嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん2

嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん2 善意の指針は悪意

著者・入間人間先生。挿絵・左先生による「第13回電撃小説大賞最終選考会で物議を醸した問題作」その作者第2作目になる続編です。
・登場人物
メインキャストで中心人物として書かれるのが主人公『みーくん』と御園マユことヒロインの『まーちゃん』。それ以外のサブキャストとして、警官の上社奈月。入院先で同室の渡会何某。病院の女看護士。それからみーくんの昔の友人兼元彼女?の長瀬透とその妹の長瀬一樹。
後は死体ですね。これが重要。今回のキーになる存在です。
・シナリオ
 入院した。僕は殺人未遂という被害の末に。マユは自分の頭を花瓶で殴るという自傷の末に。
 二人が入院した先では、患者が一人、行方不明になっていた。
 その事件は当初、僕にとって問題となるべき事柄ではなかった。数日後に起きた出来事のほうがよっぽど衝撃的だったからだ。
 数日後。マユは、頭部と花瓶を再度巡り会わされた。自傷じゃなく、誰かの手によって。マユは病室で血塗れになり、今回も気絶することなく自前の足で歩き、医者に治療を依頼した。
 そして、治療から帰ってきたマユは、本題とは関係の無いことを僕に発表した。
 死体を見つけた、と。
 また、はじまるのかな。ねえ、まーちゃん。(電撃文庫HPより抜粋。)
・感想
前巻同様に独特の主人公の言い回しが面白く、気がつけば中毒のように夢中になって読んでいましたね。嘘だけど。なんて、それこそが嘘だけど。などと、思わず本文で使われるような文体になってしまうくらいです。
この巻は病院と言う閉鎖された空間で起きた失踪&傷害事件を発端に、みーくんがまーちゃんの安全確保の為に真犯人―――というか、事件を起こした『誰か』を追い詰めていく話ですね。その過程―――人との会話とかが、色々な言い回しを含んでいたり裏に意味が込められていたりして、会話を読み解くのが面白い。それがこの作品全体に感じた感想です。前の巻同様に、みーくんによる地文での言葉遊び、それと精神疾患患者の心情を擬似的に模した思考/発想の部分が面白いです。
今巻ではそれ以外にも、隠された人間関係が面白かったです。最後まで読むことでわかるようになるまったく無関係に見えた人たちが実は繋がっていた。それも現在だけでなく過去でも。そしてだからこそ引き起きた失踪&傷害事件。すれ違いとか、思い違いとか、勘違いとかで、色々と迷走してそれだけに全体がわかった時の爽快感は中々のものです。腑に落ちる、というのか。かなりスッキリしますね。そして犯人の意外な正体にも驚きました。無邪気って怖いなー、家族愛とかも大概だよなー、と。
そんな感じで、閉鎖された空間/病院での死体を巡る様々な思惑の擦れ違いや誤解、そういったことで複雑に絡む人間模様が面白かったです。
最後に。さり気に気づきにくいかもしれないので書いてみますが、カバー裏。表紙と本そのものとの間に挟まれる形になっている部分に、その巻のイメージイラスト的なおまけがついていますね。風景画にその巻で使われたりその巻を意図する言葉が散りばめられています。読了前に見て、どんな話かイメージするもよし。完読後に見て「ああこの言葉はあのシーンに関する言葉かー」とか思ってみるのも、良いかもしれません?