ぴにおん!

ぴにおん! (MF文庫J)

ぴにおん! (MF文庫J)

ぴにおん!

著者・樋口司先生。挿絵・タカハル先生。第4回MF文庫Jライトノベル新人賞『佳作』受賞作品です。樋口先生はこの作品がデビュー作、とのことです。
・登場人物
主人公で「指先に火を灯せる」という超能力を持つ佐々木与四郎。いつもヘッドホンをつけて大音量で音楽を聴いていて、「動物の話す言葉がわかる」超能力を持つツンツンさんの木元二葉。ある超能力を持つが秘密にしてその仔細は与四郎たちにも語ろうとしない、天使モードと小悪魔モードという二面性を持つ菅崎ナナ。転入生として登場する、「瞬間移動」の超能力を持ち関西弁を話すニーナ・ヴァレンティ。数学教師で与四郎たちの学校の教員、柊一美。基本的にこの5名での話になります。
・シナリオ
俺の名前は佐々木与四郎。何の変哲もない高校生だ。…すまん、何の変哲もないというのは嘘だ。実は超能力が使える。その力を使って、俺は日夜仲間たちと共に悪の組織との戦いを繰り広げている。…やっぱり嘘だ。超能力が使えたからって良いことなんか何も起きないし、楽しくない。…そう思っていたんだけれど—「木元二葉です。佐々木与四郎と3年後に結婚します」高校の入学式の日、自己紹介でこんな爆弾発言をしたヤツがいた!それからというもの可愛い女の子たちに次々に求婚されて—いったいなにが起きてるんだ!?第4回MF文庫Jライトノベル新人賞「佳作」受賞、独特のテンポで送る新感覚超能力コメディ、スタート。(7&YHPより抜粋。)
・感想
微妙な超能力「指先に火を灯せる」を持っていた青年、佐々木与四郎がうっかりTVに出たことで、彼の特異性に気が付いた同じような超能力者の女の子たちから次々と求婚されるハーレム・学園青春・時々超能力・ストーリー…ってところでしょうか。
この作品の特色は、美人から次々求婚されるというハーレム的なモテモテストーリー…かと思いきや、そのきっかけとなった『超能力』に関して登場人物たちの色々な思惑が絡み合ったりした結果カオスなストーリー展開になる、という意表を突かれる展開になります。
睡眠中の主人公たちの頭脳にまで干渉した超能力から派生する物語は、もはや何でもあり。なのに「どこからどこまでが現実なのかわからない」という、読者も登場人物たちと同じ条件に置かれていて、物語はどれが虚構でどれが現実なのかわからなくなるという、読者泣かせの展開です。ですがその「物語が何処へ行くかわからない」という状況を読者ではなく自分自身も「登場人物」として楽しめ、それでいて一歩引いた傍観者の視点で読むなら臨場感ある物語が楽しめると思います。つまりこの作品は、どれだけ『作品世界にのめり込めるか』で大きく評価が割れる作品ではないでしょうか。
と、なんだか小難しげに聞こえる感想をまずは述べましたが、単純な学園青春ストーリーとしてもライトノベルしていて良い作品だと思います。女の子たちに振り回される主人公…基本的なラブ・コメディですが『超能力』が関わってくるとサバイバル要素が出てきたりして、一風変わった見所が楽しめますしね。