私立!三十三間堂学院6

私立!三十三間堂学院〈6〉 (電撃文庫)

私立!三十三間堂学院〈6〉 (電撃文庫)

私立!三十三間堂学院

天国に涙はいらない」などの著作を持つ第7回電撃ゲーム小説大賞「金賞」受賞作家の佐藤ケイ先生によるシリーズの第6巻。今巻は海が舞台の話ですね。
・登場人物
お嬢様で女子生徒ばかりの三十三間堂学院の共学化に先駆け、1人だけ受け入れる事になった男子生徒。その男子生徒こと「後白河法行」を主人公に、様々な女生徒たちとの交流を書かれるシリーズ。それがこの「私立!三十三間堂学院」です。
この巻ではメインとして水泳部期待の星、兼平久美がスポットを当てられています。他にはこれまで出ている登場人物たち―――生徒会長・五部浄里。法行の親戚で居候先の家に住む千住花音。生徒会四天王の1人、増永南などが登場しますね。
・シナリオ
生徒会の増永南です。夏と言えば私、海と言えば私、水着の似合う女と言えば私!ってわけでウチの学校も臨海学校の季節なんだけど、北校舎で水泳部の兼平久美が裏で法行君との結婚を画策してたらしくって、久美の親父さんが「臨海学校最終日の遠泳大会で法行君と久美が二人で優勝と準優勝独占したら結婚させる」とか言い出して。久美の親父さんはこの辺の海一帯仕切ってる大親分で臨海学校でも世話になってるから会長も逆らえないし、ほっといたら実力的に久美と法行君の二人がトップなのは確実だし、さぁどうする?やっぱここは私がイルカにでも乗って横から優勝かっさらうしかないかしら。人気シリーズ第6弾。(7&YHPより抜粋。)
・感想
今巻は臨海学校をした出来事を書いていますね。兼平久美の父親の勘違いから始まる法行争奪の遠泳大会や、海に出現する脅威―――鮫を相手にしたあれこれ。それらが書かれています。この巻でスポットを当てられているのは水泳部ホープ、兼平久美。序盤は臨海学校に来た三十三間堂の面々がそれぞれに過ごす姿を見られますが、彼女の父親が久美と法行との関係を誤解した事から物語は展開されていきますね。一度漁船に乗ってみたかった法行。それを「久美と結婚したい。その為にも将来は貴方の船で船乗りになる。」と意図を間違えて受け取り、「船に乗りたいなら遠泳大会で優勝と準優勝を取ってみせろ」と提示した久美の父。その2人の齟齬から展開されるのがこの巻での話です。
海辺で育った漁師の娘、兼平久美。身体を使う行為―――フィジカルな面では三十三間堂学院は元・女子高ということもあって、地力の違いなどから全力で競うという行為に対して欲求不満気味だった法行だったが、泳ぎに関して超一級で法行とも互角以上の競争が出来る久美と泳ぎを競う間に段々と仲良くなっていく。そんな2人の姿は健康的で爽やかな友情を育む学生同士という様相で、男女の性差の関係無く仲が良いな、と見られました。
真剣ながらどこか明るく爽やかに優勝準優勝を目指す法行と久美の2人に対して、法行と久美が2人で遠泳大会で1位2位を取ったら結婚―――そんな結婚話を知った生徒会の五部浄里や柴又かずち、千住花音を初めとしたクラスメートたちは法行と久美を遠泳大会で優勝準優勝させない為に、各自虎視眈々と作戦を練って一大阻止作戦を展開する―――。そんな訳で今巻は久美の父との間に意識の齟齬があることを何もわかっていない法行と久美が、周りに妨害されたりしながらも遠泳大会での優勝準優勝を目指す姿が半ば滑稽でもありながら真剣で目を引かれもしていましたね。
そしてラストでの鮫による遠泳大会への被害。鮫に対して立ち向かっていく法行と久美他、生徒会のメンバーやクラスメートたち。大人の救助を待てない九死に一生の状況で、久美の父親も舌を巻く連携で鮫を仕留める展開は手に汗を握る緊張感がありました。
総じて今巻は海を舞台に、新スポットキャラクター・兼平久美と後白河法行との友情と恋心を絡めて進められる爽やかな臨海学校での危険と冒険の絡んでくるアクシデントの話、といった感じでしょうか。危険に際して命を張り、その中で深まる友情と人知れぬ愛情。別な意味での一夏のアバンチュールが語られている、といった様相ですねー。