ふるこんたくと!

ふるこんたくと! ハートに一番近い場所

著者・あすか正太先生。挿絵・uni8先生。あすか正太先生は同レーベルから「総理大臣のえる!」シリーズ、スーパーダッシュ文庫レーベルから「初恋マジカルブリッツ」シリーズなどを出されているギャグ小説に定評があり最近は微エロ+コメディな作品を精力的に出されている作家先生ですね。
・登場人物
ずっと山に篭って修行していたために世俗の事どころか男と女という性別の違いさえ良く知らない天然世間知らず格闘家が主人公、「海神虚心流」という流派で『点穴術』の使い手の御統一路。
ヒロインは3人。一路の幼馴染で猛脚を持つが現在は武道を辞めている羽鳥久美恋。不知火流抜刀術を使う『男子根絶委員会』の一員、古舞静。一路に救われた恩を返すため、遥々と鳴神学園へとやってくる『天々感謝拳』の使い手にして天才の中の天然、純情可憐。
サブキャラクターは鳴神学園永世生徒会長、日々樹ワタル。久美恋のルームメイトの謎宮鍵子。男子根絶委員会の一員で静に心酔する乙女ヒトミ。男子根絶委員会の一員で久美恋に懸想する夢野アリカ、などなど。
・シナリオ
あらゆる構造体に存在する崩壊点を突いて破壊をもたらす『点穴術』。山ごもりでそれを体得した御統一路は、さらなる奥義を目指し、鳴神学園に転入することに。ところが学園に到着早々、女子戦闘集団「男子根絶委員会」に襲撃されてしまう。その戦いのなか、ある衝撃が彼を貫く。「この柔らかさは一体!?」。それは世間知らずの格闘少年が初めて触れた女体の神秘だった!一路の生真面目でちょっとHなズレまくり学園修行が、いま始まる。(7&YHPより抜粋。)
・感想
初恋マジカルブリッツ」に続く、エロス要素が入ったコメディ・バトル―――エロコメバトルもの―――といったところでしょうか。主人公の男の子がいて、その周囲の女の子を巻き込んてボディタッチとかをしたりしながら状況を打破して物語が進んでいきます。
この作品は、「初恋マジカルブリッツ」が魔法を主体に置いたマジック・ファンタジーなら、武道とか武術とかを主体に置いたフィジカル・ファンタジーという感じですかね。世界に感謝を捧げることで『衝撃波』を生み出すなどの、トンでもな展開を引き起こす引き金を「魔法」ではなく「武術」に置き換えたもの、という感じです。ですが基本はフィジカルな面に重点を置いているので、ツボを突くことによる経絡操作とか抜刀術による連続瞬撃とかの、技術面で納得できる『武術』がメインに扱われているので全てがトンでも理論、というわけでもないです。前半は普通の武術バトルもの、後半になるとトンでも理論が混じってくる、という流れです。後半戦は完全に聖闘士聖矢的な戦闘になっていましたからね…。
ですがこの作品のキモはやはりエロスが端々に混じることでしょう。文体的にそうなる、というか確信犯的にわかっていてやっているとでもいいますか、読者に誤解を与えることを厭わない文章がエロスの世界を開くというか。主人公は真面目により良い人体のツボの突き方を模索しているのですが、地の文、それと相手になっている女の子の反応からエロスの世界にしか見えない、という展開になります。そんな中での女の子たちの天啓に閃いたような考え、地の文での無駄を省いたが故に誤解を与えるしかない文章などが、読者のさらなる誤解を招きいつしか誤解のスパイラルに陥り、エロス世界の扉をさらに開いていく…最後のオチまでそれで締めるということで、この作品は「バトルエロコメディ」ではなく「エロコメディバトル」なものだと思った次第です。
総じてこの作品は、エロス5:コメディ3:バトル2くらいでかなりHな話が内容を席巻する作品です。しかしその中に自分の生き方を探す、という路の模索による一路の葛藤や、代々の伝統に縛られた少女がその伝統から脱し、新しい路に進もうとするなどのちょっと良い話、ためになる話、的な流れが混じっていて、将来を模索する若者の話という側面もあり彼ら彼女らがこれからどんな路を行くのか、気になるという面白みもありましたね。そんな未来を探す若者の、汗とエロスと時々血も出るけど基本はライトなノリの作品―――そんな印象でした。