いちばんうしろの大魔王2

いちばんうしろの大魔王ACT2 (HJ文庫)

いちばんうしろの大魔王ACT2 (HJ文庫)

いちばんうしろの大魔王 ACT2

著者・水城正太郎先生。挿絵・伊藤宗一先生。水城先生は他著作として富士見ミステリー文庫レーベルで「東京タブロイド」シリーズやHJ文庫レーベルで「せんすいかん」シリーズなどを出されていますね。
・登場人物
主人公で「将来の職業…魔王」と宣告された事をきっかけに受難の学生生活を送る事になる紗伊阿九斗。落ちこぼれの天然少女で阿九斗に出会い彼に懐く曽我けーな。阿九斗と初めは友人になるが、阿九斗が受けた宣告に裏切られたと思い込む直情型の委員長気質人間、服部絢子。将来の職業・魔王を宣告された阿九斗を監視するためにやってくる人造人間<リラダン>の、ころね。女子寮の寮長をしている一見優しげだが実は腹黒い策謀家の江藤不二子。言動が下っ端で実際にも下っ端のヒロシこと三輪寛。
この巻では、生徒会長のリリィ白石。その配下の三役。謎の男に仕える少女で阿九斗に近づいてくる照屋栄子。こういった面子が出張ってきますね。
・シナリオ
魔法の授業で力を制御できず、またもや絢子の服を吹き飛ばしてしまった阿九斗。美津子先生の勧めに従い精神を鍛えなおすための修行場に赴いた阿九斗だが、そこで偶然に宝の地図を発見する。生徒会長と相談して地図のことは秘密にしようと決めたが、いつの間にか地図が流出。宝を探し出そうとする生徒たちが次々と現れ、学園は一大騒動に…。(7&YHPより抜粋。)
・感想
今巻では主人公である阿九斗が、また新たな誤解を自分で巻き起こしその未来として予言された『魔王』に自分からまた近づいてしまうその1つの顛末が書かれていますね。
偶然に発見された宝の地図を巡り、阿九斗が過去の陰謀や不二子の兄の死に関する疑惑を追いかけていく形でさらにそれを妨害する謎の刺客を退けて洞窟を進み、最後には竜を相手に戦うということになります。
その中での不二子の兄の死に関する疑惑―――逃げ出した弱卒、軟弱者と呼ばれており、死霊術で蘇った頭部だけの状態でもしかし逃げた事に対する記憶が不明瞭で否定する記憶の無かった彼に対する、その「逃げ出した」という部分に関しての謎が、阿九斗が宝の地図を追う内にその裏に隠されていた真実が明らかになっていきます。それにより不二子の内面にも変化が起き、これまでの話で敵か味方か、的な存在であった不二子の立場が明確になると言う話でもありましたね。
また謎の刺客も、何となく正体は掴めながらもその実ははっきりさせないという、目に見える黒幕がいながらもそれとニアミスするような距離感で付き合う物語展開は最終的には予定調和を感じますが、その思惑などを思うと今後の活躍にも期待ですね。
そんな謎解きダンジョン・アタック的な話でしたが、最後はやはり阿九斗の運命なのか、誤解を受けてさらに魔王としての名声が高まりそうな状況を作ってしまうという、最後にはお決まりのオチを持ってきていて総じて前巻と同じような感じの終わりかな、とも思いますが安心して読める主人公が誤解されて話が膨らんでいく系の物語として楽しめましたね。