雅先生の地球侵略日誌

雅先生の地球侵略日誌 (ファミ通文庫)

雅先生の地球侵略日誌 (ファミ通文庫)

雅先生の地球侵略日誌

著者・直月秋政先生。挿絵・昼間行燈先生。第8回えんため大賞東放学園特別賞”受賞作品です。って2006年の第8回えんため大賞での東放学園特別賞なのに、何故に今、2008年に出版…?
・登場人物
主人公で語り部、地球での名前として源雅<みなもと みやび>を名乗り、現地での潜入調査役として英語教師の顔を持つ地球遠征軍総司令官首席補佐官兼幕僚総監の、ワルザード・スルー。クァークゴ帝国における第13番目の皇子で地球遠征軍の総司令官で最高責任者、でもニートでヘタレなサーティン・チョー・エライビト・フォン・クァークゴ。凄腕の指揮能力を持つが宗教かぶれなヤークザー・ニーンギョー・フォン・ゴークドゥ提督。財政関係で辣腕を振るったアクドク・フォン・ジョーニン。帝国が科学技術部門で誇る超天才で怪人の産みの親だったりするが、日本文化オタクのマットーサ・イエン・フォン・ティスト博士。
そしてワルザードたちの敵となる、スーパー戦隊側とも言える戦隊ヒーロー『地球戦隊アースファイブ』のアースレッド・赤城光。アースブルー・青野利明。アースグリーン・緑川弘道。アースイエロー・来須黄乃。アースピンク・大窪桃子。彼らの指導者の1人、地球防衛組織「EDC」副指令兼高校養護教諭の一橋渚。雅、渚の同僚の甘井密。など、他にも怪人だの司令官だのが色々と。
・シナリオ
突如、圧倒的な戦力で地球に侵攻してきた銀河の覇者クァークゴ帝国。しかし、皇帝の13番目の皇子、総司令官サーティンは、チマチマと戦力を小出しにして、正義のヒーロー5人組に連戦連敗!不甲斐ない味方に、美人だけど融通のきかない首席補佐官ワルザードは、頭の痛い日々を過ごしていた。そして、教師「源雅」として日本の高校に潜入した彼女の前には…。打倒ヒーロー!「戦隊ヒーロー」への愛に溢れた抱腹絶倒の第8回えんため大賞東放学園特別賞。(7&YHPより抜粋。)
・感想
この作品は一言で言うなら「スーパー戦隊シリーズで負け続けている悪の女幹部の愚痴が延々と綴られている作品」でしょうか。と言っても、陰々鬱々とした聞いてて嫌になる愚痴が書かれている、というわけではなくて、明るい愚痴と言うか、やや暴力的な表現を交えながらも彼女がいかに荒っぽくも懸命に事態を打開しようと苦労しているかが垣間見える、彼女の奮闘記の様な形ですね。悪の女幹部―――ワルザードの周囲の人材に対する、彼女によるツッコミ集―――そんな様相です。終始、彼女の現状に対する不満と現状を打破したいという気持ちが爆発するような勢いで書かれている、といった感じですね。日曜朝にやっているような特撮が好きなら、悪側から見た正義のヒーローとの戦いの裏事情を垣間見れる、といった形になりますのでかなり楽しめるのではないでしょうか。
話の展開としてはお約束的に進んでしまう敵―――戦隊ヒーロー・アースファイブ―――との戦いや、周りの状況に対してワルザードこと雅先生が不平不満を口にしながらそれでも日々を生きていく、そんな彼女の人生の1シーンを切り取った―――そんな形に出来上がっています。
スーパー戦隊シリーズであえて無視されているが、当事者となったら考えずにはいられない様々な矛盾点。それらに悪の女幹部として正面から立ち向かい、ツッコミを入れまくりながらそれでも変わらない事態に懸命に対応し、状況を打開しようと苦労するワルザード/雅先生の奮闘振りが見られていましたね。
また、特撮ファンにはにやりとする表現やシーン、発言や引用が多い作品でもありました。最近の電車に乗って戦うあのヒーローの作品からの流用的発言から、昔懐かしい戦隊ものからの引用など、懐かしいものから新しいものまで多く引っ張ってこられていました。それ以外にもアニメなどからも引用が合ったりして、色々と大丈夫かと別な意味で心配になったりもする。そんな作品でした(苦笑