嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん3

嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん3 死の礎は生

著者・入間人間先生。挿絵・左先生による「第13回電撃小説大賞最終選考会で物議を醸した問題作」その続編で第3作目です。
・登場人物
メインキャストで中心人物として書かれるのが主人公『みーくん』と御園マユことヒロインの『まーちゃん』。それ以外のサブキャストとして、警官の上社奈月。元みーくんの精神科医だった坂下恋日。
今巻登場は、剣道部所属でみーくんと委員が同じ美化委員の枇杷島八事。美化委員長で後述の一宮河名と付き合っている宗田義人。ソフトボール部所属の美化副委員長で同委員長と付き合っている一宮河名。みーくんが何となく人が少なそうで所属する事にしたアマチュア無線部の所属で生徒会書記であり、手帖にストックされた言葉で会話すると言う特異性を持つ伏見柚々。
そして真打。みーくんの妹こと『にもうと』。
・シナリオ
バレンタインの季節。街では、複数の動物殺害事件が発生していた。
マユがダイエットと称して体を刃物で削ぐ行為を阻止したその日。僕は夜道で死んだはずの妹(多分)と出会う。
そして妹っぽいものに遭遇した翌日。僕は学校の朝礼で知る。無自覚の悪意の伝染について。
三ヶ月の短い静穏へ精一杯の反抗を示す惨殺死体事件。最悪な、殺人街としての街興しが、再び始まったらしい。
あー。この立て役者は、僕の妹(暫定)なんだろうなあ、きっと。
…口癖の出番は、あるなら早めによろしく。(カバー折り返しより抜粋。)
・感想
この巻もまた色々と思惑が錯綜したり、誤解が交差したりして、心の裏側に抱えていた闇とかそんなものが噴出した結果の事件とその顛末が面白かったですね。
今回は2つの事件と言うか行動?が所々で絡み合ったり重なったりしながら進んでいく話でしたね。「にもうと」が過去を引きずってみーくんにリアクションを起こし、まーちゃんを巻き込んで結果起きた『過去に起因する事件』。それと、犬猫などの動物が連続で惨殺され最後には人がその対象となり、その結果みーくんやその周りの人たちが巻き込まれる形になった『連続惨殺事件』。この2つが、ある時は片方に影響し、ある時は片方の当事者がもう片方の当事者に影響を与えるといったザッピング的な進み方をしていました。その両方共に根底に人の心が抱える『闇』的なものがあり、今回の事件は両方ともその『闇を抱えた心』が起こす事件であり、会話でその闇の真実/真相が狂言回し的に語られ明かされていくのはシリーズ通してのこの作品の面白いところだと思いますね。
みーくんと他者による会話のキャッチボールも、この巻でも小気味の良いテンポと斜め上を行く発想での発言で相変わらず面白いです。その影に隠された、人を追い詰める会話の運び方や自身の悩みを隠しての会話運びは裏を読むほどに深さがあって繰り返し楽しめる部分でもありますね。
また、ヒロインであるまーちゃんが一筋縄では行かない精神の持ち主である事が書かれているシーンは、この巻でも健在でした。潔癖症以上に潔癖に「みーくん」だけを求めるまーちゃん。みーくんと一緒にいる時だけは甘えん坊だけど普通の少女に見えるだけに、第3者が介入した時に見せる顔は毎回狂気の片鱗を強く意識させられますね。彼女がどうなっていくのか、今後がまったくもって気になります。
サブタイトル『死の礎は生』。生きているから死に意味があり、死んだ者がいるから生きている人がいる。「メメント・モリ(死を忘れるな)」的なサブタイトル通りに、今巻は読了後にふと登場人物たちの生死の連鎖と言うか関係性を考える話でしたね。