世界征服は一家団欒のあとに2

世界征服は一家団欒のあとに2 拝啓、悪の大首領さま

第13回電撃小説大賞、<金賞>受賞作品の続編ですね。著者は橋本和也先生、挿絵はさめだ小判先生です。
一家全員が何かしらの特殊能力を持つ家族で、その力でだいたい「正義の味方」をやっている星弓一家。父は異世界を救った伝説の勇者で母はその異世界の姫。長女は社会人で魔女の彩美、次女は宇宙規模で活動するスーパーウーマンの七美、三女で治癒能力を持つ武器愛好家の美智乃、長男の「生命を奪う」能力者で主人公の軋人、次男で人一倍頑丈で基礎能力の高い刻人。この一家を中心に、軋人と美智乃の友人、前巻でのキー・キャラクターだった柚島香奈子などを加えて話は展開されていきます。
今巻は正義の味方一家である星弓家が倒した「悪の組織」その後にスポットを当てた話でした。
軋人が少し前に滅ぼした悪の組織。その関係者が刻人を襲ってきていて、その関係で軋人が次はターゲットになる。が、そいつはまるっきり弱く、軋人はあっさり撃退。彼の名は鶴見啓吾。その後、痛めつけすぎたと反省した軋人が彼に話を聞いてみれば、崩壊した悪の組織の首領だった父親のその後の零落した姿に、鶴見家は一家の繋がりはボロボロ。なんとかしたいと思い啓吾は行動していて、話を聞くうちに軋人がその「悪の組織」を壊滅させたのは自分だと言う事にも気がつく。なんだかいたたまれなくなった軋人は、悪の組織一家の家庭環境改善に、手を貸すことにする。だが、悪の組織一家だけに一筋縄では行かなくて… といった形で。
今巻は軋人が負けたり勝ったり勝たなかったけど負けなかったりと、ちょっとすっきりしない状況が多いですが、最終的には綺麗に収まるということでハッピーエンド系の終わりでした。また、悪の巨大ロボットが出てきたり、お約束なコスチュームの悪役が出てきたり、味方なのか敵なのかと言いたくなる次女を相手に立ち回ったりと、展開も飽きません。しかし根底は軋人による「悪の組織一家」の家庭環境改善というところで収まっていて、迷走する事も無く纏まっています。
総評して、色んな思惑が入り混じりながら、時に派手に時に裏でごそごそと動いたりしていて、表裏で動きが違うけれどどこかで繋がっているという、読みの深い作品になっていますね。
正義の味方は倒した悪の組織のアフター・ケアも時にはする事になる。正義の味方の隠れた苦労と、悪の組織の隠れた軋轢。この本でそういったところを見て楽しめるかと…