アキカン!3

アキカン!3缶めっ

著者・藍上陸先生。挿絵・鈴平ひろ先生によるラブコメディ小説です。裏表紙に書かれている言葉から抜粋すると『すっからかんラブコメ』だそうです。そして文字通りで、名は体を表していますね。
・登場人物
主人公でメロンのオーナーの、超お調子者でトンデモ言動が目立つが実は過去に心に傷を持った、大地カケル。スチール缶のメロンジュースの『アキカン』で、缶状態と少女状態の2つの姿を持ちカケルとのキスで缶状態から少女状態になれる自由奔放だが寂しがりやのメロン。カケルの幼馴染でカケルの心の傷を知る、エールのオーナーで民間企業スカイエアーグループの社長令嬢の天空寺なじみ。アルミ缶のスポーツドリンクの『アキカン』でなじみをオーナーに持つエール。カケルやなじみの同級生で自称”魔女”の東風揺花。影が薄くイジメラレ系キャラクターで、いつもナチュラルに周りのみんなから酷い目にあわされるカケルたちの同級生の甘字五郎。そして『アキカン』を巡る話の黒幕的存在の国家公務員の男屋秀彦。その部下の木崎愛鈴。
この巻では新登場ながら敵役の野菜ジュースのアキカンの舞と、そのオーナーの塔堂拳介が出てきますね。
・シナリオ
キスで少女化するメロンソーダの「アキカン」メロンとの生活もすっかり慣れたこの頃。体育祭に向けた野球の練習にはげむメロンもクラスに溶け込みつつある。しかし、そんな平和な日常を壊す新たな「アキカン」が弓月学園を襲う。人を傷つけることを躊躇しない拳介とその「アキカン」舞はカケルとメロンに「アキカン・エレクト」を挑む!メロンはカケルを助けようとするけれど!?飲果応報のすっからかんラブコメ3缶目、開封。(7&YHPより抜粋。)
・感想
この巻は上下巻構成の上巻に当たるそうです。新しいアキカンの舞とそのオーナー、塔堂拳介との戦いが書かれている訳ですね。
カケルの過去に関する話、拳介の過去の話、2人の男達の、過去のそれぞれの傷を話に関わらせつつ、カケルと拳介がオーナー同士で戦うという、アキカン・エレクトの話の中でも異色のオーナー対決のお膳立てをするまで、が書かれていますね。
この巻は前2巻でコメディ話、ラブ話ときてこの巻ではシリアスに重点を置いた話が進められます。アキカンとの出会いを書いたのが1巻、アキカンを交えた男と女の人間関係などを書いたのが2巻なら、3巻は改めてアキカンとそのオーナーが戦わなければいけない立場であることを再認識する出来事が起こる、シリアス重視な巻ですね。
戦うことを目的としたアキカンとオーナーの登場に、アキカンとしてオーナーであるカケルを守る為にも戦いたがるメロンと、戦うこと事態を否定し何とか回避しようとして、メロンを戦わせたくないカケル。2人の互いを思いやるがゆえの擦れ違いがこの巻での展開の肝でしょうか。良いコンビなのに、相手への思いやり方が正反対である為にすれ違う―――それがもたらす展開が面白いです。
そして完全サブキャラクターだった甘字五郎が、ここでまさかの重要人物化。塔堂の過去を知る関係者として、同じサブキャラクターであるはずの東風揺花よりもこの巻ではスポットを浴びていましたね。
アキカン・エレクトにもカケルとメロンの関係にも動きがあるのがこの巻。そんな感じですねー。