とらドラ!5

とらドラ! (5) (電撃文庫 た 20-8)

とらドラ! (5) (電撃文庫 た 20-8)

とらドラ!

著者・竹村ゆゆこ先生。挿絵・ヤス先生による学園超ド級ブコメの第5作目。ですねぇ。
・登場人物
主人公で三白眼で目つきの悪い家庭的男の高須竜児、ヒロインで手乗りタイガーこと逢坂大河。この二人中心でサブキャラクターに大河の親友で竜児の片思いの相手・櫛枝実乃梨、竜児の友人で大河の片思いの相手、北川裕作。現役グラビアアイドルでクラスメートの川嶋亜美、他にクラスメート数名といった所がメインキャストかと。
そして今巻では話のキーパーソンとして、大河の父親が出てきますね。
・シナリオ
ある日突然、大河の銀行口座から残高が無くなる。それを大河は父親のせいだといい、竜児は大河に父親と会って話をつけてきて欲しいといわれる。他人の家族の事だからと一度は断ろうとする竜児だが、大河のいつに無い不安げな様子にしぶしぶ最後は承諾し、竜児はそう言った経緯で大河の父親と会う事に。そして大河の父親と会い、話をした竜児は大河の父親に若干の好印象を抱く。そして大河の父親は大河とまた一緒に暮らしたいと話す。自身が父親と暮らしていない竜児はそれができるならそうした方が良いと賛成し、大河にもそのように勧める。だが、後日、櫛枝にその話をすると櫛枝は激怒する。理由がわからない竜児はそのまま櫛枝と半ば喧嘩状態に突入。やがて櫛枝と竜児が喧嘩状態のまま、大河は父親と時々会う生活をするようになる。
皆で学園祭の用意を続ける中、一見幸せそうにしている大河。だが、少しづつソレは崩れてきてた。そんな日々の中、学園祭が始まる。父親を呼んだということではしゃぐ大河。竜児も何も問題はないじゃないか、と思いつつ学園祭に打ち込むが、学園祭当日、大河の父親は… といった感じで。
・感想
キーワードは「大河の父親」「学園祭」「家庭環境」といったところでしょうか。
現代に蔓延している「無責任な親に翻弄される子供」の1ケースとして、今回はそんな、家庭環境と人間関係で引き起きた事件として1つ考えさせられる話でしたね。
大事にしているようで肝心なところで線が引かれている。親が子供を逃げ場所にしている。親の責任を間違って認識している。そういった所から起きる、子供への悪影響、周囲への迷惑。そんな事を切々と考える一冊でした。
そんな親に巻き込まれながらも、必死にもう一度父親との関係を繋ごうとする大河の姿はそういった前述のことから、不憫さを禁じえませんでしたね。父親に見てもらおうと学園祭で奮闘する姿。着飾る姿、それら全てが。
しかし最後の展開はそれら全てを青春の熱情でぶち壊す爽快さが待っていました。
父親に対して改めて見切りをつける大河。自分が1人でも生きていけるくらいの強さを持っていると再確認する大河。そんな大河に竜児もまた自分の判断の過ちを自覚し、過去にもあった大河と父親の騒動とその顛末を知っていた櫛枝に話を聞き、全てを償うと言うつもりではないけれど、自分の中に沸き起こった感情のままに文化祭最終の「ミスター福男」決定レースで猛然と活躍する。そして最後のキャンプファイアーでは、竜児、大河、北村、櫛枝、川嶋となんだか知らない間に決まっていたようなメンツで踊り明かす… その一連の流れは「青春でブチかませ!友情と意地と奮起の文化祭」とでもいったもので、学生らしい無茶と学生らしからぬ境遇とでとても…そう、とても、青春でした…。
まったく。3度も『青春』の二文字を使ってしまいましたが、それくらいにこの巻は若さと情熱に溢れ、それを持って難題、難関に立ち向かっていった一冊だったと思います。