七不思議の作り方

七不思議の作り方 (電撃文庫)

七不思議の作り方 (電撃文庫)

七不思議の作り方

作者は過去に電撃文庫から「φシリーズ」と呼ばれる作品を3作「飾られた記号―The Last Object (電撃文庫)」「開かれた密室―Being As Unfixed (電撃文庫)」「三辺は祝祭的色彩―Thinkers in Three Tips (電撃文庫)」を出しており、いわゆる推理トリックみたいな作品?を書いていたようですね。私はこの3作は読んだ事無いんですけれども(^^;
んで、この「七不思議の作り方」。ストーリーとしては、五月のゴールデンウィークと中間テストの合間のつい気持ちに隙間ができそうな日々の合間の1週間の間に、毎日1つ、現実に起きる七不思議の怪談。ヒロイン「春日未春」通称ハルハルは、高校一年生として心機一転の高校生活を始めようとしていたが、引っ込み思案な性格の為に中々クラスに打ち解けられずにいた。そんな折にたまたま七不思議の怪談に遭遇する。クラスメートで興味のあることに積極的な「秋月千秋」通称アキアキと話をするうちに、学校に長く語り継がれてきたSAWという存在を知った未春は、千秋と共に七不思議を追う内に少しづつ積極的になりながらSAWの真実へと近づいていく…。と、言ったところですか。

内容的には前述の春日未春の引っ込み思案からくる学校生活に慣れない所を、千秋が手助けしながら解決する―――と、乱暴に纏めてしまえばこうなりますかね。毎日起こる怪談に、少し尻込みしながらも前を突っ走る千秋に着いていく未春。そんな構図が多かったですが、最後のラインでは未春が自分で考え、行動している辺りに成長が見えました。千秋は途中から全てに気付いてトリックマスターとなっていたのも印象的です。興味があったからやっていた、と言いつつも結局のところ、千秋は最初から最後まで未春のために動いていたようなものですからね。

総評して、この作品は作品内でも書かれていた表現ですが、「学生によるオリエンテーリング」を、文庫風にしたような感じです。SAWという存在によって仕込まれた人為的七不思議。それを解き、SAWに辿り着く新入生―――といった形で。学生時代にこんな存在があったら、確かに退屈な学園生活は無いだろうなぁ、と思える一作でした。