暗闇にヤギを探して2

暗闇にヤギを探して〈2〉 (MF文庫J)

暗闇にヤギを探して〈2〉 (MF文庫J)

暗闇にヤギを探して

MF文庫新人賞で優秀賞を受賞した作品の続編です。
主人公である合人と、その合人が書いた物が書かれた紙しか食べられないミリオン先輩こと千早先輩。そして合人の幼馴染で、いつも着ぐるみを着込んでいる風子。前巻でメインだったこの三人の関係に、さらにひとり、羽生まひるという女生徒が参入してくるというのが今巻の話ですね。
リリース時期を無視してというとあれですが、話の内容は夏の話。プール行ったりアイス食べたり水族館に行ったりと、涼しげなシーンが続きます。
ストーリーは、千早先輩に誘われてプールに行った合人は、そこの売店で「順番を変わってもらえませんか?」と言われる事でまひると出会います。それをきっかけにまひると知り合った合人は、ある日机の中に入っていた手紙でまひるに呼び出されます。待ち合わせ場所に行ってみるとそこでまひるから告白を受け、それを千早先輩が目撃していて、と――― こんな感じで進みます。最後には千早、まひる、風子の3人がプールで三つ巴の勝負事に。
今巻で初登場のまひるは、千早に負けないくらいの不思議な秘密を持ちながら、それを上手く利用して生きている人として書かれていましたかね。その時々の姑息さと、合人を前にしての強気だけど乙女な姿はギャップを感じさせ、魅力的に描かれていました。
この作者先生の作風なのでしょうか.少しばかり謎めいたというか、所々でファンタジックな演出があるのです。合人の使う例え話の話とかですが。
今巻は、それを夢の中での過去の人との会話と言う形で表現していましたが、この過去の人。これがイマイチわかりにくかったと言うのが正直な感想ですね。昔、学校にいた女生徒2人が生徒会室に残した花の種。これを合人と千早が見つけたことで物語に登場するようになるのですが、この役割がちょっとわからない。たぶん、千早と合人の関係に被せるようにして、「過去にもいた似たような関係」の2人として書いたのではないかと思うのですが…
総評して、前巻に比べて洗練されたイメージは薄れた気がします。人気作の『2』は面白くない、という嫌な因習を踏襲してしまっていると言うか…不可思議な魅力で引っ張りつづけた1巻に比べて、大衆向けに調整されてそんな不可思議さが薄れ、結果的にどっちつかずになっている印象がありますねぇ…