神曲奏界ポリフォニカ 赤8

神曲奏界ポリフォニカ クリムゾンS 1 (GA文庫)

神曲奏界ポリフォニカ クリムゾンS 1 (GA文庫)

神曲奏界ポリフォニカ クリムゾンS

著者・榊一郎先生。挿絵・神無月昇先生によるシェアード・ワールド・ノベル・シリーズの赤シリーズにおける第8巻。位置付けとしては第5巻…『ビギニング・クリムゾン』の後の話、に位置付けになります。榊先生はMF文庫Jレーベル「イコノクラスト!」シリーズや、ファミ通文庫の「まじしゃんず・あかでみぃ」シリーズなど、精力的に様々な作品を出しておられる今、脂の乗っている小説家ですね。神無月先生はキネティック・ノベル版ポリフォニカ赤でも原画をされていて、著作に18禁PCゲーム「デミウルゴスの娘」や「魔王と踊れ!」といった作品もあります。
・登場人物
メインキャストは、主人公にしてツゲ神曲楽士派遣事務所所属の神曲楽士…と未来ではなりますが、ここではまだトルバス神曲学院の学生という、朴念仁が珠に傷だが優しい性格で人に好かれやすいタタラ・フォロン。ヒロインは、フォロンの契約精霊で始まりの精霊の1人でもあり、『紅の殲滅姫』などの異名でも呼ばれていた事のある少女の姿をした上級精霊、コーティカルテ・アパ・ラグランジェス。
サブ・キャラクターはこちらも過去の姿・・・ということで学生のサイキ・レンバルト。ユギリ・ペルセルテとユギリ・プリネシカの姉妹。さらに学生時代でしかまだ登場していなかったと思います、コマロ・ダングイスが登場しますね。
・シナリオ
「お前の歌に誘われて来た」12年前、孤児院の屋根で少年は赤い髪の精霊と出逢った。そして彼は願った、ずっと側にいて欲しいと。時は流れ、少年−タタラ・フォロンはトルバス神曲学院で学ぶ身となったのだが。「そんなの神曲じゃない! そんなくだらない音の羅列を得る為に私はお前と契約したんじゃないぞ!!」ようやく再会して一緒に暮らし始めた二人だったが、どうしてもフォロンはコーティカルテ神曲を奏でてやることができない。やがてとある事件をきっかけに彼女が出て行ってしまい……。ファン待望のクリムゾンシリーズ学生編、ついにスタート!(GA文庫OHP紹介文より抜粋。)
・感想
第5巻「ビギニング・クリムゾン」で描かれた学園編の続きにして、キネティック・ノベル版の第2話目以降となる話ですね。といっても、大幅な書き直しがされているようですし、影で暗躍していた第3話以降で登場する『敵』側の話や、ユフィンリーの活躍、ユギリ姉妹の話などは続編の巻でより詳しく書くためでしょうか、省かれていますが。フォロンがコーティカルテと再開してしばらく後の、神曲の演奏で悩み迷走しているフォロンの姿が中心として見られます。同時にフォロンが紛れも無い神童である―――赤の女神を契約精霊にするだけの技量を持った、真の天才である事がわかるだけのことが書かれる話、でもありますね。内容としてはそんな所で、この作品は悪く言ってしまえば一度世に出した作品の焼き直し、一度見た作品をまた見せられている―――と、そんな感じになっています。ですが書き直し&出番が省かれた人たちが居た分、フォロンとコーティカルテに関して深く掘り下げて語られている、となっていてフォロンとコーティカルテの2人のイチャイチャ振りと擦れ違いと仲直りなど、2人に関する話が色々と丁寧に、且深く掘り下げて見られます。
ですがやはり一度見た作品だけに、学園編とするなら丸々、新ストーリーがほしかったところですね。一応書き下ろしとして、コーティカルテがフォロンの元へやってきた当日の夜に起きたベッド・インに関する話などがありましたがちょっとしたひと騒動の話であり、一度読んだ作品である事と、書下ろしも短かったので作品全体的に物足りなさを感じました。
クリムゾンSと銘を打ち、新シリーズとして始めていく、という形でこれからも展開されていくようですので、キネティック版の第3話、第4話に当たる部分を小説として発刊されたりするのでしょう。ですからこの先、どれだけのオリジナルエピソードが見られるのかにキネティック版既読者としては期待ですね。