円卓生徒会3

円卓生徒会〈3〉 (集英社スーパーダッシュ文庫)

円卓生徒会〈3〉 (集英社スーパーダッシュ文庫)

円卓生徒会3

著者・本田透先生。挿絵・大田優一先生によるアーサー王伝説をモチーフにしたファンタジー×現代のパロディノベルですかね。
主人公でアーサー王役であり、物語の重要部分を担う現代世界とファンタジーの世界とを行き来する能力を持った『魔剣』エクスカリバーを持たされた、普通の気弱な高校生だった紅龍亜砂。彼を中心に、マーリン役の子猫遊鞠、他に円卓騎士団のランスロット、ガチェインやトリスタンといった円卓の騎士の主要メンバーを女性化したキャラクターたちが亜砂の周りを囲みながら現代世界やファンタジー世界を行ったり来たりしつつ冒険とストーリーが進んでいく話、となっていますね。
毎巻で現代世界とファンタジー世界とで完全に分けて事件なり出来事なりを描写するという著者の方針の下、今巻ではファンタジー世界での出来事がメインで話が進められていきます。
サー・アサ・ペンドラゴンとしてブリタニア王となった亜砂。現代世界での生徒会長選挙(第2巻)も無事終わるも、続いてブリタニア王としての戴冠式が待っていた。異世界へ渡り、王として戴冠式の準備やらガーウェインが急かすカレー作りやらに亜砂は奔走する。だがそこに、150年ぶりに出現した謎のモンスター・グリンナイトが、王の中の王と称されるブリタニア王ハイ・キングの戴冠式は許さぬと言い放ち、受け入れない亜砂たちに怒り、ブリタニア全土に呪いをかけて去っていく。呪いの内容は国土の衰退。作物が実らなくなる呪いが発動するまで猶予は3日。亜砂は気弱な心に鞭打って(打たれて?)、グリンナイト討伐にラーンスロット、ガーウェイン、トリスタン、鞠を連れて旅立つ…。といったところで。
今巻は異世界編と言う事で、ある地方にある筈のグリンナイトの居城「緑の神殿」を捜す旅をしています。その最中、ガーウェインの故郷に寄ったり幽霊城と噂される古城に情報を求めに行ったりと、中々フレキシブルに動き回っていましたね。
今回も微妙にエロスを感じさせながらも異世界の設定で「現代に良く似た世界で何故、蒸気機関などが発明されていないのか」など古典社会的なところにも観点を置いて話が進んでいたりして、世界考証がなかなか面白かったです。カレー1つでここまで考証できるのか…みたいな。
また今巻のヒロインとしてスポットの当たっていた騎士・ガーウェイン。普段はただのカレー好きな暴れん坊というイメージですが、その内面が描写されていたり過去話が出てきたりして、彼女のキャラクターの掘り下げが行われていました。
総評して、今巻は「騎士ガーウェインの巻」。グリンナイトという魔物に挑み、己の心の弱さを自覚し、その上で騎士としての心得を自覚し、己の心の弱さを克服していく少女の成長譚が書かれていると感じました。
そしてそんなガーウェインを見ていて、亜砂自身もブリタニア王として自分に何ができるかを考え、実行しようとしたりして亜砂自身もまた少し成長、といった感じで最後は纏まっていました。

強気で乱暴なくらい元気な明るい少女。その裏側に潜む心の弱さ。彼女がそれを自覚し、立ち向かってやがて克服していく姿にきっと貴方も「強さの意味」を再確認できる筈…。