繰り世界のエトランジェ1

繰り世界のエトランジェ〈第1幕〉糸仕掛けのプロット (角川スニーカー文庫)

繰り世界のエトランジェ〈第1幕〉糸仕掛けのプロット (角川スニーカー文庫)

繰り世界のエトランジェ 第1幕◆糸仕掛けのプロット

著者・赤月黎先生。挿絵・甘福あまね先生。第11回スニーカー大賞”奨励賞”を受賞した作品だそうです。挿絵の甘福あまね先生はファミ通文庫の「学校の階段」シリーズの挿絵なども描かれていますね。
・登場人物
主人公の、異能と呼ばれる超能力で人から伸びて見える糸を掴む事で相手を自在に操れる”糸遣い”の睦月透真。透真に仕える者としてやってくる黒メイドの闇宮冥。異形の存在で全身に刀を仕込んでいる『作品集No.14<刀姫>』の通称カタナ。透真の母で冒頭で失踪する息子同様の”糸遣い”の睦月操。透真のクラスメートで一般人の葦原淳子。敵側として蟲を自在に操れる”蟲使い”の異能者の玖珂。色々と裏で動く透真や操同様の”糸遣い”である統堂真司。
・シナリオ
「14号」と名乗るボロボロの制服を着た美少女、漆黒のメイド、突然の母の失踪、異常にハイテンションな同級生、妖しげな蟲の大群…万物を自在に操る能力“操糸術”を持つ高校生・睦月透真の周囲に集まる美しくも奇妙な少女たちと数々の怪異。異変とともに現れた謎の男・山田太郎に導かれ、透真は術を使い謎めいた真相に迫ろうとするが…!?運命の糸を操る少年と操られる少女たちが繰り広げる、陰謀だらけのスリル&ラブエンタ。(7&YHPより抜粋。)
・感想
所謂、異能力バトルもの、という感じです。どんな相手であれ自在に操る”操糸術”を使う主人公の透真。透真に仕える者で、身体能力に優れていて”自分の心を殺す”ことができる黒メイドの冥。全身に仕込んだ刀を自在に出して扱える改造人間のカタナ。味方陣営はこんな感じで、敵側にあらゆる虫を自在に操る”蟲使い”の玖珂。透真同様の”操糸術”を使える統堂真司と冥同様の身体能力を持つ部下の闇宮暗。これらの異能力者の面々が、時に協力し時に正体を隠し時に対立しながら話が進んでいっていましたね。
話は透真の母の失踪から。母がしていた裏の仕事を知った息子で主人公の透真が、母の後を追うようにして母の失踪した事件を追っていくうちに色々と陰謀的なものやらに巻き込まれていく、といった形です。色々な人間の思惑が混じっていて、状況や敵が二転三転。連続した状況の変化に大変慌しい作品、といった印象を覚えました。
しかしなんともはや。正直な感想を書くと、中学生が考えたような展開だったな、的な部分がチラホラ。全体を通して見るとそう感じるといったところで、随所随所での展開や話の裏側部分、肝になるところはよくできているとも感じますが。通して見ていると逆転して逆転されてまた逆転して―――みたいに、その場その場で都合良く話が進んでいるように感じるのもまたあり、と。この作品はシリーズものということで、この第1巻のラストの時点では話が終わっておらず、ラストも驚きの逆転的結末が待っていたのでその分でも余計に都合良さを感じているのかもしれません。また主人公の言動やその他のキャラクターの発言などにも、歳相応の…と言ってしまえばその年頃なのだから相応なのだ、ということなのでしょうが、妙にまた「青臭く」感じるセリフが見られていたかと思いました。
この作品は、そういった文章上で表記される甘さや青臭さを持つ主人公達が苦悩しながらもがき、敵に立ち向かっていく姿を書いた作品と私は感じましたね。