デビルズ・ダイス 1の目

デビルズ・ダイス―1の目 神はサイコロを振らない (角川スニーカー文庫)

デビルズ・ダイス―1の目 神はサイコロを振らない (角川スニーカー文庫)

デビルズ・ダイス 1の目 神はサイコロを振らない

著者・いとうのぶき先生。挿絵・佐嶋真実先生。第11回スニーカー大賞で”奨励賞”を『グランホッパーを倒せ!』で受賞したいとうのぶき先生による新作品ですね。挿絵の佐嶋真実先生はゲーム『俺の屍を越えてゆけ』のキャラクターデザインをされており、ファミ通文庫レーベル『鬼切り夜鳥子』シリーズの挿絵などを描かれていますね。
・登場人物
主人公の、眉目秀麗で成績優秀な高校生だが家庭的には複雑でDVの絶えない家に住む白川才。立てた髪や学生服の下に赤いシャツを着ているなど優等生の才に対して遊び人風で軽い印象だが、才の親友である山寺法地。才の実の姉であり誰からも好かれる気のつく美人で法地も心惹かれる女性の白川彩。白川家に入り浸る珠菜の恋人で、才たちにDVを働く白川家の不和の原因の一端の岡本哲哉。才と彩の義母で、才と彩の本当の父親の和歳の再婚相手である白川珠菜。才、法地のクラスメートで才のことを憎からず想っている加茂香奈。ざっとこんなところでしょうか。
・シナリオ
父の遺品から奇妙なサイコロを手に入れた白河才。それはすべての数字を見通す「悪魔のサイコロ」だった。ネットバンクの暗証番号やロット‐6、未来の数字を見通すデビルズ・ダイスの力によって巨額の富を手に入れた才にダイスの存在を狙う巨大組織「財団」が襲いかかる。飛び交う銃弾をかいくぐり、恐るべき罠を仕掛けていく才―。数字の並びで情報を読み解き、先の先を読んで裏の裏をかく手に汗握る頭脳戦。悪魔の賽は投げられた。(7&YHPより抜粋。)
・感想
この作品は頭脳に焦点を置いた知的ゲームの様な印象を受ける作品でしたね。週刊少年ジャンプに連載されていた『デスノート』がイメージに近いでしょうか。っていうか、あれをモチーフにしているのか?と思うくらい雰囲気が似ていました。
挿絵の佐嶋真実先生の絵柄も作風に実にマッチしていました。変に萌えなどを売りにしている絵ではなく、写実的というか、絵画の様な絵でありながらどこかコミック的な絵でもあり。リアルさを前面に押し出した漫画的絵、とでも言えばいいのでしょうか。その作風がこの『デビルズ・ダイス』には合っていると私は感じましたね。
あらゆる数字を正確に当て、使いようによっては成否、文字まで完全に当てる魔性のサイコロ『デビルズ・ダイス』。これを手に入れた高校生、白川才の悪魔の如き発想による彼の様々な行動を書いたのがこの作品、ということになるでしょうか。
始まりはデビルズ・ダイスを偶然手にした事から始まりますが、そこから先の才の発想や行動は、文字通り『悪魔に魅入られた』かのような独善と残虐さで語られていっていましたね。一家の不和の原因となっている岡本と義母を排除する計画を冷静沈着に立てたり、スリルを求める為だけにトラックとの衝突時刻を予測したり、果てはデビルズ・ダイスの秘密を知っていて狙ってきた『財団』なる敵を相手に確実な反撃方法を予測して対処したりと、デビルズ・ダイスを使った未来予知で確実かつ残忍に、それでいて人間性を感じられないほど冷静かつ冷徹に対応策を講じていく才は不気味でした。不気味な主人公、というのも凄いもんです。
さらに展開も二転三転し、飽きの来ない―――次に予測がつかない展開の連続でした。実は序盤の何気ない一文が実は伏線でそれが後半で生きてきたり、正に悪魔の様な才の行為による衝撃の展開が待っていたりと、最初から最後までクライマックスでありながら常にプロローグ、のような不可思議ながら引き込まれる面白みを感じました。