神曲奏界ポリフォニカRPGリプレイ

神曲奏界ポリフォニカRPG リプレイ 時を越えた子守歌 (GA文庫)

神曲奏界ポリフォニカRPG リプレイ 時を越えた子守歌 (GA文庫)

神曲奏界ポリフォニカRPGリプレイ 時を越えた子守歌

原作・榊一郎先生。著者・加納正顕先生&F.E.A.R.。挿絵・みかきみかこ先生。挿絵のみかきみかこ先生は「うしゃぎ」などのキャラクターイラストを初めとしたイラストレーター活動が活発で、『ナイトウィザード』『セブン=フォートレス』シリーズのリプレイなどに挿絵やプレイヤーとして参加などされていますね。
・登場人物
レンタルマギカ』シリーズの作者、三田誠先生による神楽鈴を使う神曲楽士で槍で前線でも戦うヤワラベ・ティアン。『神曲奏界ポリフォニカ』の生みの親でもあり『赤』シリーズの作者、榊一郎先生による防御に特化した上級精霊バーセル・ダム・アーゼル。『F.E.A.R.』社のトップにして「ナイトウィザード」では「夢使いナイトメア=ドリームマン」として一部で有名な鈴吹太郎社長による、遠距離攻撃で活躍する中級精霊ネルグリット・クァス・ディストラペリ。通称「王子」ことTRPGシステム『ダブルクロス2nd』開発者の矢野俊作先生によるサポート能力に秀でた神曲楽士、トウヤ・ローゼリエ。
他、NPCはローゼリエの母、トウヤ・フランシーヌ。ティアンの学生時代の知人、シイナ・メイフェア。精霊文字の記された石棺に封じられていた100年前の上級精霊、レイファス・ガリエ・ビークッド。ローゼリエのお見合い相手、アララギ・ウォーカン。
敵役としてティアンと同じシンカゲ流の神曲演奏方を使う黒衣の男、ゴダン・ランドール。精霊研究者のアララギ・ルスケ。アララギの腹心の配下で神曲楽士、フジマ・シラスコ。フジマに従う、謎の八枚羽精霊のオルフィ。
・シナリオ
将都トルバスにある、あまり人気のないトウヤ神曲楽士派遣事務所。対人恐怖症の事務所長にして少女神曲楽士ローゼ。サムライ神曲楽士ティアン。苦労人で優しい白熊型精霊バーセル。口やかましいオウム型精霊ネル。そんな彼らに、持ち込まれた一件の依頼。そこから大事件は始まった。都市を破壊しながら暴走する精霊。謎の楽曲を奏でる神曲楽士!事件は事件を呼び、やがてトウヤ神曲楽士派遣事務所解散の危機に。プレイヤーは、原作者の榊一郎に、「ぱれっと」にも参加していた三田誠、F.E.A.R.社長の鈴吹太郎、人気TRPGデザイナーの矢野俊策という、超豪華メンバー。(7&YHPより抜粋。)
・感想
この作品は「神曲奏界ポリフォニカをTRPGで遊ぼう!」という形のコンセプトで作られたTRPGシステム「神曲奏界ポリフォニカRPG」のリプレイですが、正直なところ「神曲奏界ポリフォニカRPG」というよりは、「神曲奏界ポリフォニカInアルシャードff」、という感じで、ポリフォニカTRPGを遊んでいるというよりはアルシャードffのシステムに合わせて製作したキャラクターでポリフォニカ世界を体験している、という感じでしたね。ポリフォニカRPGの割にはポリフォニカ世界の醍醐味―――神曲演奏による人と精霊の2人で1人であるかのような一体感による共闘があまり見られず、神曲楽士と精霊がそれぞれ別々にあって、それらが『パーティーを組んで全員で共闘している』というだけに感じました。
収録作品は第1話「時を越えた子守歌」第2話「約束の合奏曲」の2つ。
第1話は零細事務所であるパーティが所属するトウヤ神曲楽士派遣事務所が、最近発見された遺跡から中の遺物を運び出す間の護衛を請負い、その関係で発掘された遺物に事件が起きた時に関わっていく話です。
第1話の見所は判定の成功度数で何かのイベントが起きる『FSシステム』が使用されている事と、ロールプレイでその判定に+効果が出るということにしていたところでしょうか。NPCのメイフェアを助け、庇いながらゴダンと戦い、さらにFS判定もして、と第1話とは思えない内容の濃い話になっていました。また、赤シリーズや黒シリーズからゲストとしてツゲ神曲楽士派遣事務所の面々や、マナガとマティアのルシャゼリウス市警精霊課刑事コンビが登場したりして原作読者へのサービスも充実してます。
第2話は第1話の出来事を踏まえながら新しい出来事―――パーティメンバーにしてトウヤ事務所の所長・ローゼリエのお見合い話が浮上して事件を解決しなければ事務所の危機でもある、という話。
FS判定も継続して登場しFS判定によりレイファスを救うなど、物語の要所を締めていました。また第2話でもツゲ神曲楽士事務所の面々がゲスト登場して話に彩りを加えていましたね。
そういった設定や登場人物は面白いのですが、如何せん、肝心のTRPG部分は前述したように「ポリフォニカRPG」というよりは「アルシャードff+ポリフォニカ」の様な様相になっていて特色のある面白みがありませんでしたね。ポリフォニカ世界の割には、神曲楽士と精霊との協力模様が大きく取り上げられたシステムがあるだとか、精霊との契約に関する特殊な設定があるとかがなく、何とも味気ない感じでした。
しかし判定などに関するPCたちの発想の柔軟さは目から鱗が落ちる思いのプレイングなどが見られ、また敵側の設定もFS判定を使った謎解きと敵の弱体化が繋がっていたりして、「ロールプレイの面白さ」に関しては色々挑戦的な試みがなされていました。
総じてこの作品は、「神曲奏界ポリフォニカ」のTRPG作品ではありますが、原作の「人と精霊の神曲を通じた一体感による共闘」では無くあくまでシステム化された「パーティ間での共闘」によりポリフォニカ世界の体験ができる――ーそんな姿を見せているリプレイ作品ですね。