ラッキーチャンス!2

ラッキーチャンス!〈2〉 (電撃文庫)

ラッキーチャンス!〈2〉 (電撃文庫)

ラッキーチャンス!

著者・有沢まみず先生。挿絵・QP:flapper先生による学園ハッピーラブコメディ、だそうです。著者先生の他刊行作品は「インフィニティ・ゼロ」シリーズや「いぬかみっ!」シリーズがありますね。どちらも電撃文庫刊です。「いぬかみっ!」がいちばん有名でしょう。QP:flapper先生は2人組みの挿絵家のコンビ名で、MF文庫Jの「えむえむっ!」などの挿絵が最近のお仕事でしょうか。
・登場人物
霊能力を持ち日本最強として名を馳せる”ごえん使い”と呼ばれるが極貧で不運すぎる運命の主人公・外神雅人。そんな雅人を幸せにするべく雅人に憑きにくる元・疫病神で現・福の神のキチ。雅人の同級生でお金持ちお嬢様な雅人の片思いの相手の二ノ宮良子。雅人の後見人で雅人が通う学校の校長をしているオカマ校長のサモン=時二郎。この辺りが名前有りで特にメインっぽいキャラでしょうかね。他に雅人のクラスメイトなどが出てきます。
今巻ではさらに新キャラとして、超絶シスコンな二ノ宮良子の兄、二ノ宮速彦と最強に拘る”嘘”使いの特命霊的捜査官、天草沙代が登場します。
・シナリオ
かわいい福の神のキチと一緒に暮らすことになった外神雅人。でも疫病神から転職したてのキチは、雅人を幸せにしようとしても失敗ばかり。せっかく食べ物を差し入れに来てくれた憧れの二之宮さんにも思いっきり誤解され…。そんな不幸続きのある日、雅人はついに二之宮さんとデートをする約束を!しかし、喜びまくる雅人の前に現れたのは、財閥N・Tグループの継承権を持つ二之宮さんのお兄さん。かっこいいけど妹のことになると完全に人格が…。福の神キチと、“ごえん”使い雅人のハッピー学園ラブコメディ、早くも第二弾。強気で奥手な特命霊的捜査官・天草沙代も登場。(7&YHPより抜粋。)
・感想
今作は、キチと暮らすようになってからのことを短編連作的流れで綴られていく、外神雅人の日々に起こった大きな事から小さな事も事を書いている、といった様相ですね。
キチのことを周囲の人間が認識して(福の神である、としてではなく雅人の妹、という立場として)受け入れ、人間社会の一員としてもその立場を確立するまでの、ドタバタした出来事とその中でキチが感じる初めての感情についてが書かれた「未体験の感情領域」。
二ノ宮良子の兄の二ノ宮速彦が新登場して、良子と仲の良くデートをするという雅人に対して、良子を気にするあまり人間離れした身体能力で妨害行為を仕掛ける。そんな速彦の過剰なシスコン振りや漫画的小説だから許される過剰な表現が面白かった「そこがあんたの大迷惑」。
キチの安全性を確かめる為に政府から送られてきた”嘘使い”の特命霊的捜査官・天草沙代。現在”日本最強”と呼ばれるごえん使いの雅人を目の仇にした彼女によって巻き起こる、霊能者としての戦いなどがメインに書かれる「嘘つき少女が街にやってくる!」。
以上の3話+プロローグとエピローグを加えた5話が、今作で収録されている話ですね。
全体的な印象としてはやはりまだ第2巻ということで、設定の説明的な部分や作中の人間関係の説明などが散見されていましたかね。しかし発展的な話―――雅人と良子の関係の進展なども見られましたし、キチの感情の成長、サモン=時次郎が心中で何かしら考えているらしい事が見受けられる一面があったり、キチにも今後の話の肝になりそうな何か裏がありそうだったりと、色々と話を先に進める為の展開や伏線も見られていました。
新キャラの速彦や沙代の登場も、ギャグ担当の超シスコン兄としてその立場を確立しつつも、妹を案じるシリアスな面もありな速彦。シリアス担当の特命霊的捜査官として今後もキチと雅人に関係してきそうな立場ながら、キチの無意識なセクハラ的発言に素直に反応してしまうなどのギャグもこなせる沙代。と、ギャグ、シリアス両面で人的充実となっていましたね。
総じると今巻は、キチを中心としつつも二ノ宮良子に関しても書かれつつ、雅人の見せ所もありと、メインの登場人物全体に見せ場のある巻、といった感じでしたね。キチの無邪気な可愛さ、良子の可憐さと、雅人の格好悪さと普段がそうだから際立つ決め所での格好良さなど、メインキャラは内面の魅力が書かれている巻でしたね。