DX・リプレイ・ジパング1

ダブルクロス・リプレイ・ジパング1 戦国ラグナロク

著者・田中天先生&F.E.A.R.。挿絵・獅子猿先生。爆笑トンでも大冒険活劇リプレイ・シリーズ「DX・リプレイ・トワイライト」を著された田中天先生による新DX・リプレイシリーズです。
・登場人物
PCメンバーは4人。PC1はモルフェウスノイマンのシンドローム、Dロイス『秘密兵器』で得た神宝と呼ばれる「トキジクの弓」を持ってエフェクトの組み合わせで全体攻撃を放ったり防御無視攻撃をしたりと後衛から撃つタイプで戦う、現代から時を越えてくる女子高生、水野暁子女史による天野真弓。
PC2は数多の妖怪と戦いに明け暮れなお生き残る狼の大妖怪にしてシンドローム、キュマイラ(ピュア)のDロイス『純血種』、その豪腕でパーティの前線で戦うが言動は妖怪ということで悪ぶっている細野君郎氏によるイクフサ。
PC3は魑魅魍魎を退治する退魔師ながら病弱ですぐ喀血するという面白特徴を持つ、シンドロームはブラックドッグ/ブラム=ストーカーのDロイス『黄昏の主』を持ち、パーティをカバーしたりしつつ従者に戦わせる、DXリプレイではお馴染みのプレイヤーでDXシリーズ製作者にしてベテランプレーヤーの矢野俊策氏による山住浄ノ進。
PC4は歴史上の存在をPC化する、ということで伊賀の天才忍者と呼ばれていた存在を女性化しオルクス/サラマンダーにてパーティを支援したり敵の行動を妨害する能力に特化し、Dロイス『伝承者』<RC判定>を持たせた、中村知博氏による霧隠才蔵
これらの他にはNPCキャラとして真弓を主君とせんとする三代目山本勘助。真弓を戦国ラグナロクの舞台に呼び寄せた張本人である才蔵の師匠、百地三太夫。真弓の従姉弟で真弓召喚の際に巻き込まれて戦国ラグナロクの世界に来てしまった南方勇太。
敵の総大将として織田信長?とかが出てきたりします。が、歴史上の人物ですがそのまま登場、というわけではないのが田中天節ということです…。
・シナリオ
—時は戦国。織田信長が天下に威名を轟かせ、後に安土桃山と呼ばれることになる時代。覇道を歩む信長の影で、怪しげな集団が暗躍していた。…その名は魔界十字軍!女子高生・天野真弓は“忍法時滑り”の術によってこのとんでもない世界に召喚されてしまう。途方にくれる彼女の周りには、奇妙な縁により仲間が集う。果たして真弓は無事現代へ帰れるのか!?奇才・田中天の手によって、史書に記されなかった異形の戦国絵巻が、今、紐解かれる。(7&YHPより抜粋。)
・感想
「こいつは凄い荒唐無稽で冒険活劇でデタラメな戦国だぁっ!」が、読了後の第1感想でしたね。
良い意味で戦国時代のイメージとかを壊してくれてます。―――時は戦国。という裏表紙の紹介だけを見るとDXで戦国、という武将同士の戦乱の中にオーヴァードなんかが登場するというDXのテイストが入るのかな、と思いますが蓋を開けてみたら「なんちゃって戦国時代」でした。また、表紙のイラストだけ見ると真っ当な現代風DXリプレイのように見えますが、中身を見たら武士で甲冑で刀に忍者で修験者出るし妖怪出るしで戦国テイスト満載です。そんな意味でも第一印象を裏切ってくれます。
内容としては、時間を越えてIf世界の戦国時代に来てしまった現代人の女子高生、天野真弓が神宝である「トキジクの弓」を託され、それにより時の権力者として君臨する織田信長に追われながらはぐれてしまった従姉弟を探し、現代に戻る方法を探す―――という流れです。その流れの中で、真弓はイクフサ、浄ノ進、才蔵たちに助けられながら信長が送り込んでくる敵将を退けながら、魔道に堕ちた信長の支配を受ける諸国を救っていく―――そんな感じになっています。
収録されているのは全2編。第1話「女子高生、時をかける!」の巻と第2話「女子高生、金字塔に挑む!」の巻。
第1話「女子高生、時をかける!」の巻では、物語のプロローグ的なものとして敵の説明と現代人である真弓がどうしてIf戦国の世界に来ることになったのかということ、それからパーティが集結する過程が書かれています。時間を越えて登場する、という立場のPC1である真弓が他の3人との掛け合いでいい味を出しています。タイムスリップものの醍醐味を余すことなく見せ、彼女の立場の確立と今後に対する布石などにも使われていました。そして驚きの敵役―――吃驚するようなふざけた姿で登場する敵ですが、最初に登場する分はまぁ、初めてのボス戦ということで若干弱さを見せてもいましたが、次から登場する分は意外とその実力的なものは高く周りの支援も合わせたコンボでPCに早々に脅威を感じさせていました。初っ端からこれだと、今後にも敵の強さや能力的な嫌らしさに期待が募ります。
第2話「女子高生、金字塔に挑む!」の巻では、文字通り真弓たちパーティが甲斐の国を立ち寄ったとき、そこを支配する存在から甲斐の国を救うため、第2話のボスによって建てられた金字塔へと向かうことになります。しかし早速力押しとは行かない読み手を飽きさせない展開でした。突如23体もの敵(トループに非ず)に奇襲を受け大ピンチかと思えばとてつもなく馬鹿馬鹿しい理由で敵を撃退できたり、人質を取られた真弓たちが人質の開放のために情報収集からなる奇襲作戦を立てて敵が行動を起こす前に中ボスを『狙撃』するなど、敵味方とも、相手の先手を取る戦いを繰り広げていた感じでしたね。
総じてこの作品は、かなり荒唐無稽で馬鹿馬鹿しい話です。真面目な戦国時代を舞台にしたDXだと思っていると手痛いしっぺ返しを受けるでしょう。が、著者先生である田中天先生の著された前シリーズ「DX・リプレイ・トワイライト」を読み、あのノリについていけて大爆笑した!という人ならこの作品は『買い』だと思います。変態的な紳士として「トワイライト」で登場したクレオパトラ・ダンディ。あんな存在がこの作品では手を変え品を変えて次々と登場する―――そう聞いてワクワクできるあなたなら、爆笑必至、でありましょう。