螺旋の国の3ドリル

螺旋の国の3ドリル (HJ文庫 と 3-1-1)

螺旋の国の3ドリル (HJ文庫 と 3-1-1)

螺旋の国の3ドリル

著者は富永浩史先生。挿絵は夕仁先生で、富永先生はこれまで他の作品として、第五回富士見ファンタジア小説大賞佳作で「死天使は冬至に踊る」でデビューし、ファミ通文庫で「竜と箒とひかりの彼方」という作品を著されているそうです。
・登場人物
メインは3人。モデラーの少年、宮寺轟と海城竜一、それとドール大好き少女今居翠。サブキャラクターとして美少女魔術師、軍曹、騎士と個々だとそれほどでもないのにそれらが纏まって異彩を放つメンバーとなっている面々が主人公たちの周囲を支える役として出てきますね。
敵は怪物軍団。そしてそれらを統べる魔導師フォン・ヴェヴェルスブルグ。構成的には主人公たち+美少女魔術師率いる面々 VS 螺旋の力を持つ魔物とフォン・ヴェヴェルスブルグ、といったところですか。
・シナリオ
冒頭はとある自作キットの発売会…いわゆるワ○フェスの様な会場で売り子をしていた轟と竜一は、お堅いと有名な委員長の今居翠のコスプレ姿を発見し、委員長のちょっとした弱みを握るところから始まる。
そしてある日、東京地下施設の見学に翠を呼び出し、同行させて行く。向かった先で轟と竜一たちはドリル付きの巨大重機に興奮するが、そこに突如巨大な螺旋の怪獣が現れ、その怪獣に巻き込まれて地底世界へ召喚されてしまう。回転する物が力を生み出す世界…そんな螺旋の世界で、たまたま持っていたモデラー必携の3ミリ径のピンバイスにより『螺旋の使徒』と呼ばれるようになった轟、竜一、翠の3人。滞在する村に襲い掛かってくる魔物軍団を美少女魔術師や軍曹、騎士たちと協力しながら戦いつつ、それぞれに思うところあって生活する日々。ぶつかりあいながら理解しあい、少しづつ絆を深めていく3人。
果たして彼らの行く末は?地上に戻れる日が来るのか、それとも地底世界で生涯を過ごすのか…と。
・感想
徹頭徹尾で『ドリル』に拘った作品でしたね。名前の通りに。
常時一定の方向に回転するモノ…螺旋、つまり『ドリル』が力を持つ世界で、そのドリルにこだわりドリルをもってドリルを征するを地で行くモデラー2人の対立と和解を書きつつ、そんなドリルを扱う2人の『漢のロマン』に馬鹿さを感じ、2人との間に壁を感じながらも理解できない物に対しての壁を、ツンツンしながらも徐々に崩していこうとするドール好きの少女の三者三様の前への進み方。そしてそんな『前に進む力』に未来を託し、現在を護ろうとする停滞を打ち破り突き進もうとする3人のまっすぐさ。
そして話の展開もまたドリル。敵との戦いにおいて螺旋の力を如何に効率良く使うかを考慮したり、秘密兵器のキモはやっぱり螺旋だったり、敵の強大な力の理由はやっぱり螺旋だったりと、そういった全てに『ドリル』が感じられる、まさにドリルを描くための物語。それがこの作品でしたね。
総評すると少しマニアックな面がやはりありましたね。主人公3人がそれぞれ『ドリルオタク(熱血系)』『ドリルオタク(理論系)』『ドールオタク』ということで、一般的とは言いがたい感性というか発想がありましたので。プラキット、とかフルスクラッチ、とか言われてピンと来る人向けかもしれません。しかしながら専門的過ぎるということは無いので、ややどっちつかずになっている印象ですねぇ。