鋼殻のレギオス7

鋼殻のレギオス7 ホワイト・オペラ

著者・雨木シュウスケ先生。挿絵・深遊先生。
・登場人物
主人公は、かつて武芸が盛んな槍殻都市グレンダンで『天剣授受者』と呼ばれる12人の最上級の武芸者の1人にまでなったが、武芸者の誇りを汚す行為で都市を放逐されて学園都市ツェルニで1からの再スタートを志すレイフォン・アルセイフ。ヒロイン1、レイフォンに目をつけて自分の小隊にスカウトした、都市を守りたいという強い意志と信念を持つ普通の武芸者の女生徒、ニーナ・アントーク。ヒロイン2、ニーナの小隊に所属する天才的才能を持つ念威操者だがやる気の無い少女フェリ・ロス。ヒロイン3、入学式で起きた暴動でレイフォンに助けてもらい彼に思慕の念を抱くようになる新入生、引っ込み思案で気が弱いが料理が好きなメイシェン・トリンデン。
サブキャラクターは、フェリの実の兄でレイフォンたちが住む学園都市ツェルニの生徒会長、カリアン・ロス。メイシェンの幼馴染で記者志望の元気娘なミィフィ・ロッテン。メイシェン、ミィフィの2人と揃って3人で交通都市ヨルテムから来た、第17小隊メンバー入りした正義感の強い姉御肌のナルキ・ゲルニ。ニーナが小隊長を務める第17小隊の隊員で軽い性格の狙撃手、武芸者のシャーニッド・エリプトン。元・第10小隊でシャーニッドとの確執はまだあっても武芸者としての矜持などから第17小隊に参加したダルシェナ・シェ・マテルナ。ニーナの幼馴染で武芸者が使う<錬金鋼>のメンテナンスをするハーレイ・サットン。レイフォンの幼馴染、リーリン・マーフェス。リーリンの友人シノーラ・アレイスラ。レイフォンの武芸の師、デルク・サイハーデン。グレンダンの女王アルシェラ・アルモニス。サリンバン教導傭兵団出身でサイハーデン流刀技を使うハイア・サリンバン・ライア。女王を除けばグレンダン最強の12人である天剣授受者の1人、サヴァリス・クォルラフィン・ルッケンス、リンテンス・サーヴォレイド・ハーデンなど。
今巻からはサリンバン教導傭兵団のナンバー2、ハイアの後見人的立ち位置のフェルマウス・フォーアという念威操者が登場します。
・シナリオ
ツェルニはすぐそこにあった。もうすぐ、レイフォンに会える…。リーリンは、心が痛くなるほどにその時を待ち遠しく感じていた。一方、そのツェルニでは、ニーナが突然行方不明になった理由を誰も語ることができなかった。ナルキは、ツェルニの暴走を止めたのはニーナなのではないか、と考えていた。しかし、その疑問を誰にぶつけるでもなく悶々とする。事実、ニーナは「イグナシス」をめぐる戦いに巻き込まれていた。誰も想像できない、なにか大きな力が働いている。そしてツェルニは、都市戦に向けての本格的な演習に突入する—。超大ヒットシリーズ、待望の第七弾。(7&YHPより抜粋。)
・感想
第7巻はツェルニがついに都市戦に突入する話になります。相手は学園都市マイアス。現在リーリンがいる都市で、レイフォンとリーリンの再会まで到達する、という巻でもありますね。
しかし今巻ではリーリンとの再会の前に、サリンバン教導傭兵団団長ことハイアとレイフォンが再び激突する巻でもあります。廃貴族の捜索が隠されたもうひとつの任務だったサリンバン教導傭兵団。彼らがツェルニで廃貴族を発見した事で、グレンダンからリーリンの護衛と兼任で廃貴族捕獲の為、天剣授受者であるサヴァリスがツェルニにやってくることになり、レイフォンとの決着をつける機会が失われるかも知れないためにハイアがやや強引な手段でレイフォンと戦う――ーそんな流れになっています。サイハーデン流対サイハーデン流、同門対決という事で技の激突も多く、サイハーデン流の刀術がどういうものかが見られると共に、レイフォンとハイアの実力差がはっきり示される話でもありましたね。
その中でマイアスとの都市戦も起こる為、都市戦は第17小隊のレイフォン抜き、ということになって再度メンバーのコンビネーション重視。突出した戦力であるレイフォン抜きで何処までやれるか―――そんな形になっていますね。
それとまた別に、サヴァリスの思い出語りの形で過去、グレンダンを襲った凶悪な汚染獣と天剣授受者3人―――サヴァリス本人と、天剣授受者最強と名高いリンテンス、そして天剣を持っていた時代のレイフォンによるかつて無いほど強力な汚染獣・ベヒモトとの戦いが語られます。それは現在の汚染獣との戦い―――レイフォン1人で戦ったり、ニーナたちが協力して汚染獣撃退に当たるのとはまったく別次元の、超人戦闘が見られます。RPG風に言ってみれば、これまでは最高Lvのレイフォンが1人でそれなりの強さの汚染獣と戦っていたり、Lv10程度のニーナたちが数人掛りで弱い幼生体を倒していたのが、この巻では最高Lvのレイフォンに並ぶ強さの天剣授受者たちがパーティを組んで最強クラスの汚染獣と戦っている―――そんな、次元の違う戦いが見られます。
またこの巻では、フェリが自分の感情にやや振り回されている印象を覚える巻でもあります。第7巻現在でまだ収録されていない短編「ア・デイ・フォウ・ユゥ03」で姿を消していたニーナが帰還したことで皆がニーナに聞きたい事があったりする中、自分の身をあまり心配しているそぶりを見せないニーナに苛立ちを見せたり、シャーニッドたちの都市戦を前にしての軽い態度に苦言を呈して場をかき回してしまったりと、
安定しない内心を見せていましたね。それらの理由を考えると―――…天才念威操者とかいっても、青春だなぁ、と感じます。
総じてこの巻は、都市戦の陰に隠れて色々な思惑からレイフォンとハイアの決着の戦いが起きている―――そんな巻でした。その中でフェリが誘拐されたり、サヴァリスが暗躍していたり、リーリンがついにツェルニの大地を踏んでレイフォンと再会したりと、目の離せない展開の連続でしたね。