純情感情エイリアン3

純情感情エイリアン3 史上最大の愛の奇蹟

作者・こばやしゆうき先生。挿絵・まくら先生で、第9回角川学園小説大賞で自由部門<奨励賞>を貰った作品のシリーズ第3作目。そして今巻で完結だそうです。
第1〜2巻をあらすじ的に説明すると、主人公である赤城雄太が入学した高校の部活動説明会で見た上級生近藤桃に一目惚れし、彼女の所属する部活へ入部するところから第1巻は始まりました。その部活はなんと「地球防衛部」。並みの体育会系部活動よりハードな体力作りをし、並みの文科系部活動より重要且つ専門的な知識を詰め込み、真面目に異星からの侵略者などと戦うことを目的とした部活。初めは「そんな馬鹿な」と思いながら桃先輩を目当てにしつつも仲良くなった部活仲間と共に地球防衛部をただの心身強化系部活動として続けていた赤城。だが、ある時を皮切りに次々と異星からの侵略者(第1巻)や謎の異形生命体(第2巻)と戦うことになり、否応無く事実を受け入れていくことに。そんな中で赤城は桃先輩とも両思いになり、そして向かえるのが今巻の騒動。といった所でしょうか。
これまでの第1巻、第2巻で色々と無理のある行為をして桃先輩のピンチを救ったり異星の侵略者と戦っていた赤城の体に、ついに限界がきて異変が起こることが今巻の事件の切っ掛けであり発端でしょうか。
ただでさえ人間にあるまじき行為をしたことで体組織的にいつおかしくなっても不思議ではないと言われていたのが、これまで影で赤城を助けていた高知能エイリアンから改めて「お前の命は後5日」と宣告されます。そして高知能エイリアンから、「赤木のことを知る者から赤城の死を悲しまないように記憶操作してもいい。ただし、条件は赤城が脳だけになって我々に協力すること」と言われ、悩む赤城。そんな彼の前に今度は高知能エイリアンと敵対関係にある精神世界人で通称を<悪魔>と呼称する事になる生命体が、こっちは「高知能エイリアンこそ人間の敵だ。我々に力を貸せ」と言ってくる。
誰が敵で誰が味方なのか。高知能エイリアンの言う事の真偽は?悪魔の言う事の真偽は?
赤城は、やはり体組織を崩壊させて死んでしまうのか―――? と、いった感じで。
この巻は最後という事ですが、正直打ち切りなイメージを覚えざるを得ません。冒頭。唐突に高知能エイリアンから告げられる赤城の寿命も突然すぎる気がしますし、そのさらに前に赤木の幼年時代の精神的問題みたいな描写もあるのですが、これもとってつけたような気がします。その辺り、今巻で出てきた悪魔や高知能エイリアンとの戦いの為に慌てて出した設定、見たいなイメージがありますね。
ですが話の流れとしてはそう悪くも無いのではないでしょうか。
これまで味方か、そうで無くても中立だと思っていた相手の裏側を見て、その怪しさを感じながら慎重に正体を見極めようとするのはミステリチックで面白かったですね。
しかしながら、今巻で赤城が得る特異能力は少々頂けませんでした。「イメージ力=パワー」の図式になる、中学生の考えた「僕のヒーローの最強能力」みたいで、いくらでも使い道があるのでちょっと無敵すぎるかな、と。
総評してこの最終巻は「やや御都合主義が目立つが盛り上がりは悪く無い巻」でしょうか。
敵味方が入り乱れながらグダグダの最終戦闘ですが、それだけに敵も味方も総力戦。派手さは一級品です。パーッと盛り上がり、パーンと散る。そんな花火みたいなラストをお楽しみいただけるかと。