聖剣の刀鍛冶

聖剣の刀鍛冶(ブラックスミス) (MF文庫J)

聖剣の刀鍛冶(ブラックスミス) (MF文庫J)

聖剣の刀鍛冶

著者・三浦勇雄先生、挿絵・屡那先生の剣や魔法に魔獣などが出てくる本格ファンタジー小説ですね。著者の三浦先生はMF文庫Jで『クリスマス上等。』などを初めとする『上等。』シリーズという作品を書かれていました。この巻から新シリーズ、ということのようで。
・登場人物
主人公格として視点の主眼を勤める新人の女騎士団員セシリー・キャンベル。セシリーに持っている剣=刀に眼を止められ、彼女に「私の刀を打って欲しい!」と請われて頼み込まれる事になる刀鍛冶師のルーク・エインズワース。そんなルークの相方で刀鍛冶を手伝う住み込み同居人の少女リサ。とある理由からセシリーが護衛をする事になる女性のアリア。セシリーやルークたちが住む街の市長でありルークとも旧知であるヒューゴー・ハウスマン。メインはこんなところで、他にまぁ魔獣だとか盗賊だとか、騎士団長だとか平騎士団員とかが出てきますね。
・シナリオ
かつて、大陸で”悪魔契約”を駆使した忌まわしい戦争があった。そして今―――。
騎士団に所属する元貴族の娘セシリー・キャンベルは、平穏となった今の世では禁忌となった悪魔契約の力を振るう暴漢を、奇妙な形の剣で一太刀の下に退ける男と遭遇した。セシリーは、父より受け継いだ寿命寸前の古剣を打ち直してくれる鍛冶屋を探していたのだが、一閃でその男の剣に惹きつけられる。しかもルークと名乗る謎めいた男は、鍛冶屋を営んでいるという。―――衝撃の出会いが、すべての始まりだった!!
火花を散らす気鋭の作家・三浦勇雄が、剣筆絢爛に舞う本格ファンタジー、見!!参!!(裏表紙より抜粋。)
・感想
前作『上等。』シリーズの現代を舞台にした恋物語から一転。剣と魔法のファンタジーの新シリーズということでこれからに期待半分怖さ半分、といったところでしょうか。
典型的な剣と魔法によって出来た社会。そこに召喚魔法の如き『悪魔契約』と物品を消耗する変わりに効果を得る『祈祷契約』という2つの要素を交え独自の世界観を作り出しています。とはいえ基本は剣と魔法のファンタジー。独特の世界観をわかりやすく書かれていて、世界観に馴染めないということは無いですね。
アクション性は、主人公格で主眼を置かれているヒロインでもあるセシリーが恐怖に震えながら新米騎士として泥臭くも必死に戦ったりする一方で、強者であるルークが神秘的に、且つ爽快に圧倒的に戦ったりで二面性があって飽きませんね。一方的にならない、と。
お色気成分も、まぁ…お約束な感じで。主にセシリーが被害にあっておりました。
第1話「騎士」はセシリーとルーク、リサの出会いの話。セシリーがルークの刀に眼をつけ、刀打ちの依頼をして渋るルークに刀打ちの条件として、セシリーが自分が刀を持つに足る人物なのかを見てもらうことを提案。その為にルーク、リサがセシリーの行動に同行する為に傭兵をすることになる話です。それと同時にそれと同時に後の話の伏線がチラホラと。この伏線は大体第3話までに解消されていましたが。
第2話「少女」ではメインはセシリーからリサになってますね。ルークといつも一緒にいて鍛冶を手伝うリサ。そんな彼女の日常を追いながら、セシリー、ルークと連れ立って出かけて彼女が始めて服を買ったりする、そんな日常的な話がメインでした。
第3話「魔剣」。これはこの巻の山場であり、決まった剣を持てないセシリーが自分の剣ともいえる武器を手にしながら同時に親友も出来てしまうというセシリー1人勝ちの話でしたね。それと同時に少しばかり深めにこのシリーズの特色である”悪魔契約”とは何なのか、も語られる話でもありました。
そんなこんなで、正統派なファンタジー小説としてスタートした新シリーズ。基本的な剣と魔法の世界だけに特殊性が無く(悪魔契約なども召喚術の一種と考えればそう珍しくも無いので)、言ってしまえばいまいち『華』が無いとも言えますが、短編連作のように話が進み、そのひとつひとつがキッチリ纏まりながら後の伏線もちゃんとこの巻だけで回収しているので(ルークの過去などは放りっぱなしと言うか、続刊で明かされる、という感じでその辺りはほとんど触れられていなかったのは伏線というより謎っぽさでシリーズ人気を…という感じですが)、読み易い作品ではありましたねー。