ラッキーチャンス!4

ラッキーチャンス!

著者・有沢まみず先生。挿絵・QP:flapper先生による学園ハッピーラブコメディ、だそうです。著者先生の他刊行作品は「インフィニティ・ゼロ」シリーズや「いぬかみっ!」シリーズがありますね。どちらも電撃文庫刊です。「いぬかみっ!」がいちばん有名でしょう。QP:flapper先生は2人組みの挿絵家のコンビ名で、MF文庫Jの「えむえむっ!」などの挿絵が最近のお仕事でしょうか。
・登場人物
霊能力を持ち日本最強として名を馳せる”ごえん使い”と呼ばれるが極貧で不運すぎる運命の主人公・外神雅人。そんな雅人を幸せにするべく雅人に憑きにくる元・疫病神で現・福の神のキチ。雅人の同級生でお金持ちお嬢様な雅人の片思いの相手の二ノ宮良子。雅人の後見人で雅人が通う学校の校長をしているオカマ校長のサモン=時二郎。この辺りが名前有りで特にメインっぽいキャラでしょうかね。他に雅人のクラスメイト、超絶シスコンな二ノ宮良子の兄、二ノ宮速彦、最強に拘る”嘘”使いの特命霊的捜査官の天草沙代、サモン=時二郎の契約召喚獣で白蛇の擬人化した少女トトなどが登場します。
・シナリオ
大好きな雅人と同じクラスに転入することになった、福の神のキチ。これで日本一不運な雅人にちょっとは幸福が訪れると思いきや、そんなことはまったくなく…。突然、校長室を訪れた恋の伝道師の占いに、キチも雅人も二之宮さんも巻き込まれ、学校は大混乱に!いったい雅人の運命の人って誰なの!?その他、片想いの二之宮さんと、キチ、トト、夏美と一緒にプールに行く話や、天草沙代とめちゃくちゃ怪しげな屋敷で特殊な趣味の悪霊たちを退治する話など、今回もお色気いっぱい夢いっぱいでお届けします。(7&YHPより抜粋。)
・感想
この作品は新米福の神であるキチに取り憑かれた主人公である外神雅人を中心とした高校生活を、ちょっと霊能者世界なんかに触れながらも青春している様子を描いたシリーズ物の作品ですね。
収録されているのは全部で3話+エピローグ、という形で第1話「キチ、相変わらず」第2話「二ノ宮良子、目覚めかける」第3話「天草沙代、気がつかない」となっています。第1話「キチ、相変わらず」はキチが学校に通うようになり、学校案内などをしていたところでマルクリエール里子という有名で当たる占い師がサモン=時二郎を尋ねて学校にきており、彼女に出会って雅人たちが占ってもらうがその占いの為に大騒ぎになる、というお話です。第2話「二ノ宮良子、目覚める」は前の話の続きっぽくなっていて、占い騒動の結果がまだ出ていない二ノ宮良子と外神雅人の2人は、そのままの状態で週末の日曜日に佐野夏美の手回しで雅人、良子、キチ、夏美の4人でプールにいくことになります。そこで遊んだり速彦に引っ掻き回されたり良子が溺れた所を雅人に助けてもらったりしているうち、良子はただの仲の良い友人、と思っていた雅人の事を「本当に仲が良いだけのただの友達?」と、意識していく―――そんな話になっています。第3話「天草沙代、気がつかない」は、特命霊的捜査官である天草沙代が、またやっかいな仕事を押し付けられる形になり、それを雅人に手伝わせてこなす―――という話が基本になっています。この話は著者の前作「いぬかみっ!」シリーズで登場した道具が出てきたりして、若干のクロスオーバー的な展開になっていました。明言されていませんが、沙代の上司というのも「あの人か?」と思うような面もあったりして、前作を知る人には倍面白い展開でしたね。
そしてヒロイン勢の心の動きも激しく、雅人を意識し始める良子や、占いの結果、雅人に近づけなかったながらもその内面は大きく揺れた沙代など、主人公である外神雅人を中心とした女性関係では大きな揺れがあった巻でもありましたね。ですがヒロイン勢の中でもサブヒロイン的な立場の人に、主人公との接近がこの先はない、と明言するかのような文脈や展開など目新しい物語の進め方があって、その点は意表を突かれました。ハーレムっぽい展開で皆仲良く〜な作風なのに、主人公とサブヒロインの間に一線を引く、というのはこれまでに無い展開かな、と感じましたね。
総じてこの巻は、第1話で出る『占い』に、始終雅人たちは振り回される―――そんな展開が中心でした。またそれにより出た占いの結果を今後、どれだけ物語りに絡めてくるのかなどが気になりますね。サブヒロインとメインヒロインとの扱いにどれだけ差が出てくるのか、というところや主人公がどんな態度でサブヒロインと接していくのか、などなど、今巻で出た下地や伏線が続刊でどれだけ動きを見せるのか、期待です。