やそのナビゲート・マスターであるセイジ・ミチザトなども登場しません。ですがその分、メインキャラクターたちの掘り下げが為されていた巻です。セーラと茸味の、綾乃とベッキーの絆が深まり、ラヴィニアはその強さと優しさと秘めた愛を見せます。各メイン・キャラクターの魅力について語った一冊だった、という感じでしたね。