二人で始める世界征服

二人で始める世界征服 (MF文庫J)

二人で始める世界征服 (MF文庫J)

二人で始める世界征服

著者・おかざき登先生。挿絵・高階@聖人先生。第4回MF文庫J新人賞『審査員特別賞』受賞作品です。挿絵の高階@聖人先生は電撃文庫レーベル「二四〇九階の彼女」シリーズ、HJ文庫「AKUMAで少女」シリーズの挿絵などを描かれています。
・登場人物
主人公は普段は平凡な優男な少年、しかし首のボタンを押すと巨体に翼と鋭い爪を持つドラゴンに変身するように改造されリンドヴルムという名を持つようになった赤尾竜太。ヒロインは自在に動かせ、物を掴んだりできる長い髪を持つラプンツェルこと竜太の同級生で、秘密結社デーモンテイルの総帥を最近継いだばかりの新総帥、久喜島千沙。
サブキャラクターは、千沙や竜太の同級生でメガネをかけた理知的な女性、高槻姫乃。両親がいないがそれを感じさせない元気娘で竜太の幼馴染、学校に通うために毎日アルバイトに精を出す片桐ありす。千沙の祖父で秘密結社デーモンテイルの頭脳、竜太を改造した張本人でもあるドクター・フォートレス。政治家の阿久津竜一郎。神出鬼没な犯罪者集団で、銀行強盗などを行うレッドキャップ隊とその隊長であるリトル・レッドフード。
・シナリオ
僕こと赤尾竜太は、高校の入学式当日に、クラスメイトの女の子に声をかけられる。「あの、覚えてませんか?幼稚園のときおもちゃの指輪を探してもらった、千紗です」そう名乗った気弱そうな彼女は、地味だけど笑顔が可愛い、スタイル抜群の美少女だった。声をかけられたことで仲良くなり、幼馴染みのありす、委員長の高槻もまじえて楽しい学園生活をスタートさせたが、ある日、千紗の両親が亡くなってしまう。「僕にできることがあったらなんでも言って」とはげますと、千紗はとんでもない“お願い”をしてきて…!?問答無用のぽややん世界征服、始動。(7&YHPより抜粋。)
・感想
この作品は、「ご町内から始める世界征服物語。征服が進展するかは状況しだい!」という感じの、ゆる〜くほわほわ、時々アクションで盛り上がりもあるよ、な物語です。
主人公の赤尾竜太やヒロインの久喜島千沙は、クラスメイトの片桐ありすや高槻姫乃と一緒に何不自由なく楽しく学園生活を過ごしていた。だがそんなある日、突然千沙の両親が事故で他界する。千沙に残されたのは両親が残した遺産と組織―――会社ではなく『秘密結社』だった。世界征服のための組織『デーモンテイル』、その新総帥として就任したばかりの千沙は、志の違いから離れていった組織のメンバーの補充として主人公―――赤尾竜太に声をかける。元からクラスメイトであり、またにくからず思っていた相手だけあって竜太は二つ返事で協力を承諾する。だけどそれは、肉体改造を受けて翼を持つ竜「リンドヴルム」へと改造されることも意味していた。なし崩しに改造人間となり、千沙―――コードネーム:ラプンツェルと一緒に世界征服を始めることになる竜太。果たして二人の行く先は!? といった感じです。またトンでも技術―――人体改造や反重力的な技術、現行のステルス迷彩などが玩具に感じられる認識阻害装置など、SFファンタジー的な設定が多く、そういうものが好きな人も楽しめるかと。
内容は一見ヘビーに見えるも、その実態はかなりおきらくな展開によるゆるゆるとした話です。竜太と千沙が二人で新デーモンテイルを世界征服を目標に発足するも、当初からやっていることは人助けや銀行強盗の阻止といった『正義の行為』。そんな性根が優しい二人による「悪を名乗りながら正義をする」というギャップやイメージの相違を楽しむ―――というのが、この作品の面白いところかと思います。
また、主人公の二つの顔を使い分けている様子も面白いですね。一人称『僕』と『俺様』で口調などが違いますが、考え方は統一されていて性根は同じ。その意味でもギャップが楽しめると思います。まったく別人に見えるも底が繋がっている、二面性がある―――それを変身前、変身後、ということとして見ると、特撮好きにはたまらない満足感が沸くのではないでしょうか。
総じてこの作品は、世界征服を目指しながらご町内の人気者になっていくちょっと変わった世界征服組織のメンバーによる、おきらく世界征服模様が楽しめます。