斬魔大聖デモンベイン ド・マリニーの時計

斬魔大聖デモンベイン ド・マリニーの時計

さて、今年最後の感想ですね。
荒唐無稽ス−パーロボットとして名を売り続ける、『機神咆哮(斬魔大聖)デモンベイン』。その短編集といったのがこの本ですね。
内容は3編。表題作『ド・マリニーの時計』と、書き下ろしの『遺跡破壊者』。そして本編の数年前、デモンベインが登場したりする前のアーカムシティの日常風景を描いた『破壊の序曲』です。
『ド・マリニーの時計』は、作者である古橋秀之先生が書かれた前著作である『斬魔大聖デモンベイン 軍神強襲 (角川スニーカー文庫)』で使われた、時間を限定的に操るアル・アジフのロスト・ページの力を、アルが取り戻す前、取り戻すに際してどうやったか、を書いている作品ですね。
時間を操るド・マリニーの時計。それを手にして無限再生、無限増殖に応用するドクター・ウェストと破壊ロボに、大苦戦を強いられる九郎とアルの乗るデモンベイン
時間の跳躍や早送り、巻き戻しなど、古橋先生の御家芸である時間に関する記述が妙技を『魅』せます。必見です。
『遺跡破壊者』はこれも過去の話。『機神飛翔デモンベイン』で登場したラパン・シェリュズベリィ先生が登場し、若き日のドクター・ウェストと邂逅するというものでした。
ストーリーは、ウェストが独自の発想で開発した探知機などで向かう未踏の遺跡群。そこは毎度毎度邪神の眷属たちの住処で、毎回ウェストはピンチに陥る。そこに、シュリュズベリィ先生が毎度学徒たちを連れて邪神の勢力破壊に立ち寄り、対邪神の方法を講義をしながらウェストも助け、邪神の眷属も蹴散らしていく―――と。内容はこれを3度繰り返し、3度目でシュリュズベリィ先生がウェストにアーカム行きを薦める―――そしてウェストはアーカムに向かう。となります
デモンベイン作品ながら、この回はデモンベインどころか九郎とアルも登場せず、ウェストとシュリュズベリュ先生他ばかりが登場しますが、まったく違和感ありません。荒唐無稽な邪神の眷属に対し、圧倒的戦力であるアンブロシウスを招喚して対抗する辺りは、デモンベインの活躍に比べても遜色ありません。
そして『破壊の序曲』
これは完全にプロローグのプロローグ。
ドクター・ウェストがアーカムシティに来たばかりの頃、破壊ロボの影もなく、ブラックロッジにもウェストは参加したばかり―――そんな頃の話です。
ウェストがギターに凝る訳。破壊ロボ誕生秘話。シスター・ライカとストーン君の隠れた秘密の趣味。そういったものが詰まった、お楽しみ箱みたいなものですね。
そして3編の締めらしく、そんなドタバタのアーカムシティに大十字九郎が、ミスカトニック大学に入学するべく来訪する…で、終わっています。
総評して、それぞれに見所、面白いところがありました。
『ド・マリニーの時計』では、文章遊びの様なド・マリニーの時計の力にデモンベインが対峙し苦戦する様が、『遺跡破壊者』ではシュリュズベリィ先生の活躍と若き日のドクター・ウェストの姿が、『破壊の序曲』では色んな小話が、と。
デモンベイン本筋が超シリアスで稀にコミカルを交えた作品ならば、これは超コミカルで、稀にシリアス、といった要素逆転の作品と言えるのではないでしょうか。