刀語 8

刀語 第八話 微刀・釵 (カンザシ) (講談社BOX)

刀語 第八話 微刀・釵 (カンザシ) (講談社BOX)

刀語 第八話「微刀・釵(ビトウ・カンザシ)」

著者・西尾維新先生。挿絵・竹先生の剣劇活劇時代劇シリーズの第8巻。

剣を使わずに剣術家と戦う流派「虚刀流」の七代目当主・鑢七花が、伝説の鍛冶師四季崎記紀の打った完成形変体刀12本と呼ばれる刀を、幕府の為にという建前の元、自身の野望の為に集める奇策士・とがめに同行して蒐集するという話。

この巻ではまた新たに所在の判明した変体刀、『微刀・釵』を蒐集するべく七花ととがめが前2巻でも言われていた壱級災害指定地域のひとつ、不要瑚へと足を踏み入れる事になります。それまでにも真庭忍軍と左右田右衛門左衛門との「忍者VS元忍者」なんてのの戦いがあってそこで右衛門左衛門の過去に纏わる話がチラッと出てきたり、とがめと否定姫との会合―――腹の探り合いがあったりと、後々に関する話の展開などを交えつつ、不要瑚を守護する「日和号」と七花との戦いが書かれていました。
不要瑚―――そこを守護するように、近づく人間を片端から切り捨てる「機械人形」、「がらくた王女」、等の異名で呼ばれる日和号。微刀・釵を手にする為に日和号と戦うことになる七花だったが、不要瑚―――文字通り不要な物が捨てられ続けて出来た人工的な廃棄物で出来た足場に、七花はまず安定の悪さで苦戦する。さらに、唐繰りであるがゆえに意表をついた動作で攻撃を仕掛けてくる日和号に、人間相手以外の戦いとして虚刀流でも対処策の無い攻撃などに、苦戦を強いられる七花。果たして、七花は無事に第八の変体刀『微刀・釵』を蒐集できるか―――? と、いった所で。
そして同時に左右田右衛門左衛門と真庭忍軍12頭領の1人、真庭海亀との忍者VS元忍者の対決もありました。こちらも左右田右衛門左衛門の心の暗部と、真庭忍軍との因縁が明かされたり意外に強い実力を持つ右衛門左衛門に驚かされたりしましたね。普通に強かったですよ、右衛門左衛門…。
展開はさて置き、この巻では七花ととがめは日和号に対して周到な準備と調査、それから日和号の特性を見極めてから計画的に日和号と対峙していたのが印象的でした。
真庭蝙蝠の時の様ないきなりの出会い頭から戦いが始まってそのまま勢いで勝つのでもなく、宇練銀閣の時の様に七花が自分で考えてとがめをある種利用するようにして勝つのでもなく、敦賀迷彩の時の様に相手の術中に嵌ってからそれを打ち破るのでもなく、錆白兵の時のように正々堂々真正面から戦って勝っ…たんだと思う戦いでもなく、校倉必の時のように迷いながら戦いに入ってとがめの声援で力任せに勝ったのでもなく、凍空こなゆきの時のように堂々とした立会いに横槍が入って結果勝つのでもなく、鑢七実の時のように超人的強者に対して一度七花が負けた後でリターンマッチでとがめの奇策+新必殺技で勝つという少年漫画みたいな展開でもない。初めから七花ととがめの2人で相談し、協力し、相手を見極め、計算付くで勝つ―――そういった、一種知能戦とも言える頭脳プレーの勝利、みたいな感じでしたね。日和号の唐繰り人形と言う特性に慌てながらも、最後は冷静に相手の弱点を突いて勝つというのが七花ととがめのふたりの協調の結果、当然訪れた勝利…みたいな?
総評して、今巻は先にも少し書きました「頭脳プレーの勝利」と言う感じです。とがめの性格的に理想的と思っているのではないかと思える「相手を知ってから対策を練って的確な対応で勝つ」というのを実行していたな、と。
そして四季崎記紀人間性というか、日和号の生まれの由来と微刀・釵の名に隠された意味が最後に明かされる辺りは、基本的だけど納得できる名付け方だなぁ。四季崎も意外とロマンチストかよ!と思えました。