鋼殻のレギオス3

鋼殻のレギオス3 センチメンタル・ヴォイス

著者・雨木シュウスケ先生。挿絵・深遊先生。
・登場人物
主人公は、かつて武芸が盛んな都市グレンダンで『天剣授受者』と呼ばれる12人の最上級の武芸者の1人にまでなったが、武芸者の誇りを汚す行為で都市を放逐されて学園都市ツェルニで1からの再スタートを志すレイフォン・アルセイフ。ヒロイン1、レイフォンに目をつけて自分の小隊にスカウトした、都市を守りたいという強い意志と信念を持つ普通の武芸者の女生徒、ニーナ・アントーク。ヒロイン2、ニーナの小隊に所属する天才的才能を持つ念威操者だがやる気の無い少女フェリ・ロス。ヒロイン3、入学式で起きた暴動でレイフォンに助けてもらい彼に思慕の念を抱くようになる新入生、引っ込み思案で気が弱いが料理が好きなメイシェン・トリンデン。
サブキャラクターは、フェリの実の兄でレイフォンたちが住む学園都市ツェルニの生徒会長、カリアン・ロス。メイシェンの幼馴染で記者志望の元気娘なミィフィ・ロッテン。メイシェン、ミィフィの2人と揃って3人で交通都市ヨルテムから来た、正義感の強い姉御肌のナルキ・ゲルニ。ニーナが小隊長を務める第17小隊の隊員で軽い性格の狙撃手、武芸者のシャーニッド・エリプトン。ニーナの幼馴染で武芸者が使う<錬金鋼>のメンテナンスをするハーレイ・サットン。レイフォンの幼馴染、リーリン・マーフェスなど。
さらに今巻で登場は、ハーレイと同じ錬金鋼の開発者のキリク・セロン。レイフォンと同じ槍殻都市グレンダン出身の武芸者で、化錬剄と呼ばれる変幻自在な戦法ができる特殊な剄を使った武技で戦う第5小隊の隊長、ゴルネオ・ルッケンス。第5小隊の副隊長でゴルネオと同じ化錬剄を使い、炎を使った攻撃をするシャンテ・ライテ。リーリンの友人でおっさんくさい言動のシノーラ・アレイスラ。天剣授受者でレイフォンの使う鋼糸の技の師匠にして元祖使い手、リンテンス。天剣授受者で享楽主義者、ゴルネオの兄でもある化錬剄の達人、サヴァリス・ルッケンス。かつて卑怯な手段でレイフォンから天剣授受者の座を奪おうとして返り討ちに遭い、現在は右腕を失って昏睡しているガハルド・バーレン。
・シナリオ
「レイフォンに関係することだよ。君に災難が降りかかろうとしている」汚染された大地の上に点在する“自律型移動都市”のひとつ、槍殻都市グレンダン。そこでレイフォンの帰りを待つリーリンの前に突然銀髪の青年が現れた。彼の言葉に対し、リーリンは身体の震えを抑えることができなかった…。一方、学園都市ツェルニではレイフォンたち十七小隊が偵察隊を命じられ、廃都市に赴くことになる。同道する第五小隊長・ゴルネオはなぜかレイフォンに敵意ある視線を向ける。過去の事件に躓くレイフォン。しかし、それを支える存在となるのは—。最強学園ファンタジー激震の第三弾。(7&YHPより抜粋。)
・感想
第3巻は、これまで学園都市ツェルニの人物のみにスポットを当てて進められていた話が、別の都市―――槍殻都市グレンダンのリーリンを話の肝に据えて進められたり、滅びた都市を舞台にして話が進められたりと、物語の場所があちこちに色々と飛ぶ話でしたね。
園都市ツェルニで前巻までと同様にレイフォンやニーナ、フェリやメイシェンたち3人組、或いはハーレイとその友人であるキリク、第5小隊のゴルネオ、シャンテなどを交えて進められる『学園都市ツェルニでの話』と、リーリンがシノーラや天剣授受者のサリヴァス、リンテンスなどと出会い何かしら話がされる『槍殻都市グレンダでの話』、そしてツェルニが崩壊した都市『廃都』を見つけ、そこをレイフォンたち第17小隊とゴルネオたち第5小隊とで共同で探索する事になる『崩壊した都市・廃都での話』。基本的にはこの3箇所での話です。
ツェルニでの話は、これまでのようにレイフォンたちが日常生活をする中でそれぞれ成長したり互いを知り合ったりして絆を深めていく一方で、レイフォンに思う所のあるゴルネオがその気配を匂わせて衝突したりしています。そういった周囲との理解を深めていく中で、新しい衝突もしたり、というレイフォンたちの青春模様が書かれていますね。
グレンダンでの話はリーリンが主役。シノーラに絡まれたり、女王の命令でサヴァリス、リンテンスという天剣授受者の中でも最強の呼び名が高い者達に護衛されたりとする中、ガハルドがレイフォンへの憎悪からリーリンのいる孤児院を襲撃し、リーリンを中心に何かしらが動き出している姿が見られます。
そして廃都での話。今巻ではここが一番注目ですね。謎の廃都で不思議な存在『廃貴族』に出会ったりレイフォン、フェリ、ゴルネオ、シャンテがエアフィルターの無い空間に放り出されて決死の帰還を果たすなどしています。今巻は汚染獣との戦いらしい戦いは無く、廃都を探索してその中で遭難しどうやって生還するか―――そんな感じの、サバイバル的な展開が最後を飾っていましたね。
総じてこの巻は結構重要な巻かと思います。今後のキーパーソンである『廃貴族』の登場と、これまでレイフォンへの手紙という形での登場がメインだったリーリンが主視点での活躍があったり、槍殻都市グレンダンにいる人物達の姿が如実に描かれたり、レイフォンが過去、天剣授受者の座を追われることになる事件で具体的に何があってどうして都市外追放という形になったのか、など、重要な出来事、重要な語りが多くありましたね。