なつき☆フルスイング

なつき☆フルスイング

第13回電撃小説大賞『銀賞』受賞作品。
夢魔』と呼ばれる存在がある。人に取り付き白昼夢や夢遊病などの一般的に精神障害などと呼ばれる「夢」を見せ、それを力の糧とするその存在。物語は、そんな夢魔を追っているという夏希と主人公である葉岡智紀が出会うことから始まります。
かつて肩を壊し、野球で甲子園に行くと言う夢を失った智紀は、数日に一度の割合で学校帰りにバッティングセンターでストレス解消をするようになっていた。そんなある日、バッティングブースで声をかけてくる女。それが夏希との出会い。
出会った夏希はいきなり智紀の尻目掛けてバットを振り回してくる。ケツバットである。慌てて逃げ出す智紀だったが、やがて夏希に追い詰められる。が、夏希の目的は智紀に取り付いた夢魔。すったもんだで智紀の夢魔を祓った夏希と祓われた智紀は、それをきっかけに交流を持つようになっていく… と。プレ・ストーリーはこんな所で。
ストーリーはここから夢魔に憑かれた人を夏希と智紀で祓っていくという形で数回繰り返され、最後には夏希の問題を智紀が解決する、という形で終わります。
この作品はけっこう野球的なイメージが強いというか、全部を纏めて表現すると野球×夢魔×青春×悩み×過去 といった感じで構成されている感じです。
野球盤が出たり野球に関する描写がちょっと細かかったり、夢魔を祓う武器(アルプバスターというのですが)が、それがそのままバットの形をしていたり。作者先生の趣味なのですかね?
作品内容は、精神的に弱っている人の話という感じで。何かしら問題を抱えている人たちに夢魔が取り付き、幸せな偽りの夢を見せ力の糧としているところに夏希たちがやってきて夢魔を祓い、さらに現実の悩みの解決道を示しあるいは示す手伝いをしていく、というものでポジティブに考えるということを中心に主張しているように感じましたね。前向きな人は共感できるところも多いのではないでしょうか。
総評して、全体的に明るめですが精神の話を扱っているだけに一概に評価を示しにくい、デリケートな作品だったと思います。ですが作者先生なりの主張を感じられるというか、答えとしてのひとつのケースとして見事な纏まりだったと思います。
あと、これは蛇足でしょうが。
イラストは今時の漫画風なのですが、微妙に小道具のパースがおかしかったりします。けど、キャラクターはバランス良くかかれています。ただし、作者の趣味かイラストレーターの趣味か編集の趣味か知りませんが、女性キャラクターの胸元は大きいか小さいかの二極です。(笑