アスラクライン8

アスラクライン8 真夏の夜のナイトメア

著者・三雲岳斗先生。挿絵・和狸ナオ先生によるハイスクール・パンクシリーズ作品の第8段です。著者の別著作としては「コールド・ゲヘナ (電撃文庫 (0318))」シリーズ、「i.d.〈1〉神使いたちの長い放課後 (電撃文庫 (0791))」シリーズ、「レベリオン―放課後の殺戮者 (電撃文庫)」シリーズ、後は単発?で「道士さまにおねがい (電撃文庫)」「道士さまといっしょ (電撃文庫)」なんてのがありますね。
・登場人物
主人公で重力を操る機巧魔神『クロガネ』の演奏者の夏目智春を中心に、クロガネの副葬処女で智春にくっついている幽霊もどきの水無神操緒、炎の悪魔で智春を護ろうとする美少女の嵩月奏、体の半分を機巧魔神のパーツで補った半人半機の智治たちの先輩である黒崎朱浬、メインはこの辺りで、サブキャラクターとして今回は智春のクラスメートの樋口琢磨、大原杏、前巻から登場した敵か味方かいまいちハッキリしないが『妹』に重度の幻想を持つ鳳島蹴策、天才少女で飛び級で智治たちの学校に交換留学生としてやってきて行方不明の姉を捜すアニア。こんなところでしょうかね。
そしてキーワードのひとつであり、タイトルでもある魔神相克者<アスラクライン>である加賀篝隆也に悪魔の相棒でありアニアの姉のクルスティナ、加えて今巻は前述の鳳島蹴策の実妹、鳳島氷羽子と様々にキャラクターが出てきます。
敵役としてはGDの1人で機巧魔神<蒼鉛>を繰る功名心に逸る男、里見恭武。それとGD配下の一般生徒、といったところですか。
・シナリオ
前巻での事件の後、入院していた嵩月の見舞いに行ったり夏期講習を受けていたりアニアに文句を言われながらアニアの目的である彼女の姉探しに協力しようとしたりして、夏休みに入る前から早々に忙しい智春。そんな中でクラスメートの杏に誘われ、智春は夏休みに海辺のペンションでバイトをすることにした。理由は単純に、色々と出費が重なってお財布の中身が心もとなくなったからである。そんな現実的な理由からながらも、海辺のペンションへ行けるという事で浮かれる操緒や樋口。だがそんなペンションでのバイトも、素直にはいかなかった。
加賀篝を追ってきたGD、里見恭武や何故かバイト先のペンションの近くでバイトしていた鳳島蹴策、ペンションに客としてやってくる朱浬、アニアといつもの面々がまた続々と集まってくる。そんな中、調査の結果と情報から加賀篝が近くの無人島に来ているらしいという話が。その情報に無人島に集まりだす面々。だがその無人島はただの島ではなく、その地下に「1巡目の世界」の遺産の眠る遺跡があった。遺跡を舞台にして、智春たち、GD、加賀篝たち、それ以外とが、4つ巴の戦いを繰り広げる事になる。そんな中、智春は加賀篝から機巧魔神が生まれた理由やその力の意味、悪魔と契約者に訪れる運命「非在化」の事を知る…!
・感想
この巻は夏の海を舞台に1人の男が散り、その散り様とその前に知らされた情報、事実によって智春が機巧魔神を扱うという意味を真に捉え、覚悟を固める話ですかね。いわゆる智春の成長の一端をまた書いているかと。
これまでの話から換算すると、「アスラクライン」は智春の成長譚であることがまたハッキリわかりますね。何が何やらわからぬ間に手にした「機巧魔神」という力。ソレに対して少しづつ理解を深めていきながら、その力の行使に伴う代償に恐怖しつつそれでも使わなければいけない時には覚悟を持って使う、と。そういった心情の変化がこれまでの刊行分も踏まえて丁寧に書かれているんだなぁ、と実感しましたね。
最後のクロガネの戦いは、必要最小限の労力で最大の効果、という低燃費というとなんですが、無駄の無い理想的な戦い方が出来ていて、その辺りにもただクロガネを暴走させてしまったりしていた当初に比べて智春の成長が感じられましたね。