アリアンロッド・サガ・リプレイ・アクロス1

アリアンロッド・サガ・リプレイ・アクロス1 天に月、地に剣

著者・久保田悠羅先生&F.E.A.R.。挿絵・植田亮先生&佐々木あかね先生&安達洋介先生&いろは楓先生&ツジヤスノリ先生&猫猫猫先生。著者の久保田先生はアリアンロッド・リプレイの『ハートフル』シリーズを書かれていて、リプレイでもPC(無印シリーズ:フェルシア)としても活躍されていますね。挿絵のメインは植田亮先生で、敵キャラクターイラストなんかに他の先生のイラストが出たりなどしている形になっています。
・登場人物
メインとなるPCパーティはシーフ/レンジャーでパーティのリーダー兼頭脳担当、スキルで隠れ潜みながら不意打ちと言う形で攻撃する暗殺者の様な戦い方をする、冷静なエルダナーンを演じるユンガー@『ナイトウィザード』の柊蓮司の声でお馴染み、矢薙直樹氏。メイジ/メイジでパーティの後衛の主力、金髪のヒューリンで別のサガ・リプレイシリーズのPCアルの姉ということになった商人の娘のエルザ・ブルックス@『鉄のラインバレル』『ナイトウィザードTheAnimation』でシナリオなどを担当している吉村清子女史。16歳少年のヒューリンですが出生に謎があり、背中から羽が生えるウォーリア/ガンスリンガーの射撃での攻撃をするツヴァイ@『アリアンロッド』シリーズの生みの親、メインライターで数々の『世界の危機』を演出するGMでもある菊池たけし氏。エクスマキナという機械人形の様な種族で、パーティの壁役、回復役のアコライト/アルケミストのダイン@F.E.A.R.社員で『アルシャードff』『セブン=フォートレス』『ナイトウィザード』などのTRPGシステムの製作にも関与していた遠藤卓司氏。
他の登場人物はPCたちが所属する傭兵隊“黄金の狼"の隊長、カテナ・アウレア。副隊長のノルベルト。ツヴァイに好意を抱いている傭兵のミリア、などなどです。
・シナリオ
帝紀八〇七年。歴史ある王国・アヴェルシアに強国・グラスウェルズ王国が襲い掛かった。アヴェルシアに雇われる傭兵団“黄金の狼”はこの急襲に対し善戦するものの、撤退を余儀なくされる。エルダナーンのレンジャー、ユンガーをリーダーとする偵察小隊“銀の鈴”は逃走経路として、封印された洞窟都市「オートニア」を選んだ。しかし、そこには…。戦乱のアルディオン大陸を舞台に、1レベルで作成したキャラクターたちが冒険に挑む「サガ」第2シリーズ起動!!これから「サガ」を遊ぼうという方にもお勧めの一冊。(7&YHPより抜粋。)
・感想
新・アリアンロッド・リプレイ・シリーズである『サガ』シリーズの、バージョン『アクロス』、というところですか。この『アクロス・シリーズ』は『無印・シリーズ』とも言うべきサガ・リプレイの過去の話となります。
レイウォール王国、グラスウェルズ王国に挟まれた国、アヴェルシア国。PC達はこの国に雇われた傭兵隊の一員としてスタートします。無印・シリーズではアヴェルシア王国が滅んでいて、レイウォール王国の第2王女ピアニィが主人公として様々な陰謀に巻き込まれる話ですが、この『アクロス・シリーズ』はそのアヴェルシア王国が滅亡するまでを書く、という感じでしょうか。勿論話の展開的に別の要素が入るかもしれませんが…今の所の流れとしてはそんな感じみたいですね。そんな訳で、内容としては大国2つに挟まれている状態から戦端が開かれようとするアヴェルシア王国の窮地に、傭兵隊のPC達が様々な任務を受けたりしてクエストをこなす―――という形でストーリーは始まり、そこから戦線が崩壊した戦場からの脱出や囚われた傭兵隊の仲間の救出に動くなどの、所謂『敗北した側の軍隊』として物語は進められます。収録されているのは2話で『裏切りのプレリュード』『陰謀のアルペジオ』の2つ。
『裏切りのプレリュード』は、文字通りのプレリュード話。PCメンバーの初期状況の説明と、傭兵団の構成員としての活動、という感じで雇われ先であるアヴェルシア王国を攻めてきたグラスヴェルズ王国の軍の構成などを斥候として調べてくる。そしてその後はグラスヴェルズ王国軍を止められるだけ足止めした後、傭兵団が離脱するのでPCメンバーも戦場から離脱する―――そんなミッションを、PCメンバーが進める話です。そんなミッションの中で旧都市跡を見つけて、脱出のためにその中を通り、遺跡と化した旧都市跡でまだ生きていた都市防衛システムや都市を崩壊させた原因を相手にしながら、都市を通り抜ける―――そんな展開が第1話となります。PC達が全員遠距離攻撃が出来る為、GMの考えていた敵の戦略が崩れるなどさっそく面白い展開が見られました。
第2話『陰謀のアルペジオ』は逃げ切れなかった傭兵団の仲間やPCたちの為に囚われの身となったカテナ団長を助ける為、PCたちがシティ・アドヴェンチャー形式で情報を集め、人と知り合い、そこで得られた情報で潜入方法や敵側の配置、潜入後の展開が変わるという潜入物。しかしこの話、リプレイ・シリーズ初のとある結末を迎えますが大掛かりなキャンペーン・シナリオの序盤からコケるわけにはいかないという大人の事情的なもので、都合よくその結末が回避されています。その点はかなり不満を覚えないでもないですが、キャンペーン全体で見れば最初の導入部分とも言えるところ、ということで容認できる範囲でもあるかな、と思えます。ここは個人的感想ですが…。
PCメンバーに関していえばアサシン的シーフ。純正メイジ。ガンナーなバードマン。PCのカバーと回復のプリースト、として役割分担がしっかりされている分、安定感は感じるパーティですね。それだけにギャンブル性の無いと言うか…何かしてくれそう!という面白い(例:戦乱のプリンセスのベネット)のような人がいないパーティです。今後の成長次第では変わるのかもしれませんが。
所謂『逃亡劇』的な、追っ手に追われる形で始まるアクロス・シリーズですがあまり悲惨な印象や絶望的な印象は無く、むしろ明日の為の逃走、という感じでどこか爽快ささえ感じる展開からの物語スタートでした。