俺の妹がこんなに可愛いわけがない2

俺の妹がこんなに可愛いわけがない

著者・伏見つかさ先生。挿絵・かんざきひろ先生。伏見先生は同レーベルから「十三番目のアリス」シリーズを出されています。他のレーベルでもVA文庫「名探偵失格な彼女」などを出されています。挿絵のかんざきひろ先生は、アニメーター兼イラストレーターでアニメ関係の近作では「二十面相の娘」OP&ED原画、「バンブーブレード」の作画監督などをされていたそうです。
・登場人物
主人公で高坂家の長男、極々普通の一般人で、妹と冷戦状態と言う以外は特に特徴と言える特長もないが誰かに何かあった時には口悪くもお節介なほどに相手に関わろうとする高坂京介。ヒロイン的立場の女性キャラで京介の実の妹だが、京介とは冷戦状態で滅多に関わりも言葉を交わそうともしない美人系で陸上部の期待も厚い万能中学生だが、ドSで実はヲタク趣味と言う高坂桐乃
京介の幼馴染で京介曰く「おかん」な性格をしている京介の同級生、田村真奈美。桐乃が参加したオフ会で知り合うゴスロリ姿で毒舌家のハンドルネーム“黒猫”。桐乃、黒猫が参加していたコミュニティ『オタクっ娘あつまれー』の主催者で、こてこてのオタク姿で自分をキャラ作りするハンドルネーム“沙織・バジーナ”。
この巻では新キャラクターとして桐乃の親友の少女、新垣あやせが登場します。
・シナリオ
冷戦関係にあった妹・桐乃からとんでもない秘密をカミングアウトされ、ガラにもなく相談に乗ってやる—という思い出したくもない出来事からしばらく経つが、俺たち兄妹の冷めた関係は変わりゃしなかった。ところが“人生相談”はまだ続くらしく、「エロゲー速攻クリアしろ」だの「不快にした責任とりなさい」(どうしろと?)だの見下し態度全開で言ってくるからマジで勘弁して欲しい。誰だこんな女を「可愛い」なんて言う奴は?でまあ今回俺に下った指令は「夏の想い出」作り(?)。どうも都内某所で開催される、なんたらとかいう祭りに連れてけってことらしいんだが…。(7&YHPより抜粋。)
・感想
この巻は桐乃に京介が人生相談をかけたり、幼馴染との関係で青春らしいやり取りがあったり、桐乃の友人関係で京介が誤解を深めてしまったり、桐乃に夏休みの楽しい思い出を私に作らせろと言われてコミケに一緒に参加したり、桐乃の秘密が親友にばれてその関係修復に京介が奔走することになったりと、色々な出来事が起きた巻でした。
着実にオタク化が進みつつある京介ながら、だからこそその半端な立場だから言えること、やっていることがこの巻では結構な見所ですか。それから桐乃の親友である新垣あやせの存在。彼女のオタクに対する考え方は教育ママ的な一面的情報による偏見。その考えと京介との衝突など、見る所は多く、また一種の勉強になりますね。
内容的には、前半は京介がエロゲを進めるために初めてWikiに触れたり、インターネットを手に入れたばかりの年頃の男の子がついやってしまってそれを桐乃に悟られて怒られたり、初めてのコミケに桐乃を楽しませる―――接待的な意味で―――ために沙織や黒猫へと協力を頼むなど手を回したりと、京介が桐乃に始めさせられた?オタクライフの充実振りを見せながら後半、桐乃の趣味バレに関してもう一度京介が妹のため、兄として骨を折る―――そんな話になっています。オタクライフの充実に関しては、オタク初期とも言うべき一番楽しそうな時期をピックアップして書かれていて、自覚したオタクであるけどあらゆる意味で初心者の桐乃や、無自覚的なオタクであるがゆえの京介の言動がコミケ会場と言う場所で爆発していて楽しそうだなぁ、と微笑ましく見てしまいます。
後半、桐乃とあやせの関係がギクシャクし始めてからは京介が「一般的な人たちが持ち得るオタクへの偏見」と戦うような形になります。マス・メディアが報じる情報の不確実さに踊らされている形ながら正論でもあるあやせに対し、京介は父親との確執も越えて情報を収集し、不確実ながら論理武装をして挑みます。互いのオタクに関する見解。その衝突による起こり得る不可避な決闘―――そんな感じです。
総じてこの巻は、前半は和気藹々とした中にちょっと妹の毒舌や暴言などが混じりながらも楽しくオタクライフをしている高坂兄妹の日常的なものが書かれています。しかし後半は桐乃と親友の衝突がメインになり、オタクであることは楽しいことだけじゃない、ということを実感させられる内容になっていましたね…。それでも、自分に素直である妹の姿はとても凛々しく可愛らしかったです。