陰からマモル!10

陰からマモル!10 プリンセスアイリーン

電撃文庫小説大賞でかつて『銀賞』を受賞した「僕の血を吸わないで」の作者で、ギャグ小説家として名を確立されている阿智太郎先生による作品です。他作品としては「住めば都のコスモス荘」「僕にお月様を見せないで」シリーズなどがあります。最近(2007年12月現在)では「トラジマ!」などが著作でしょうか。挿絵はコミックアライブで漫画版も書かれているまだらさい先生。他作品は「超飛翔スーパーウィングス」「もえよん学園」などを描かれているそうです。
MF文庫Jの看板シリーズとしてまたアニメ化を果たした作品として、「ゼロの使い魔」と並ぶんじゃないですかね?的作品の第10段ですね。
・登場人物
主人公で凄腕の忍者だが掟によりお隣の夕菜を守るために普段は冴えない青年を演じる眼鏡を取ると実は美形の陰守マモル。400年前にあるお殿様に大層気に入られて、子々孫々まで陰守忍者に守ってもらえる事になった蒟蒻職人一族の、現代は陰守忍者とかのことはもうさっぱり伝えられていないし陰守家が忍者の家系ということすら一家揃って気がついていないけど、影でマモルたち一家に守られ続けているマモルの幼馴染の天然ヒロイン、紺若ゆうな。そんなゆうなの自称・親友で成金大金持ちなツンデレ少女の沢菓愛里。かつては騙されてマモルと戦った事もある現代に生きるサムライ少女で、手に持つ刀『斬瀬羅満狗剣』はナタデココ意外何でも切れる真双津椿。マモルの従兄妹でマモルにベタ惚れの『一応』婚約者である伊賀くのいちの服部山芽。元はマモルを甲賀の里の忍びとするべく近づいたが、今ではマモル本人に惚れて都会暮らしをしている甲賀くのいちの雲隠ホタル。そしてサブキャラクターとしてはマモルの両親の陰守健吾と桜子に、飼い犬のぶる丸。基本登場人物はこんなところで。
この巻ではアラブの某大金持ち王子みたいなキャラでユデンデ王国のガッポリ王子と言う一発キャラが出てきますね。
・シナリオ
みなさまお馴染み、陰守マモルは勉強×、運動×、顔×のダメダメ高校生。けれどその実体は、400年の掟に従いお隣さんのゆうなを陰から守り続ける凄腕の忍者だ。今日はゆうなのスーパーラブリー大親友(自称)、愛里の様子がおかしい。なんとマモルは二人きりで、屋上に連れてこられてしまった。こ、このシチュエーションは…っ。「愛里をエスコートしてパーティに出るのよ」(第1話『プリンセスアイリーン』)。時は少々さかのぼり、マモルたちは中学一年生。今明かされる、マモルとゆうな、愛里の初めての出会い…。(第2話『真夏のおじょー様』)。ちょっぴりじーんときちゃう、絶好調の第10弾。(裏表紙より抜粋。)
・感想
この巻は沢菓愛里の話の巻です。
収録されているのは全部で3話。「プリンセスアイリーン」「真夏のおじょー様」「愛里をマモル!!」です。その全てが愛里が関わっています。何かしらの出来事を起こしたり、過去の話の中心人物だったり、重要な事に関わったりと、すべて愛里中心でしたね。
第1話は外国で起きる愛里の結婚騒動と暗殺者騒動で、こう書くとシリアスな話かと思いますが実際のところはいつもと変わらないノリで。しょーもないけど生暖かく聞いてしまうようなギャグを飛ばしてたり、どーしてそれで気が付かない!と言いたくなるような誤認をしたりと、阿智太郎節が炸裂していました。
第2話は昔の話。過去語り。愛里がまだマモルともゆうなとも知り合っていなかった頃。色々我慢していた愛里がマモルとゆうなに出会い、彼らとの交流を経て、自分の気持ちに素直になり結果、マモルとゆうなとの交流が始まる様子を描いていました。
第3話はこの巻の最大の見所でしょう。愛里にマモルの正体…陰守忍者であることがバレます。そのため明らかになった秘密を、ゆうなには黙っていてもらう代わりにマモルは愛里の色々な願い事を聞くことになり…と言う感じで。
全てにおいて沢菓愛里が関連していて、この巻だけで見るとヒロインはゆうなじゃなくて愛里でしたね。シリーズ刊行当初から登場していても微妙に影の薄かった愛里でしたが、この巻で思い切りメインを張っていてその存在を誇示していました。そして同時に、このシリーズが終了へと向かっている事を感じられる巻でもありましたね。
そう、あとがきで作者本人から「次回最終巻」と書かれておりました。ゆるーく続いていたこのシリーズも、とうとうラストを迎えるになったのですね。
いつまでも続けられそうな反面。毎回似たような展開―――『お約束』を周到して続けるというのにも限度が来ているということでしょうか。