サージャント・グリズリー

サージャント・グリズリー (ファミ通文庫)

サージャント・グリズリー (ファミ通文庫)

サージャント・グリズリー

著者・彩峰優先生。挿絵・bomi先生。第9回えんため大賞”特別賞”受賞作品です。挿絵のbomi先生はMF文庫Jの「アストロノト!」シリーズの挿絵など描かれていますね。
・登場人物
主人公で小さなアパートで生活しているごく普通のいじめられっ子高校生の玖流玖準。ヒロイン?で準のクラスに転校してくるハイイログマぬいぐるみの顔とマッチョな身体に軍服を着込んだグリズリー軍曹。剣を持つと性格が豹変して一級の剣術使いになる赤井空。空の双子の妹で空同等の剣の使い手だが性格が正反対な青井美月。軍曹の妹のグリズリー少佐。軍曹の母のグリズリー大佐。軍曹と過去に因縁的な関係を持つ美学に拘るテロリストのサーモン閣下。サーモン閣下の部下で雑事に長けたブルドッグ警部。そして色々な事の黒幕のアビシニアン・王女。その配下でオカマ口調の毒物使いテングダケプランクトン。
・シナリオ
いじめられっ子、玖流玖準のクラスにやってきた転校生は、その名も“グリズリー軍曹”。頭はハイイログマのぬいぐるみ、マッチョな身体に軍服…って、どう見ても男!?なのに美少女だと騒ぐ男子たち。軍曹に気に入られ、無理矢理「友達」にさせられた準は、軍曹の家族(全員頭はハイイログマのぬいぐるみ)や、切れると怖い双子の美少女剣士との出会いの中で、混沌と非日常に振り回されていく―。シュールでカオスな第9回えんため大賞特別賞受賞作。(裏表紙及び7&YHPより抜粋。)
・感想
この作品は…とても、シュールです………!
裏表紙に書かれている通りに、『シュールでカオス』。正にそれがこの作品の全てを体現しているといっても過言ではないでしょうね。
全編に渡って兎に角不条理的というか…場面に合っていないキャラクターが登場し続けていて、その違和感というか場違いさに常時そのシーンを受け入れるのに気力を消費する、といったような不可思議な労力を読む際に強いられ続けたと感じますね。それが悪い、とか不快、というのではなく、そのアンバランスさを楽しめる、とでも言えばいいのか…場面と登場人物の不具合がカオス的な面白さを引き出している、と言えばいいのでしょうか…私の少ない語彙では表しきれない不可解な感想を覚えましたね。
しかし”特別賞”を受賞しているだけあって、面白いか面白くないかでいえば『面白い』です。
主人公が女性陣の一部に酷い目にあわされている姿はあまりに哀れを誘われる描写が見事ですし、ヒロイン?の軍曹の突飛な行動も突き抜けた信念があるためとわかっていると、笑いと一緒に納得できますね。bomi先生の挿絵の可愛らしい絵と本文内容のシュール&カオスというミスマッチは互いが互いを引き立てていて相乗効果が発揮され、絵はより可愛らしく見え、本文の味はより深みのあるものとして出ていました。
話の展開は富士見ファンタジア文庫の「フルメタル・パニック!」からAS要素などを抜いた作品のような印象です。軍人が突然高校に編入してきて、その軍人が一般的にはあまり通用しない特定世界の常識などを基本的な行動理念として活動し、その結果周りが振り回されて大変な目に会う…しかし最終的には上手く行く、みたいな。そういったヒロインに振り回される主人公の様子、といった姿がこの作品でも楽しめます。ただし、振り回すヒロインはグリズリーですが。(笑