神曲奏界ポリフォニカ 赤5

神曲奏界ポリフォニカ ビギニング・クリムゾン

著者・榊一郎先生。挿絵・神無月昇先生によるシェアード・ワールド・ノベル・シリーズの赤シリーズにおける第5巻で。
今巻は始まりになった事件の顛末。PCゲーム版やPS2ゲーム版の冒頭にあたるフォロンとコーティカルテの初対面、契約、時間が過ぎて再開するまで、を書いてあります。
内容はPCゲーム版の焼き直しともいえるもので、第4巻からは続いていません。時期的にアニメが始まったから赤シリーズの新刊をアニメが放送している間に出したいというような感じが見えているような気もしますが、ゲーム版のダイジェスト風ということでファンなら持っておいても良いのではないでしょうか。また表紙絵をアニメイト限定版、とらのあな限定版、一般流通版と3種類用意した辺りもそのあたりのあざとさのような物を感じてしまいますね。(^^; ちなみに私はアニメイト版を入手しました。が、その時点ではとらのあな版もあるとは知らず後日探しに行ってみたら見事に完売という事でかなりへこみました。(笑
内容に関してに移りますと。いわゆるフォロンとコーティカルテの出会いの巻であり、未だフォロンは楽士養成校の学生の身分ですし、ユギリ姉妹とも出会ったばかり。フォロン自身、神曲楽士として精霊と契約できずに悩んでいた時分と言う事で、未熟なフォロン像が現行の第1〜4巻以上に強く出ていますね。それでもコーティカルテの為に新曲を見事に演奏してみせる辺り、フォロンのいざという時には強いという姿がこの時点で既にあったということですが、ただでさえ未熟なフォロンが、この第5巻では過去の話としてそれ以上に「未成熟な上に自信も無いフォロン」として弱々しく見られます。
コーティカルテもこの時期からして、すでにフォロンの独占欲発揮しまくりで。最終的にコーティカルテを交えた日常シーンはラストに少しある程度なのですが、それでもその独占欲、嫉妬心の爆発は今と変わらずで、微笑ましいですね。
総評して、この第5巻は「フォロンとコーティカルテの出会いの巻」の、第0巻に当たる巻として。
第1〜4巻までの流れで絆も深まっていたフォロンとコーティカルテ。その始まり―――ということで、今のフォロンとコーティカルテとの関係とを心中で対比すると、ふたりの心身の成長と内面の変化が浮き彫りに見られてなかなか感慨深いものがありますね。
文字通りに「Bigining・Crimson<深紅のはじまり>」。アニメ版に合わせて読み返すのも、良いのではないでしょうか?