いぬかみっ!

いぬかみっ! (電撃文庫)

いぬかみっ! (電撃文庫)

いぬかみっ!

著者・有沢まみず先生。挿絵・若月神無先生。電撃hp紙上にて連載されて始まった作品で、スラップスティック・コメディと銘を打たれていますが個人的にはオゲレツ時々ハートフル・コメディ、と言う方が的確じゃないかなぁ、とか思ったりします。有沢先生は他作品として電撃文庫レーベルよりデビュー作「インフィニティ・ゼロ」シリーズ、2008年3月現在の最新作としては「ラッキーチャンス!」シリーズなどを書かれていますね。
・登場人物
主人公は『犬神使い』で霊能者…だったが、犬神使いとなる為の犬神と契約出来ず家を勘当されて今は1人で生活している、川平啓太。ヒロインは大のやきもち焼きで気まぐれで、「しゅくち」「じゃえん」といった特殊能力を使える、ようこ。
サブキャストとしては霊的な事件を請け負った際に啓太の所に手伝いを依頼に来たりする、内閣特別官房室直属特命霊的捜査官の、仮名史郎。啓太の祖母で川平家の当主である婆さん。宗家の婆さんの犬神である、はけ。それから渡り猫で理由あって仏像を収集している留吉。
・シナリオ
由緒正しき犬神使いの一族・川平家、その末裔で能力不足により勘当された高校生の川平啓太のもとに、一人(一匹)の犬神が現れた。“ようこ”と名乗る犬神は楚々として従順、しかも容姿は抜群。さっそく啓太は主従の契りを結び、ようことの共同生活を始める。だが、実はこの彼女、かつて誰もがコントロール出来なかった犬神の中の大問題児だったのだ!お金も女の子も大好きな煩悩の塊、犬神使い・啓太と、破壊好きで嫉妬深い犬神・ようこが繰り広げるスラップスティックコメディ登場。第8回電撃ゲーム小説大賞銀賞受賞者、有沢まみずが贈る待望の新作。(7&YHPより抜粋。)
・感想
この作品はスラップスティック・コメディと銘打っているだけあってお気楽に軽いノリで、登場人物たちの掛け合いを中心にして進んでいく短編連作集の様な様相の作品です。収録は全5編。啓太とようこの出会いの話と、霊能者としての啓太に女の生霊を祓ってくれという依頼がきて、その関係でようこがやきもちを焼いて欲しくて少し暴走する話、それと留吉が登場し仏像を巡って温泉地で騒ぐ話、仮名の依頼で魔道具でストリーキングを繰り返す男をとっ掴まえようとする話。そして番外編のようこの視点で書かれる啓太とようこの一日、といった以上5編が収録されていましたね。
この巻では犬神使いは、基本的に式神を従えた霊能者、程度の立場で書かれています。あまり大きな事件が起きたりするわけでも、因縁のある相手と戦ったりするわけでも、まぁ啓太が無闇矢鱈と裸になったりはしますが変態を相手に極まってしまったような興亡を繰り広げたりするわけでもありません。本当に基本中の基本と言える、啓太とようこの出会いとその普段の姿、にスポットを当てて書いているといった様相です。啓太がようこと暮らし始めてすぐの頃のようこのちょっとした仕草に戸惑ったりする様子や、ようこが啓太を相手にまだどきまぎしている初々しい2人の姿が見られます。
つまり啓太とようこの2人だけで書かれている、数多くの登場人物が登場するようになる「いぬかみっ!」シリーズとしてはそういった意味では珍しい作品ですね。ですがその分、主人公達が変態を相手に立ち回ることで有名でもあるこのシリーズの作品としては、その変態性は少し物足りない感じを覚えてしまうかもしれませんね。