神曲奏界ポリフォニカ まぁぶる2

神曲奏界ポリフォニカ まぁぶる2

神曲奏界ポリフォニカ』シリーズの、シェアードワールド全部から1篇ずつだけ短編を挿入したお祭文庫…とでも言いますか。全シリーズを読んでいる人が一番楽しめる物になっている作品、その第2段作品ですね。
・登場人物
赤ポリからはコーティカルテ、フォロン、ペルセルテ、プリネシカ、レンバルト、ユフィンリー、ヤーディオといったツゲ神曲楽士派遣事務所の面々。そして覗き魔と間違われる精霊ダードルスト。
黒ポリからはマナガとマティアの刑事コンビ。
金ポリからはレオンと、ロレッタ、マルシアチェルシー、シルヴィナ、メイリン、シャルミタ、ナバリたちレオン・ザ・レザレクターで起きた事件の関係者達。そして精霊のセヴニエーラ。
白ポリからはスノウ、ブランカ、プリムローズ、ジョッシュ、デイジー、ピース、サラサ、リシュリーたち学院関係者や身内たち。そして精霊のイニシアです。
青ポリは一応ほぼ全ての登場人物が出ますが、短編は無くカラーページの4コマとゲスト出演だけですのであまり出番はありませんね。
・シナリオ
「クリムゾン」「ブラック」「ホワイト」そして新シリーズ「レオン」が1冊で堪能できる短編集。「ぷるう」シリーズは兎塚エイジ氏による四コママンガで楽しめるぞ。(7&YHPより抜粋。)
・感想
前作共通のお題として、1つの場所が舞台となっています。全ての作品が、共通するある場所でそれぞれの話を展開していく…そういう形式ですね。
収録作は全シリーズ共通して最過去の話である白ポリの話を筆頭に過去の話をして、それからたまたま旅行先だった黒、偶然同じ場所に湯治に来た金、黒のキャラクターに話を聞いて会社の慰安旅行先に選んだ赤、と時間軸に沿う形で進められていきます。つまり話の流れは白→黒→金→赤、という順です。青は短編は無く巻頭のカラーページに4コマ漫画が載っているのと、赤で少しだけ出るので参加作品というよりゲスト出演、といった印象ですね。
各話はそれぞれ白が「ジョッシュの家がコランダムに持つ別荘に契約精霊を求めて行ったスノウたち一行が、その地に住む精霊達と交流する話」といった形で、タタラ家が持つ単なる別荘とそこに住む人たちと、人里から離れて暮らしていた精霊たちが作った村での、人と精霊の新しい交流が始まるきっかけになった話「リーズンズ・ホワイト」。
次いで黒の話は白の話からずっと未来の話。ジョッシュの家の別荘や精霊達が住んでいた村の周辺が湧き出た温泉によって温泉街となり、そこに骨休めの休暇旅行に来たマナガとマティアが、温泉で羽を伸ばしている時にちょっとした事件に巻き込まれる「みすていく・ぶらっく」。
金の話は黒の話の少し後、やはり温泉を目当てにやってきたレオンと『レオン・ザ・レザレクター』で関わった友人一行。が、温泉の地でレオンが旧友のセヴニエーラのことをマナガ、マティアが来ていた事で存在を知り、セヴニエーラからちょっかいを出されてまたちょっとしたイザコザが起きる「れおん・ざ・りたーなー」。
最後が、マナガやマティアに話を聞いて温泉に入りたくなったユフィンリーの一存で社員の慰安旅行の行き先に決まった赤の面子によるどんちゃん騒ぎと、温泉街の経営難と温泉枯渇という危機を救ってしまう話「どらんく・くりむぞん」。
どれも温泉をモチーフにした短編で、しかしそれぞれの味が出ていて面白い作品が多かったですね。
白では人里はなれた場所に住む精霊たちとの交流という、過去の時代である白作品らしい人と精霊の壁が見え、それらを通じてスノウが見失いかけていた精霊と神曲との関係に気がつくというもの。その手探り感は白ポリ独特のポリフォニカ・ワールドです。
黒では旅館の中で物が無くなるなどが起き、大事な単身楽団「氷の女王」を見つけるべく推理し捜査をする、やはり黒らしい展開が短いながらもしっかり書かれ、マナガとマティアの微妙にらぶらぶな展開もあり、さらにちゃんとしたオチまでついていました。その起承転結がきっちりしていて短編ながら出落ちに終わったりしない、短編と思わせない面白さまでありましたね。
金は、レオンと『レオン・ザ・レザレクター』で登場した女の子たちの事件後の後日談、という感じでした。それと一緒にセヴニエーラという新キャラクターが登場したりして、今後への伏線も見えました。
赤では社員の慰安旅行という側面での話という事で、ツゲ神曲楽士派遣事務所の面々が旅行先で思う様にはっちゃける姿、それと覗き魔を捉える為に行動した結果、温泉街の人手不足や経営難まで救ってしまうというコーティカルテらしい豪快な話の展開が見られます。
総じてこの作品はそれぞれのポリフォニカ・ワールドのキャラクターたちが『シラホネ温泉街』でそれぞれの形で温泉に関わる、といった作品になっています。そのそれぞれに特色があり、まさにお祭り作品で各話短いながらも、個々に自分たちの特色を出していて、短さはむしろ次々と他の作品を楽しめて良かったですね。
それぞれのポリフォニカ・ワールドの話を知っている人は1冊で全てのポリフォニカ・ワールドを楽しめ、知っているポリフォニカと知らないポリフォニカがある人は知らないポリフォニカの雰囲気を味わえ、ポリフォニカ・ワールドを知らない人は各ポリフォニカがどんな話なのかの印象を味わえる作品。そういった、一冊で何粒も美味しい、的な作品だと思いましたね。