陰からマモル!11

陰からマモル!11 うらしまゆーな

電撃文庫小説大賞でかつて『銀賞』を受賞した「僕の血を吸わないで」の作者で、ギャグ小説家として名を確立されている阿智太郎先生による作品です。他作品としては「住めば都のコスモス荘」「僕にお月様を見せないで」シリーズなどがあります。最近(2007年12月現在)では「トラジマ!」などが著作でしょうか。挿絵はコミックアライブで漫画版も書かれているまだらさい先生。他作品は「超飛翔スーパーウィングス」「もえよん学園」などを描かれているそうです。
MF文庫Jの看板シリーズとしてまたアニメ化を果たした作品として、「ゼロの使い魔」と並ぶんじゃないですかね?的作品の第11段ですね。
・登場人物
主人公で凄腕の忍者だが掟によりお隣の夕菜を守るために普段は冴えない青年を演じる眼鏡を取ると実は美形の陰守マモル。400年前にあるお殿様に大層気に入られて、子々孫々まで陰守忍者に守ってもらえる事になった蒟蒻職人一族の、現代は陰守忍者とかのことはもうさっぱり伝えられていないし陰守家が忍者の家系ということすら一家揃って気がついていないけど、影でマモルたち一家に守られ続けているマモルの幼馴染の天然ヒロイン、紺若ゆうな。そんなゆうなの自称・親友で成金大金持ちなツンデレ少女の沢菓愛里。かつては騙されてマモルと戦った事もある現代に生きるサムライ少女で、手に持つ刀『斬瀬羅満狗剣』はナタデココ意外何でも切れる真双津椿。マモルの従兄妹でマモルにベタ惚れの『一応』婚約者である伊賀くのいちの服部山芽。元はマモルを甲賀の里の忍びとするべく近づいたが、今ではマモル本人に惚れて都会暮らしをしている甲賀くのいちの雲隠ホタル。そしてサブキャラクターとしてはマモルの両親の陰守健吾と桜子に、飼い犬のぶる丸。基本登場人物はこんなところで。
・シナリオ
陰守マモルは勉強できない、運動できない、ルックスもダメダメな高校生。けれどその実体は、400年の掟に従いお隣の紺若ゆうなを陰から守り続ける凄腕忍者だ!!ひょんなことから次期・服部半蔵の花嫁に選ばれてしまった山芽。無理矢理、里へと連れ去られてしまった山芽は…?(第1話『縁結びぱにっく!』)ある日、ゆうなの大親友・愛里の成金パワーでうらしま伝説のある小島に出かけたいつものメンバー。そこで、いじめられている亀を助けたゆうながなんと…っていうかやっぱり竜宮城へ行ってしまった!!(第4話『うらしまゆーな』)これって最終巻?いえいえ、まだまだ続く陰マモワールド、4話詰め込み特盛りの第11弾です。(裏表紙より抜粋。)
・感想
最終巻ではありません。ですので「次回最終巻と書いておきながら!(笑」が、この巻を読んだ時の最大の感想でした。(笑
最終巻前の短編集、といった様式でしたね。サブヒロイン―――愛里が前巻でまるまる1冊使って書かれていましたので、この巻では愛里以外のサブヒロインたち(山芽、ホタル、椿)がそれぞれメインになる話をそれぞれ1話づつ。それと正ヒロインであるゆうなを話の基軸に据えつつサブヒロインたちがスポットを受ける話がひとつですね。
山芽が次期服部半蔵夫人に選ばれてしまう「縁結びぱにっく!」、椿が持つ剣『斬瀬羅満狗剣』を継承させる次期当主を探すために、椿の父・斬十郎が椿の結婚相手=婿=次期当主を選び出そうと殺陣試合を開く「武士道ぱにっく!」、ホタルが妹が病気で看病に帰郷した直後、ホタルを呼びに入れ違いでやってきたホタルの弟をホタルの実家まで送り届けることになったことからホタルの実家に訪れる事になったマモルが、ホタルの家族と出会う「里帰りぱにっく!」。これらがそれぞれのサブヒロインの話として書かれています。そして最後がゆうなが中心ながらスポットを受けているのはサブヒロインたちという、助けた亀に連れられて竜宮城へ行ったゆうなを求めて海を行く事になる「うらしまゆーな」。どれも阿智太郎節を炸裂させながら所々で切ない演出があったり、恋愛物の様な甘酸っぱい心中が語られていたり、ちょっとしたエロチズムがあったり、終始ギャグで通してみたりと、それぞれの話に見所がありますね。
最終巻前の、最後のキャラクター掘り下げと言った感じでサブヒロインたち全員に見せ場や中心となる話がありましたね。それだけにもうじき最後なのか、と実感が持てる巻でもありましたね。