ほうかご百物語2

[rakuten:book:12955855:detail]

ほうかご百物語

著者・峰守ひろかず先生。挿絵・京極しん先生。”ピュア可愛いイタチさんと僕の、ちょっとトボけた放課後不思議物語。(帯より抜粋)”の、第14回電撃小説大賞で”大賞”を受賞した作品の、続刊です。
・登場人物
主人公な美術部員で、綺麗なものを前にすると衝動的に描きたくて仕方なくなってしまう性質を持つ、妖怪を引き付けやすい体質の白塚真一。ヒロインで怪異が出現しやすくなった学校という場所に引かれて出現したイタチの妖怪変化、”イタチさん”こと伊達クズリ。メインはこの2人で。
後は、美術部所属だが妖怪に並々ならぬ関心があり美術部を自称”怪異研究部”の部室にしようとしている経島御崎がサブキャラクターですね。
さらにサブのサブキャラクター、といった感じで生徒会長の江戸橋、生徒会副会長兼新聞部の女生徒、新井輝、美術部所属の、真一の友人で同級生の穂村、奈良山。イタチさんと同じ怪異で狐の妖怪である英語教諭の稲葉前先生などが登場しますね。それから名前しか出てこないような”怪異”たち、名前を持って真一たちと出会い時には敵もいたりする怪異たち、といったところが登場人物でしょうか。
今巻では新キャラクターとして、真一のクラス委員長で犬神使いとなった滝沢赤赤音が登場します。
・シナリオ
イタチさんが美術部の一員になってからしばらく。学校で起こる不思議な現象の対処は、なぜか美術部の担当になってしまっています。とはいえ、イタチさんと過ごす秋祭やプールでのバカンス(もちろん妖怪付き)など、ワクワクなイベント盛りだくさんの二学期です。そんな中一番の事件といえば、調査に行った階段で僕らを襲った怪しい影…。イタチさんを狙う犬神使いの短髪美少女の登場で、僕らの放課後はまたまた大波乱の予感ですっ!ピュア可愛いイタチさんと僕の、ちょっと不思議な放課後物語。第14回電撃小説“大賞”受賞作、第2弾登場。(7&YHPより抜粋。)
・感想
第14回電撃小説大賞で<大賞>を受賞した、美術部の白塚真一君を主人公に、学園の部活動として妖怪退治とかしたり妖怪と仲良くしたりするゆるゆるとした退魔もの作品。その第2作目ですね。
今巻も前作同様、短編連作的な作品となっています。収録作品はそれぞれ、第1話「委員長の秘密―――或いは、犬神の事」、第2話「女心と秋の空―――或いは、おとろしの事」、第3話「薄れ行く意識の中に―――或いは、鎌鼬の事」、第4話「冬来たりなば―――或いは、河童の事」、第5話「決戦は大晦日―――或いは、猿神の事」、これにおまけ的な後日談というか第5話のその後どうした、的な補話「おわりなきよのめでたさを―――或いは、管狐の事」が収録されて、計6話で構成されていますね。
各話ではそれぞれサブタイトル的についている通り、犬神、鎌鼬、河童、猿神が話の肝になっています。第1話では犬神であるライカと、その主であるクラス委員長の滝沢赤赤音が登場する話。第2話は神社のお祭にイタチさんが行ってみようとするが、そもそも神域である神社に妖怪であるイタチさんが入れるか―――?という感じの話になっています。この話だけ、サブタイトルのおとろしはあまり関係無いようにも見えます。第3話は基本に立ち返るように、美術部に来たプールに出没する妖怪を退治してくれという話で、硬い殻を持つ妖怪を相手にイタチさんが使う鎌鼬が、真一の協力を得て強化できるようになるパワーアップの話。第4話は妖怪と一口に言っても色々なものがいて、名前がよく知られている河童にも様々なバリエーションがあるのを見られるちょっと良い話、でしたね。第5話は今巻のトリを務めるという事で、前巻のラスト同様に少し大きな妖怪退治の話です。神社の娘であることから、性質の悪い妖怪の生贄として目をつけられてしまった生徒会雑務を取り仕切る新聞部の新井輝。彼女を守る為、美術部が顧問も引っ張り出しての総動員体制で猿神退治に乗り出します。ちなみにこの猿神、わかる人にはわかるネタ、ということになってしまいますが漫画「うしおととら(作者:藤田和日郎先生)」にも出ていた猿神と同一のネタになっており、ちょっとニヤニヤしました。
総じて今巻は第2巻という事ですが、所謂2作目のジンクス―――第1作目より第2作目の方が面白みの無い作品であることが多い―――というものを感じさせない、起承転結のハッキリしていてとてもよく出来た作品だったと思います。主人公である白塚真一やヒロインである伊達クズリ―――イタチさん―――や、前巻から引き続いて登場のサブキャラクターたちの出番は減ることなく、しかしながら新キャラクターも登場して梃入れもされつつ、しかしストーリー展開は基本に忠実。シリアスに盛り上がるところは盛り上げ、コメディで笑わせる所はストレートに笑わせる、と、スッキリと読んでいける作品でしたね。