もて?モテ!1

もて?モテ!―ある日突然モテ期になった! (MF文庫J)

もて?モテ!―ある日突然モテ期になった! (MF文庫J)

もて?モテ! ある日突然モテ期になった!

著者・長野聖樹先生。挿絵・京極しん先生。長野先生は富士見ファンタジア文庫『WSW EXODUS』でデビューし、主な著作に『あめーじんぐ・はいすくーる』(富士見ファンタジア文庫)、ノベライズに『仮面のメイドガイ』(富士見ファンタジア文庫)などがあります。京極先生は『ほうかご百物語』シリーズ(電撃文庫)『セキララ!』シリーズ(ファミ通文庫)の挿絵などを描かれていますね。
・登場人物
主人公は女の子にモテないけれど、モテ王国建国を目指す高校2年生の村田良太郎。ヒロインたちは良太郎の義理の妹のツインテールツンデレ風味の村田六花。良太郎の義理の姉で包容力のある女性、という感じの村田麻美。お嬢様で婚約者との結婚という決まったレールを歩くのを嫌い、良太郎をニセ恋人に仕立て上げ婚約話を回避しようとする九条明日香。ツンツンした委員長だが、潰されそうな姉が働く食堂を守る為に良太郎と料理勝負の為の修行をすることになる秋野仁美。自分を手にした良太郎をモテモテにすることでモテ王国建国を手助けすることになる、モテ携帯の精霊サクラ。ライバル役―――と言うか悪役として登場し、良太郎が目指すところのモテ王国とは逆の奉仕されるだけのハーレムを作ろうとする藤原智也。
・シナリオ
良太郎は女の子にモテないけれどモテ王国建立をめざす高校2年生。今日も今日とてハーレム成立を目指し、渾身の勧誘をかけたがあっけなくそして盛大にフラれてしまった。そんな良太郎が手に入れた不思議な携帯電話…突如現れたちびっ子神様によると、異性のアドレスを登録してメールすると、その子にモテモテになるらしい。「そんなわけがあるか!」だがしかし—想像しよう、クラスメイトのあの子や憧れの彼女にモテるオレ!人生初のモテ期到来!!全部オレのターン!!!!これがモテへのニューロード。ハイテンション・ラブコメディ登場ですモテ。(7&YHPより抜粋。)
・感想
この作品は、アドレスを登録した相手に好意を持ってもらえるという特殊能力を持った不思議な携帯電話を手にした、ちょっとバカというか天然直情な高校生、村田良太郎が女の子を助ける為、泣かせない為に色々頑張る…そんな話です。
収録されているのは全3話で、それぞれ第1話「モテ道……未だ極められず!?」第2話「モテ王国、危機一髪!?」第3話「モテ王国建国!?」から成り立っています。
第1話「モテ道……未だ極められず!?」では、委員長ヒロインであるところの秋野仁美の話。姉の働く食堂が他の食堂に統合され廃止されるのを防ぐ為に料理対決をする事になるが、過労から姉が倒れてしまう。そんな倒れた姉に代わって料理勝負をする仁美を、良太郎が助ける―――そんな話です。料理が苦手と言うか、独自性の強すぎる工夫をすぐにしてしまい結果的に大変な味になる料理を作ってしまう、という典型的な殺人料理を作る仁美を相手に良太郎が味見係を兼ねた指導役として必死な様子が笑いを誘いながらも、随所に挿入されるエロゲ並みのイベントが桃色空間を作ったりしていて、全面コメディなノリがはっきり見えていたのが印象的でしたね。
第2話「モテ王国、危機一髪!?」では、婚約者との仲を強引に進められるのを嫌ったお嬢様ヒロイン、九条明日香の話。意に添わない婚約話を進められるのを嫌った九条明日香が、友人である村田六花を通じて知った良太郎を偽恋人に仕立て上げ、婚約を回避しようとする話です。アホで女性にだらしない男、として見て最初は嫌悪していた良太郎が本気で女性のことを考えて行動している、ということを知った明日香の前後の対応のギャップが激しかったですね。
第3話「モテ王国建国!?」では、モテ携帯を第2話で知り合った性悪の同級生、女性を順位付けて見る藤原に取られて学校の女生徒たちが藤原の虜になっていってしまう。その中には良太郎の義妹の六花もいて―――果たして良太郎はモテ携帯を取り戻せるのか、という話です。話としては義妹ヒロインであるところの村田六花の話、となります。良太郎は義妹を助けるために藤原の家に乗り込みますが、その結末は如何に、という感じですね。この第3話は一応この巻のラストエピソードと言う事で、第1話と2話で助けたヒロインたち――ー仁美や明日香が良太郎を助けにくる、という流れがありそれまでの良太郎の行動の結果が見られる話、でもありますね。またこの話は、他のヒロイン達―――委員長ヒロインの秋野仁美やお嬢様ヒロインの九条明日香の話の流れとは違い話が終わっていませんね。委員長、お嬢様の話である第1話と第2話がADV風に言う所のルートクリアまで行ったのだとしたら、義妹ルートはまだ途中でフラグを立てて終わり、という印象です。
総じてこの作品は、ADVゲームでいうところの1人のヒロインのルートをそれぞれの話で初めから終わりまで駆け足で進めていく、という印象でしたね。主人公に興味が無かった、或いはどこか嫌悪していたヒロイン達がモテ携帯という特殊存在があったとは言え、あっという間に態度を変えて恋心を抱くまでいくのは正直駆け足過ぎる気がしましたが、ラブコメディ作品であることを考えそういった所は流してしまえば軽く楽しめる作品として読めると思います。