狼と香辛料4

狼と香辛料 (4) (電撃文庫)

狼と香辛料 (4) (電撃文庫)

狼と香辛料

第12回電撃小説大賞で「銀賞」を受賞した作品で、旅の行商人ロレンスと賢狼ホロとの旅を書いたシリーズ第4段。
今巻ではホロの故郷の手掛かりを知るかもしれないディーエンドラン修道院を探して、田舎の村テレオまでやってきたところから始まります。
前巻で立ち寄った、異教徒の町クメルスンで知り合った大鳥の化身であるディアンに、ディーエンドラン修道院のルイズ・ラーナ・シュティングヒルト院長という人が様々な異教に詳しく、ホロの故郷ヨイツに関しても知っている可能性が高い。その修道院の場所はテレオ村のフランツ司祭に聞け、と教えられたからです。やがて、テレオについたロレンスとホロはフランツ司祭を尋ねてさらに道を聞こうとしますが、しかし既にフランツ司祭は故人となっていて教会には養女であるエルサがいるだけでした。途方にくれかけたロレンスたちだったが、さらにそこで村の存続に関わる事件にまで巻き込まれてしまいます。果たしてロレンスとホロは、ヨイツへの手掛かりを見つけることができるか…? と、言ったところが今巻の内容です。
今巻では商業的な貨幣の動きや駆け引きの妙は、前巻までに比べてなりを潜めている感じです。その代わり、ホロの賢狼としての力を使ったりした少しばかり超常的な展開が繰り広げられます。
村と街との分不相応な契約の軋轢からきた事件に巻き込まれ、旅の行商人という立場ゆえに危機的状況に立つロレンスとホロ。その状況を打破できる行為である賢狼の力の行使も、ただの旅仲間というだけではない関係の2人だからこそ、刊行分で起きた事件で深めた関係があるからこそ、と思えます。ただの御都合主義ではなく、積み重ねた関係があるから出てくる選択肢、という感じで今までの積み重ねを上手く描写していましたね。
今巻はロレンスの出番はラストに集約している印象を受け、その分それまではホロが賢狼として活躍しているシーンが印象に強く残りました。つまり、賢狼として超常的に状況を打開した後、全てを纏めるのがロレンスの商人としての才覚といった形で収まっていて、ロレンスとホロの2人それぞれが役割をキッチリこなしているという感覚を覚えましたね。
総評して、今巻でもヨイツに関する場所なんかの明確なまでの情報というのは得られないながらも、また1歩ロレンスとホロの旅は前進した、と言う感じですね。また、旅の終わりが近づくに連れヨイツにたどり着いた後、ロレンスとホロはお互いにどうするのかという点も気になるところです。今巻ではその辺りの話が気になったロレンスが思わず問い掛けてしまうなどして少し触れていましたが、ホロの機転で結論はまだ出されませんでしたので…。どのような答えを出すのか、やはり気になりますね。
それと今巻も、相変わらずロレンスとホロの言葉の応酬の駆け引きは絶妙な間でした。互いが互いをやり込めたりやり込められたり。でもその根底には相手のことを思いやる気持ちがある、というか。テレオ村のエルサとエヴァンという2人の触発されてか、ロレンスとホロも今巻は既刊分よりもラブ度が上がっていた気がしますしね。(笑
ただし、先にも書いたように今回は賢狼の力の行使など超常的な面が目に付きましたので、既刊分ほどには商業の駆け引きなどで見られた緊張感、知恵回しなどは無かったと思います。そう言った点では今巻は既刊分より弱いですかね。