鋼殻のレギオス4

鋼殻のレギオス4 コンフィデンシャル・コール

著者・雨木シュウスケ先生。挿絵・深遊先生。
・登場人物
主人公は、かつて武芸が盛んな槍殻都市グレンダンで『天剣授受者』と呼ばれる12人の最上級の武芸者の1人にまでなったが、武芸者の誇りを汚す行為で都市を放逐されて学園都市ツェルニで1からの再スタートを志すレイフォン・アルセイフ。ヒロイン1、レイフォンに目をつけて自分の小隊にスカウトした、都市を守りたいという強い意志と信念を持つ普通の武芸者の女生徒、ニーナ・アントーク。ヒロイン2、ニーナの小隊に所属する天才的才能を持つ念威操者だがやる気の無い少女フェリ・ロス。ヒロイン3、入学式で起きた暴動でレイフォンに助けてもらい彼に思慕の念を抱くようになる新入生、引っ込み思案で気が弱いが料理が好きなメイシェン・トリンデン。
サブキャラクターは、フェリの実の兄でレイフォンたちが住む学園都市ツェルニの生徒会長、カリアン・ロス。メイシェンの幼馴染で記者志望の元気娘なミィフィ・ロッテン。メイシェン、ミィフィの2人と揃って3人で交通都市ヨルテムから来た、正義感の強い姉御肌のナルキ・ゲルニ。ニーナが小隊長を務める第17小隊の隊員で軽い性格の狙撃手、武芸者のシャーニッド・エリプトン。ニーナの幼馴染で武芸者が使う<錬金鋼>のメンテナンスをするハーレイ・サットン。レイフォンの幼馴染、リーリン・マーフェス。リーリンの友人シノーラ・アレイスラ。レイフォンの武芸の師、デルク・サイハーデン。グレンダンの女王アルシェラ・アルモニスなど。
今巻から登場はサリンバン教導傭兵団の若き3代目団長、ハイア・サリンバン・ライア。サリンバン教導傭兵団のメンバー、ミュンファ・ルファ。かつてシャーニッドと3人でチームを組んでいた内の1人、ディン・ディー。ディン・ディーと同じくシャーニッドと3人でチームを組んで名を馳せていた中の1人、ダルシェナ・シェ・マテルナ。
・シナリオ
二人は出会った。それはあらかじめ決められていたことかのように—。「ヴォルフシュテイン、この程度か?」少年は囁くように言う。「サリンバン教導傭兵団…」剄の力を加速的に飛躍させる違法酒密輸事件を捜査していたツェルニ都市警察とレイフォンは、偽造学生証を保持した集団に遭遇する。その中に、少年—ハイアがいた。グレンダンが誇る最強傭兵集団の三代目団長であるという彼がなぜここに?さらに違反酒捜査の手はツェルニの生徒にまで及び、それがいくつもの運命のいたずらを引き起こすことになる…。最強学園ファンタジー、第四弾。(7&YHPより抜粋。)
・感想
第4巻は大まかに分けると、ナルキが小隊入りする為の展開がいくつか見られるのと、レイフォンがサリンバン教導傭兵団の3代目団長と名乗る男に絡まれてかつて捨てた武技と武器―――サイハーデン流の刀技と、武器も剣や鋼糸ではなく刀を使え、といわれる過去との対峙の話、廃貴族によるツェルニへの干渉と、シャーニッドが過去の人間関係と決着をつける、などといった話が見られます。
これらの中で特に大きく取り上げられているのは、やはり主人公ゆえかレイフォンがサリンバン教導傭兵団団長・ハイアに絡まれるというのが大きかったですね。ハイア自身もレイフォンと同門に近い立場から、飄々とした普段の姿の中にふとした時、レイフォンに何かしら思うところがある態度が多く、戦闘能力という点などの実力差はあっても精神的にはむしろ優位に立っている、レイフォンのライバル的立ち位置のキャラが出てきたな、という感じでしたね。
次点でナルキの話でしょうか。ナルキが都市警察の操作の関係上、第17小隊のメンバーに仮入隊的な立場で関わるうち、第17小隊の中を知って色々と思うところが増えていく―――その結果、ナルキは正式に小隊入りするのか、それともやはり入らないのか―――ナルキがその時々で色々と考え、思っているのを見ていると、第17小隊では一般人と同程度の立場でしかない新人武芸者がレイフォンたちの中ではどういう立場になるのかが見えて面白いですね。
そしてシャーニッドとディン、ダルシェナの3人の話。大きくはありませんでしたが、ストーリーのメインに関わる話であり、またさり気にシャーニッドに格好良い展開でした。三角関係になりかねない、それぞれの想いの違いにいち早く気がついたシャーニッドが泥をかぶる事で最後まで行かせず堰き止めようとした結果、起きてしまった今回の事件。それは擦れ違いと口に出来ない想いばかりが重なり合ってしまったが為の結果でした。しかしシャーニッドは今回の事件を通じて、第17小隊が今、自分のいる場所だという再確認をして過去の心地好かった時間と決別していてその前後は格好良かったですね。
総じて今回は、学園都市ツェルニでの内輪揉め的な話に、外の存在が多く関わってくる―――と言うのが読み終えての感想でしたね。