学校の階段6

学校の階段6 (ファミ通文庫)

学校の階段6 (ファミ通文庫)

学校の階段

著者・梶末高彰先生、挿絵・甘福あまね先生による、昔、誰もが一度はやったであろう「廊下を走る」「階段を駆け上る、駆け下りる」行為を『階段部』という部活動化した学生たちが送る、学園青春グラフィティ小説ですね。
・登場人物
主人公の階段部平部員、通称「缶バッチ」こと神庭幸弘、階段部部長で超ワガママッ子な「静かなる弾丸」の二つ名を持つ九重ゆうこ、階段部副部長で二つ名「必殺Vターン」を持ち部長・九重ゆうこのお目付け役の刈谷健吾、階段部メンバーに「黒翼の天使」天ヶ崎泉、「天才ラインメーカー」三枝宗司、前巻でついに二つ名を貰えた「月光ダンシングステップ」の井筒研。これら階段部メンバーに加えて幸弘の従姉妹四姉妹や、他校生で文化祭で階段部と対抗レースのような事をした学生たちを中心に話が進んでいきます。
・シナリオ
今巻はついに始まる主人公がメインのストーリー、というところでしょうか。
これまでの巻が階段部メンバーそれぞれの話であり、主人公を除くそれぞれの成長譚であったなら、今巻はいよいよ主人公の話。神庭幸弘の成長譚ですね。
ある日、いつものように階段部で階段レースに汗を流していた幸弘は、突然に虚無感に襲われ、階段レースに対しての情熱を失ってしまう。焦り、悩みながら色々と試してみるが一向に再燃しない情熱。そんなある日、突然幸弘の前に現れた美少女、御神楽あやめは幸弘に言う。「飽きたんじゃないかな?」ショックを受ける幸弘はそのまま、階段部を一時休部する決意をする。そんな折、生徒会長・遊佐から到底承服できない提案を出されて、ますます悩む幸弘。果たして幸弘は、どんな決断を下すのか。幸弘は本当に階段部を辞めてしまうのか…? といった所で。
・感想
この巻は兎に角幸弘がもがき悩み苦しむ巻ですね。
何故か情熱が燃えない階段レース。あやめの言葉に揺れる自分。納得できない自分の衝動。そういった、受け入れられない感情に翻弄される幸弘が最終的に1つの結論に達するまでが、少年らしく青く悩ましい姿として書かれています。ですが同時に、悩むその姿は少年の日の青いながらも燃え立つような情熱が実は底に堪っていて、噴火する時を待っていたのだと思える姿でもありました。
終盤、自分の衝動に納得できない幸弘の心の慟哭とそんな自分を認めるまでの姿は、まさしく10代青年の主張。といった趣きで、それまでの悩む姿、苦しむ姿があるだけに全てを吹き払う火山の噴火のような壮絶感がありました。
今巻から登場の御神楽あやめは、中々腹の黒い一面を見せてくれる悪女系キャラクターで幸弘を翻弄していて、そう言った意味では味のあるキャラでしたね。それも終盤の幸弘の噴火に巻き込まれて、なんとも小悪党っぽい姿になっていたのが苦笑を禁じ得ませんでしたが。(笑